本日で井の頭歯科の診療は終了致します。今年1年間、ありがとうございました。
来年1月4日から、通常通りの診療を行います。なお、その間の休日応急診療の先生方の連絡先です。
12月29日 けやき歯科医院 51-3386
12月30日 有田歯科医院 20-2224
12月31日 さかいばし歯科 50-0506
1月1日 池田歯科医院 51-4675
1月2日 緑町歯科医院 51-8241
1月3日 伊藤歯科医院 55-4660
1月4日 岩崎歯科クリニック 23-7522
このようになっております、4日は私ども井の頭歯科も診療を開始する日です。
「犯罪」を読みました
フェルディナント・フォン・シーラッハ著 酒寄 進一訳 東京創元社
最近海外翻訳モノを読んでないな、と思っていたところ、気になったものを見つけたので見ました。もの凄く面白かったです。
ドイツを舞台にした連作短編なのですが、著者は現実の弁護士です。で、さすがの設定の細かさと、短編ならではの切り方が上手く、まるで供述調書を読んでいるかのような感じです。供述調書のようなドライな文体であるのに、いや、ドライだからこその「事実」だけを積み重ねるかのような文体だからこその、犯罪者にとっての「事実」と読者である読み手の「真実」との距離を確かめられます。犯罪に手を染めるまでを丁寧に、しかし簡潔に積み重ねているので、返って登場人物の心情を想像しやすく、汲み取り易くなっています。しかも直接は言及していないので、上手いです。
中でも気に入ったのが、善良な医師であるフェーナー氏の限界を超えるまでの自分に対する自制と超えた後の心の静寂を描く「フェーナー氏」、美しい兄弟を襲った悲劇と家族の葛藤と終息を色合い鮮やかに描いた「チェロ」、犯罪一家の末っ子の隠された才能を法廷劇で見せる「ハリネズミ」、ある不幸な瞬間から迷走する最底辺の恋人たちが味わった「幸運」、恐らく何らかの現実から着想を得ているのでしょうがだからこそ恐ろしい沈黙を描いた「正当防衛」、現代の(と言いつつもきっと太古の昔から存在していたでしょうけれど)病とも言うべき弱い存在へと向かう狂気の顛末「緑」、ひとつのことに執着することの怖さ「棘」、病を放置することの恐ろしさと有史以来ずっと続いていることを考えさせられる「愛情」、そして映画になりそうな物語性の高い「エチオピアの男」です。
どの短編も非常に完成度高く中でも割合短編の作りが標準的な「サマータイム」も印象的ではありますが、この方の短編としてはオーソドックスすぎると感じました。それでも充分楽しめるレベルですので、クオリティ高いと思います。
単純な動機や単純な作りにはなっていませんし、某かの背景があるからこそ、そしてその背景が(誰にでもと言うわけではないにしろ)日常的だからこその恐ろしさ、犯罪を犯してしまった側の心情がリアルです。ドライに書かれる事でのコントラストの大きさが良かったです。この人の新作はまた購入すると思いました。
短編もので、犯罪ものが好きな方に、リアリティある作品が好きな方に、オススメ致します。
28日水曜日まで通常診療を致します。新年は4日から診療致します、よろしくお願い致します。
その間の休日診療につきましては、後日改めてHPに情報を挙げます。
昨日は友人の友人が出演するライブを見に行ってきました。
La Musica Sabrosa! というラテンのバンドです。
普段はラテンものを聞くことはないのですが、なかなか面白い演奏でしたし、私も多少は楽器を演奏するので、モチベーション上がりました!もう少し練習しないと全然ダメですが、楽器を演奏するのは楽しいことです。
様々な曲をラテン風にしあげていて、「私はピアノ」なんて曲もあったり、そうかと思うとあのチック・コリアの「スペイン」なんて難しい曲もあったり、アンコールには「ポニョ」をラテンで演奏したりと、かなり楽しい時間でした。特にベースの方、Tp(トランペット)、Tb(トロンボーン)の方々は上手かったです。私は個人的にsaxが好きなのですが、ラテンバンドではsaxはブラスには負けてしまいやすいのが良く分かりました。でも4本揃ったのは素晴らしいですね、持ち替えもたくさんあって凄かったです。
久しぶりに実家に猫を見に行ってきました。
ポサミは何故か家では定番の名前である「チビ」に改名されてました、また「チビ」という名前の猫・・・何匹かいると小さい猫はみな名前が「チビ」になってしまいます・・・
体重も5キロくらいあるそうです・・・手のひらに乗るくらいだったのに!
