スティーブン・ダルドリー監督 ワーナー・ブラザース
NYに暮らす11歳のオスカーは父親(トム・ハンクス)と母親(サンドラ・ブロック)と暮らす、ちょっとナイーブな少年なんです。父親とだけしか分からないような遊びをしたりするかなり聡明な男の子なんですが、9.11同時多発テロで父親を失い、その喪失感を埋めることができない苦しい生活を乗り越えようとして偶然、父親の部屋で隠されていた鍵を見つけます。その鍵に合う鍵穴を探して・・・というのが冒頭です。
初めて見る監督かと思ったら「リトル・ダンサー」の人でした。「リトル・ダンサー」は面白い映画だとは思いましたが、バレエの映画じゃなくてアレはタップダンスの映画なんじゃないか?と思ってます。多分英国でもバレエをよく見る人ってあんまりいないんだろうなぁ~と実感した映画だった、というのを覚えています。
で、なかなか凝ったストーリィですし、キャラクターも良いんですけれど、どうしても、何処かで見たキャラクター、何処かで聞いたストーリィ、という既視感が拭えなかったです。子役の子供は頑張ってるし、決して悪い話じゃないし、しかもトム・ハンクスはやはり上手いとも思うけれど、何かが足りない。それも決定的に足りない感じがします。何処かで聞いた話し全てが悪いわけではないですし、よくいるキャラクターだからこそ出せる味もあるのは十分理解しているつもりですが、私にはあまり響かなかったです。
確かに9.11は、あの同時多発テロということ、さらにその同時代性(私もテレビで生で見ました、衝撃的でしたし、当時の「ニュース・ステーション」とそこからNHKの同時中継には釘付けになりましたし手島さんは印象的なキャスターとして刻まれました)は強烈ですし、その規模を考えても世界が同時に経験した大きな事件だったと思います。しかも映像の衝撃度も強いわけですし。
しかし、この話しは、その悲劇を利用しているように感じられた部分、また非常に面白くなりそうなキャラクターである老人の過去が明かされず、しかも母親との関係の修復に至る過程が何処か納得出来なかった、など細かな点が気になって物語にのめり込めませんでした。普通ではない(たとえばアスペルガー症候群やサヴァン症候群)ように見える(もしくは匂わせる)人のイノセンス性を訴えたりするのも、「レインマン」とか「メアリー&マックス」とか「ソーシャル・ネットワーク」でもそうですし、実際そのとおりなのかも知れませんが、それだけでないキャラクターの深みがあったと思うのですが、もうひとつ工夫が無かったように感じました。話しをアレする話し、というのも何処かで見た感じがしますしね。
それでも、1番最初のシーン、主人公の顔に焦点が結ばれる映像は素晴らしかったと思いました。
トム・ハンクスが好きな方に、親子関係の映画が好きな方にオススメ致します。