細田 守監督 東宝
映画「サマーウォーズ」が面白かったので劇場に見に行きました。が結果は個人的にはちょっと残念な感じでした。「サマーウォーズ」ほどの好みの映画では無かったです。でも人生初のオンラインチケット予約が出来たので試せて良かったですし、劇場で見る映画はやはり好きです。
女子大学生「花」は大学に通いながらバイトで生活する少女。講義に出てくる孤独な男性に興味を持ち少しづつ距離を縮めていき、かけがえのない存在になります。だが彼には重大な秘密があり・・・しかし、すべてを受け入れて生活を共にする花と男。しかし子供が産まれ・・・というのが冒頭です。
絵はとても綺麗ですし、自然を写す背景の素晴らしさは写真と見間違えるほどです。臨場感と言う意味でも、水を扱った映像の素晴らしさという意味でも今まで見たアニメーションの中で最も写実的だと感じました。その中にアニメーションの人物が入り込むのですが、あまり不自然ではなく、自然描写を使った演出は良かったと思います。季節を感じさせるのも、雨の臨場感も、素晴らしい演出だと思いました。
が、ストーリィには結構違和感ありました。「おおかみおとこ」というファンタジックな存在はまだしも、その子供という存在がかなり個人的には呑み込みにくかったです。知り合いや親類を頼らない医療機関も、児童相談所も避けるのはちょっと難しく感じました。ただ単に一方的な遮断する感じでしたので。もちろん秘密があるのは分かりますけれど、せめて親しい友人が出てきてちょっとした紆余曲折の結果秘密を守るという場面があれば良かったと思うのです、近しい存在が皆無な非常に閉じた世界を描くので。また中盤以降の田舎での生活、そこに住む人々との交流も非常にステレオタイプに感じられました。ちょっとだけネタバレになりますけれど、協力的で守護的な人物とのコミュニケーションが不成立であるにも関わらず(何故「笑う」のか?に回答しない!)助けられるのがかなり気になります。また花の声を担当された宮崎あおいさんの声は合っていると感じられますし、上手いとも思うのですが、ある意味宮崎さんのイメージが役である花のイメージを先行する気がしました。声をこの方が担当するので、こういうキャラクターですよ、という刷り込みが働いてしまうような自然な声なのです。もう少し役と本人の間があった方が良かったように感じてしまいました。
ただ、「出産」や「子育て」というものはこういう喜びに満ち溢れたものなのかも知れません。花のすべて一人で背負い込むまでの覚悟が私には深く理解できなかったからなのかも知れません。男女間で感想が著しく違う作品かも。
タイトル「おおかみこどもの雨と雪」の「雨と雪」の順序も少し違和感ありです、語呂が良いから「雨と雪」なんでしょうけれど。
など考えていると私の受けられる範囲の狭さ、好みの狭さを考えさせられます。もっとも劇場で見ている間は流れに身を任せて楽しめましたのですが。
いろいろ感想感じましたが、それでも映像は素晴らしく、人物を描くのもやはりアニメーションでしか出来ない作品。日本の文化、とまで言えるアニメーションなので、かなり海外で受けいれられるような気がします。雪と雨の選択には、彼らなりの覚悟が見られて良かったです。
子育てをされたことのある方、これからされる方に、オススメ致します。