グレも別名「ふくちゃん」になってました・・・ふくちゃんが何の由来かは不明です・・・
何故かアイスクリームが大好物だそうで、スプーンで舐めさせてみました。
なんか変な顔がまたイイです。
金井 美恵子著 講談社文庫
私の大好きな作家である金井 美恵子さんの作品です、出版された当時はこの世界に入っていけなかったのですが、挑戦してみたい気持ちが高まったので読みました。やはりもの凄く上手い作家、自分の好きなものを散りばめた作品だと思います、稀有な読書体験になりました。
父親が病気で入院したために、母親が付き添いで看病することになった小学生の「私」は、弟と共に美容室に預けられることになります。その美容室は経営者であるマダム、その母であるあばあちゃん、マダムの3人の娘、そして美容師見習いの2人の娘が暮らす大所帯で女の園なのですが、そこで暮らす数日間のドラマです。
筋書きなど比較的どうでも良く、実際に読んでみないと分からない面白さがあり、描写と人物とで魅せるドラマなんですが、言い回しの上手さ、細かなディティールの見事さ、メロドラマともいえそうな現実と虚構を交えた金井ワールドとしか言い表し難い世界が繰り広げられます。言葉を追うことで考えさせられ、思考してしまうことを予め充分理解した上での構成なのだろうと思わせる、緻密な文章の積み重ねと、視点を子供の「私」に置き、しかもその「私」が1950年代ごろを振り返った、という設定なので、どこかしら不明瞭な部分を残しつつも、しかし「記憶」という時の流れを経たことでより鮮明になる部分を絶妙の表現を用いていて良いです。私のように文章が長くなってしまう、という病気にも感染しますし。
とにかく、情景が、心情が非常に浮かび易く、しかもそのブレが読み手が誰であっても少なくなる文章の上手さと、『思考する』というあるいは『読む』という行為と『思い出す』という行為に共通する木漏れ日のような揺れ動き不鮮明な感じ、焦点を合わせる意識がないと不明瞭な、思い出すという行為が同居している文章と構成にやられます。この構成からして本当に上手いです、小さな頃の「私」を通して過去を思い出させている、という設定が素晴らしい効果をあげていると思います。しかも、語られる世界が1950年代であり、女だけの世界であることでの余計に閉じた世界が、もっとファンタジックになる可能性が高いにも関わらず、細かな描写の丁寧な積み重ねと、作者の小説内世界への『愛』を感じさせるのでファンタジックではなく、『小説というリアル』を感じます。この辺りについては今読んでいるジェーン・オースティンの「高慢と偏見」との読み比べという意味でも面白いです。
狭い世界の僅か数日の出来事を振り返るだけなのですが、それだけのことの中にこんなにも刺激的で、豊かな世界があることに驚かされます。
話題も、映画、音楽、芸能、洋服、美容、生活、文化、そして噂という女子の為の女子の作品なんでしょうけれど、男の私からすれば、だからなんなのか?という世界でもありますけれど、しかし、その世界の緻密さ、その時々の感情の細かな揺らめきのようなものを繊細に、そして時にここまでも!というくらい深く心の中の曲がりくねった底まで見透すような描写は、少し怖く感じさせる部分もあります。思うに、女性のその場に共感するチカラ、いわゆる「噂」という不確定なモノに対しての想像のヒロガリの大きさと同居するディティールの細かさまでも、文章で再現(どうしても表現という言葉よりも、臨場感持った再現という形容がより近いように個人的には感じられました)されていて、そこも驚愕します。
ただ、個人的好みから言いますと、著者である金井さんも文庫版での『著者インタビュー』で応えられている通り、女性読者を想定して書かれており、事細かなここまでのものよりも、目白4部作(「文章教室」、「タマや」、「小春日和」、「道化師の恋」)やその続編である「彼女(たち)について私が知っている二、三の事柄」のような女性だけでない軽さを好みます。
文系女子の方にオススメ致します。