ケヴィン・ブロックマイヤー著 金子 ゆき子訳 武田ランダムハウスジャパン
雑誌の書評コーナーで書評家豊崎さんがオススメしていた流れで読みました。ジェイムズ・ティプトリー著「愛はさだめ、さだめは死」(の感想はこちら)くらいの衝撃を受けました。それくらい幅広いジャンルを扱い、尚且つ斬新で、スタイリッシュ、その上同じ著者とは思えない文体だと(訳者のチカラも大きいとはいえ)思います。
中でも気に入ったのが、描写の絵画的ヒロガリが絶品の「千羽のインコのざわめきで終わる物語」、田舎での暮らしを扱いながらもそこに〈実在〉を噛ませる事で得られる不思議な感覚の文学作品と呼べる表題作「第7階層からの眺め」(個人的にはベストな作品)、まるでこれはカーヴァーじゃないか?というモチーフを瑞々しく独自のタッチで描く「思想家たちの人生」、良い意味での村上春樹のTVピープル的な「壁に貼られたガラスの魚の写真にまつわる物語」、まるで『ねじの回転』のような「ジョン・メルビー神父とエイミー・エリザベスの幽霊」、アドベンチャーゲームブックをこんな物語にするなんて!の「〈アドベンチャーゲームブック〉ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」、かなり古典的なモチーフをスタートレックの世界で描く「トリブルを連れた奥さん」、アメリカンな面白さを描きそこにテレビという世界の裏を垣間見させてちょっとした文学的スパイスをまぶした「ホームビデオ」、ソシテ全く毛色の違うイスラムの家族と写真をめぐる物語「空中は小さな穴がいっぱい」、現代に蘇った寓話的な物語「ポケットからあふれてくる白い紙切れの物語」です。