スティーグ・ラーソン ヘレンハンメル 美穂・岩澤 雅利訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
映画化の監督がデビット・フィンチャー!ということで読みました。予習しておかねば!という心構えです。デビット・フィンチャー監督作品は結構見ていると思いますし、今回もその準備の為に読みました。世界的ベストセラーですが、だから面白いかどうかは分からないものですが、映画化するとなると、どうしても監督が何処を映画化したかったのか?が気になるので先に原作を読んでいたいです。原作を読んでいることで1度脳内映像化されているわけですが、その違いがまた楽しみなのです。
ミカエル・ブルムクヴィストは著名なジャーナリストで40代の男ですが、ある裁判に負けたために自身が編集を勤める雑誌「ミレニアム」を去ることになります。そこに大富豪であるヴァンゲルグループの会長ヘンリック・ヴァンゲルから自身の姪の失踪事件を再検証して欲しいという依頼を受けます。その失踪事件は今から40年近く前のものなのですが・・・というのが冒頭です。
そこに非常に個性的なキャラクターである、リスベット・サランデルというキャラクターの物語が平行して始まっていきます。
ぐいぐい読ませる、非常にリーダビリティ高い作品であり、なかなか面白い展開です。
印象的なことは、閉ざされた密室のような孤島の出来事であり、そこに因縁とも言える家系の中の暗部とも言えるものを加えて、しかもずっと以前の事件を解決しながらも、自身の裁判、もしくはジャーナリストという立場のモラルを同時に扱う部分は新しいと感じました。
キャラクターとして、ある意味非常に同化することが男性であるなら心地よい(と言えば聞こえは良いですが、凄く都合の良い)キャラクターであるミカエルと、女性からどう見えるかは分かりませんが、ある意味鉄槌を喰らわせるキャラクターであるリスベットという主要人物が素晴らしく、それだけでも十分楽しめました。続きもなかなか気になりますね。
多面的な作品が好きな方にオススメ致します。映画見に行きます、楽しみです。
アテンション・プリーズ!
ネタバレあります(直接的表現は避けましたが)、未読の方はご遠慮くださいませ。ミステリのネタバレは致命的ですから。
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が、多少のミステリ好きな方なら、犯人は分からなくとも、被害者の○○を疑わせるに充分でしたし、あまりに容疑者が多すぎるのと、苗字が同じことでキャラクターが判別しにくかったです。多分分かり易くするために多少長ったらしくとも、苗字・名前表記を続けているんでしょうけれど、それが余計に混乱したように感じました。
また、後半に銃でミカエルが狙われるんですが、それはちょっと安易過ぎるように感じました、今ここに犯人がいますよ、と言っているのと同じですし、慎重に誘拐を繰り返す犯人が取る行動とは思えない、安直なシーンのように感じました。
また、事件の後、国外にいてある程度の時間を経た段階で、何故連絡をしなかったのか?ということへの説明が弱いのは致命的だと感じます、警察に密告でも、ヘンリックに伝えるでもしていれば、被害者はずっと少なくできたはずなのに。被害者が被害者を救う手立てをみすみす逃すとは考え難いです。
あと、ミカエルがモテ過ぎるのも、ね。
というわけで、ミステリとしては普通。サスペンスとしても普通、と感じましたが、リスベットというキャラクターは気になりますし、悪役の企業家と後見人という制度が興味深かったです。悪役が良いとその鉄槌後のカタルシスは深くなりますしね。出来れば悪役の中でも「バットマン ダークナイト」のジョーカーくらいの大きさを魅せて欲しいです。続いているわけですしね。
ただ、何より気になって、1番この作品で怖かった部分は、各章ごとの見開きに繰り返される、「スウェーデンの女性~」の数字が大きすぎるのが最も気になります、ここもフィクションなんでしょうか?もし現実であるならば、そのことがホラーです。私の周りでは聞いたことが無いんですけれど、スウェーデンってそんなに恐ろしい国なんでしょうか?