市川 春子著 アフタヌーンコミック
最近読んだ漫画の話しです!
今最も続きが気になる漫画「ヒストリエ」7巻(岩明 均著) の以前の感想はこちら と、フィリッポスⅡ世についてはこちら
アレキサンダー大王の時代に生きたエウメネス、という人物の物語の漫画です。
面白いものの、絶対(一時期気になったので「エウメネス」と「アレクサンドロスⅢ世」関連の本を読み漁った結果、私が惹かれるのはアレクサンドロスⅢ世でも、エウメネスでもなく、フィリッポスⅡ世という結論に達しました。個人的にはアレクサンドロスⅢ世よりも偉大な人物だと思います)このペースじゃ終わらないであろうことを、最新刊の7巻で確信しました。10年経っても多分まだアレクサンドロス死なないだろうなぁ。是非ディアドコイ戦争(アレクサンドロスⅢ世死後の後継者争い)までやって欲しいです。そして歴史的にも不明なへファイスティオンとエウメネスの不和の岩明さんの理由、アレクサンドロスⅢ世の仲介により取り持たれた仲という部分は見てみたいです。それにしてもぺウケスタスの伏線の貼り方が、凄い。エウメネスのアレをアレすることが、既にアレだ!どういう最後にするんでしょうね、ホントに。他にもイッソスやガウガメラの戦いも気になりますし、斜線陣をどう見せるのか?とかティロス島の攻防も見ものですし、ああ、気になります!
しかし、それ以上に衝撃的だったのが、この「25時のバカンス」です。
いわゆるSFの短編モノなんですが、素晴らしかったです。
絵柄的には、線は細くて余白が効果的、高野 文子さんを連想させる(誉め過ぎでしょうか?)絵柄とストーリィです。この「25時のバカンス」はこの市川さんの2巻目なんですが、基本的に短編集で、唯一、この表題作である「25時のバカンス」だけが前・後編の連作になっています。私は2巻目から知って読んだのですが、すぐに1巻買いに行きました。で、個人的には2巻の方が好きです。
天才的頭脳の持ち主である海洋科学者の姉と、カメラマン見習いの弟が久しぶりに出会う数日を描いた表題作である「25時のバカンス」
土星の衛星に暮らす女学生の寮にやってきた無口な新人とはぐれ者との邂逅を描く「パンドラにて」
実生活から逃げた男子高校生が迷い込んだある男との数日「月の葬式」
どれも非常に味わい深い、余韻残しまくりの、伏線の貼り方、回収の仕方、絵柄の、余白の使い方、独特な見開きページの使い方、絵としても、ストーリィとしても、非常に完成度高い作品だと感じました。
『天才』というモチーフの使い方に、やや安易なものを、その使い勝手のよさを感じなくも無いですが、そこが市川さんの素晴らしいところだとも言えますし、個人的にはとても気に入りました。
中でも表題作「25時のバカンス」の突拍子の無さをリアルな地平にまで落とし込む説得力はかなり好きですし、説明しすぎない、言葉で語らないモノを大事にして、しかもちゃんと伝えられる技術がある、しかもその技術に著者独自の工夫がある、ということに素晴らしさを感じました。
SFが好きな方、短編小説が好きな方にオススメ致します。