有馬 哲夫著 新潮新書
何故原発と正力とCIAなのか?どういった繋がりがあるのか?また、そこにディズニーが関わってくるという意外な絡みもあって非常に読ませる本でした。個人的にはこういう人物を偉大と言って良いのか?非常に疑問を感じますが、とにかく知らないよりは知っている方が良いですし、とてもびっくりしました。
CIAという組織や機密文書の信憑性など、私には計りしえない部分も多いのですが、運命のいたずら、とも言うべきな様々な関わりとタイミングや思惑、そこに偶然が相まって生まれた結果を知ることが出来ます。
また、正力 松太郎という人物の執念はすさまじいと思います。先見の明ともいうべき「正力マイクロ構想」の「構想」は凄いですが、その実現のためなら「殆ど何でもやる」という執着が恐ろしいです。何しろ最高権力者でなければなし得ないのであるならば、なってやろうじゃないか!ということなのです。
「正力マイクロ構想」(今で言うケーブルネットワークの「独占」構想)の為にアメリカCIAの威を着て政府に働きかけ、既のところで「正力マイクロ構想」へのアメリカから借款を逃すと、その借款とネットワーク独占への権利を手に入れるために、首相でなければ無理であるのであれば首相になってやろう!という単純明快ながらも非常に客観性の薄い独善的判断の基に、国会議員になるべく奔走した正力さん・・・非常に危なっかしい方に見受けられました。
その国会議員への扉を開くために必要な耳目を集める政策として、やはりアメリカCIAとの関係の中で浮かび上がってきた「原発」を政治カードとして握ることになったことから、今日の原子力発電への道が開けてきたという非常に偶然にしても考えさせられる展開が驚きをもって語られます。つまり偶然、たまたま、原子力だったわけで、正力さんにとっては原子力という「政治カード」を使って「首相」になり、「正力マイクロ構想」のための借款と利権を手に入れるための手段、であったわけです。ですから、途中CIA側からの援助が望めなくなると、突然イギリスに擦り寄ってみたり、この辺のよく言って柔軟性、悪く言えば節操の無さが、正力さんをメディア王にしたものでもあろうかと思われます。とにかく全てにおいてこの調子であるのです。そのことを単に巨魁と言ってよいのか、非常に微妙であると私は思いました。
しかし、正力さんの執着もすさまじい粘着質な部分での功罪がありますけれど、アメリカの意向の節操の無さもまた特筆すべきものがあります。まさに利用できるものは何でも利用し、時局が変わればさっぱりと切り捨てる部分がすさまじいです。これってイラクでの軍事介入もそうですし、他にもいろいろありそうですが、簡単に陰謀論という括りではなく整理して判断したいです。
原子力という存在が日本に入ってきた経緯を知りたい方にオススメ致します。