マシュー・ボーン監督 ソニー・クラッシック・ピクチャーズ
あの「キック・アス」の監督作品なのと、映画に造詣深い友人がオススメしてくれましたので見ました。う~んスタイリッシュでイングランドの匂いがしますし、非常に濃厚な情報量で受け手を圧倒的にコントロールしてきて、かなり良い作品でした!
麻薬密売人の仲介者である男(ダニエル・クレイグ)は4人を仲間とする割り切ったプロです。そこに直接のボスであるジミーから2つの仕事が舞い込んできます。ひとつは大量の麻薬を売りさばくこと。そしてもうひとつはジミーの親友であり古いつきあいの娘を探し当てることです。が、このふたつの仕事には裏があり・・・というのが冒頭です。
典型的なクライムサスペンスの設定であり、モノローグで語られる導入からは想像し難いほどの圧倒的です!とにかく、非常に練られた脚本でして、その上編集が見事で、複雑な人間関係、積み重なる様々な事件や思惑、明かされる真実、などを畳み掛ける展開でして、受け手がギリギリ筋を追える情報量を積み込むことで、筋を、状況を理解をすることに思考が支配されて次の展開を読んだり、予想したりする瞬間を与えない、考え抜かれた編集です。
次を予想させる時間を、情報量を詰め込むことで非常に緊張感ある濃密な時間を感じさせることで、先の読めない視聴に仕上がっていて、そのギリギリな部分(情報量が多すぎる筋さえ追えなくなり、興味を無くしかねない)の手腕が絶妙でして、映画の長さを全く感じさせないでもう1度見たくさせ、ディティールを確認してみたくなるのが見事で、相乗効果を生んでいます。まるで、何度か見返すことを念頭に置いたつくりにすることで、情報量高な事での受け手のコントロール(先を予想しにくくなる)する効果を生んでいて(もしくは両方を狙ったものなのかも知れません!だとすると余計に素晴らしい!)サスペンスモノとしても絶品ですし、センスのよさを感じさせます。さすがマシュー・ボーン監督です。
この何度も視聴することに耐えうる作品を前提に作る、という主旨はちょっとした流行のようなものを感じさせます。「(500)日のサマー」のマーク・ウェブ監督、「ソーシャル・ネットワーク」のデビッド・フィンチャー監督、そして「宇宙人ポール」のグレッグ・モットーラ監督、なんかがそんな作りを前提にしているように見えます。その前の流行がタランティーノの編集をザッピングするような事だったのではないかなぁ~とか考えてしまいました。
ダニエル・クレイグの演技もとてもよく、良い意味でイングランドの匂いがしますし、結末も納得の完成度。まさに「レイヤー・ケーキ」のような多重な構造が魅せる効果が素晴らしい映画でした。どの役者さんも非常に抑えた演技力でして、ダメ人間にはダメ人間の、チンピラにはチンピラの、そしてなんだか胡散臭い連中には胡散臭い連中の、リアルであり、匂いであり、佇まいを見せてくれます。
サスペンスモノに興味のある方にオススメ致します。