吉田 修一著 朝日新聞社
友人にオススメされたのと、映画化されて賞をとっているということで読んでみました。映画は見てません。かなり以前にこの著者の「パークライフ」は読んで面白かった、という記憶が残っています。
2001年の12月、九州を舞台にした物語です。保険外交員の女性が巻き込まれたある事件の周囲にいる人物を、神の視点から語られる物語です。様々な人々の生活と感情をちりばめられています。ある事件の結果や原因、にではなく『心の動き』に焦点を絞った作品だと私は感じました。ニュースで見たなら、さらっと流されてしまいそうなものの背景を想像させる切り口です。
そして主人公である祐一という朴訥とした素朴な青年と、巻き込まれてしまう受け入れる光代という2人の情熱に満ちた話しでもあります。この2人に感情移入できるならば、ぐいぐいと引き込まれること間違いなしの作品です。
果たして、誰が悪人なのか?という問いかけに興味のある方に、そして昭和という時代が懐かしい方に、オススメ致します。
ただ、私は主人公祐一にも、一緒に逃避行をする光代にも、感情移入出来ませんでした。少し刹那的過ぎるのではないか?と感じたからです。とても「寂しく」て、誰でも良かったように思えてしまうのです。
が、それでも読みやすい、ページをめくる指の動きももどかしくなる作品でした。