三橋 貴明著 青春新書インテリジェンス
TPP問題関連で知った中野 剛志先生の本を読んだ後で知った経済評論家の三橋先生の本です。前回読んだ森巣 博さんの本とほとんど真逆の結論を(いや、真逆は言い過ぎかも知れませんが)導きだす方で、そういう意味でもちょうど良い時期に読んだのではないか?と思っています。
もの凄く強引に著者である三橋さんの主張を纏めますと、今深刻なのは大手メディアが繰り返している「増税致し方なし」という情報に惑わされるな(この辺は森巣さんの意見と全く同じ)、もちろん状況は良くないが悪くもない、何が最も悪いのかといえば、税収の落ち込みではなく『デフレ』であり、デフレ下で最も良くない政策である『増税』(何しろ消費意欲を最も下げるのが増税である)は避けるべきである。というのが三橋さんの主張です。
森巣さんも、三橋さんもメディアの主張を鵜呑みにするな(これは受け手の問題でもありますし、リテラシーの話しでもありますよね、ただ、メディアの側も「受け手」が見たいもの見せてるんですよ~という部分もあると思います)、というところまでは同じですし、データを示した上での自説を展開する部分に好感持ちますし、納得もしてしまいますが、やはり疑問は残るんですよね。
三橋さんの言う国債の破綻しない理由は、自国民がそのほとんどを購入している(自国通貨建て出来ている)ので、という部分ですし、森巣さんはその国債を引き受ける自国民が買い取れなく限界に近い状態なんではないか?という部分から破綻(国債の値崩れ)が起こるのではないか?という疑問を呈しています。で、この私は三橋さんの説得力の方が強く感じました。しかも解決策を提示していて、その説得力も非常に強いのですが(いわゆる公共事業を行えというもの)、しかしこの解決策はかなり難しいだろうとも思います。汚職という問題があったからこそ、また公共事業の透明性が担保できない、もしくはそもそも政治家が信用出来ない状況に置かれているので(恐らく猜疑心も働きますし妬みもあろうかと思われますけれど)公共事業の切り崩しを行ったわけでして、なかなか難しい問題を孕んでいます、あちらを立てればこちらが立たず、という状況だと思いました。
ただ、総じて森巣さんの説よりも三橋さんの説の方が説得力大きかったです。しかし、それでも問題は残るわけです。
自国通貨建ての安全性はもちろん理解出来ますが、しかしいくらなんでも量的に大きすぎるのではないか?という点、そして通貨との関係や外交上の問題を含めて考えると今の政府がそんなに大胆な事は出来ないのではないか?ということです。三橋さんの説を補強するような人があまりに少ないところも気になります。三橋さんが唱えているほど単純な問題であるならば、いっそもう少し同じような見方をする人がいても不思議では無い感じもしてきます。また、確かに家計であるならば収入は限られますけれど、通貨を発行できる政府は違う、とおっしゃいますが、確かに通貨を発行できるかもしれませんけれど、だからってドンドン発行すればするほど価値が目減りするのも自然の理なのでこれを解決策として成り立たせるのはいかがなものでしょうか?特に変動するわけですよね?国内では同じ価値であっても海外では変わるわけです。
経済学者も、財務官僚も、政治家も、庶民であってさえ、日本が長期的景気の悪化やデフレであることを望んでいるわけではないと思います。ので、手段(「増税」なり「公共事業の増産」や「通貨の発行」)はどちらでも良いはず、です。その手段をあらゆる選択肢の中から選ぶことが重要なのではないか?と思います。三橋さんによると財務省は増税が省益なのかもしれませんが、そもそも本当に日本が破綻するのであれば財務省も破綻するわけですしね。ま、損得だけで語れない部分もあるのでしょうけれど、そうなればこういうシステム、省庁の役人が省庁間を移動しないままである現行システムを選んでいる以上解決し難い問題なのかも知れません。
ただ、これくらい経済問題に関しては様々な見方が存在するという意味でも読んでよかったです。
経済問題に、それも国レベルの経済問題に興味のある方にオススメ致します。
で、やはり三橋さんの考え方というかやり方はどうしても昔の自民党のやり方を連想させるわけですが、ちょっとネットで調べて分かったのが(ホントにちょっとですけれど、こういう事鵜呑みじゃないある程度の視点が大事なんだと個人的には思うんですが)、そうか~自民党から参院選に出てるんだ~というがっくり感です。これは三橋さんの正しさとは何の関係もなく個人的に『がっくり』です。もし自民から出馬経験あるなら、構造的に汚職問題の解決策をセットにしないと響かないですね・・・