アルボムッレ・スマナサーラ著 サンガ
弦間先生のブログに書かれていた本で、かなり哲学的問いかけ、しかも推薦文(帯)を評論家宮崎 哲弥氏が書いておられたので読んでみたくなりました。
「無常」というお釈迦さま(ゴータマ・シッダールタ)が悟られた最も大事な真理である、『何物も変化しないものはない』という真理からこの世界を見ようとするものです。ものすごく重要な事柄のようにも感じられますし、意外にも当たり前のようにも感じられる「無常」(無情ではない)という思想の行き着く先を分かり易く説明してくれます。しかもとてもやさいい言葉で、です。
仏教という教えは神という信仰を持つものではなく、やはりどこか規範を示すかのような『ゆるさ』があると思います。そこがキリスト教やイスラム教よりも、少し私には近しく感じる部分です、もちろん日本人だからという部分も多いとは思いますけれど。仏教は厳密に言うと宗教とは違うような気がしますし、まただからこそ気になるわけです。手塚治虫の「ブッダ」も面白く読みましたが、知識としてはその程度の、ほぼ何も知らないのと同じです。
この本はかなり簡潔な言葉を用いて、しかも至極ストレートな道筋で読者を説得してきます。そのやり方はストレートだからこその力強さがあり、かなりの衝撃を持って読める本だと思います。
端的に集約すれば『期待するな、変わらぬ自分という幻想と、欲望から自由になれ』ということであろうと感じました。これはとても難しいことです。
あまりにブッダを高く置く為に、それ以外の宗教、哲学を完全に無視し、貶める語りは、新興宗教における勧誘のやり方であり、スマートではありません。また必要以上にブッダを持ち上げるそのやり方も(ブッダの理解の早さは何者も理解できないレベルだとか、ブッダ以外には理解できないとかいう道理が入るのですが・・・)まさに信仰宗教のやり方そのものです。そういう部分は鼻につきますが、しかし言わんとしていることは分からないでもない気がしました。だからこそ、科学の恩恵を受けつつ、しかし何処かでブッダの悟りを生活の中に還元できて、しかも客観性あるバランスの良さを、読み手、受け手側の工夫が求められる本であると私は感じました。
もうひとつ気になったのは「無常」を理解することで心が綺麗になって未来の予想が当たりやすくなる、というようなまさにスピリチュアルな発言を繰り返すことの胡散臭さは拭えないと思いました。「心の綺麗さ」は推し量ることができません、発言者の恣意的な判断でしかありません。こういうスピリチュアル発言は基本的に私は認められなかったです。こういう「無常」とは先の見えない不安定なもので、世界とはそういうものだ、というスタンスを取っておきながら、自分たちに都合の良い、耳障りの良いスピリチュアルな、検証のしようがない発言を繰り返しすやり方は心象悪く感じます。
それでも欠点を補って尚素晴らしい自分の死角を見せられるかのような柔軟な発想や考え方があり、仏教の懐の深さを感じました。
日常を変えてみたい方に、仏教に無常に興味のある方にオススメ致します。