吉田 大八監督 ショウゲート
夏に期待して観に行った作品どれもがもうひとつ納得出来なかったので(期待も大きかったし、バジェットも大きいものが多かったので)、一応評判の映画、しかも普段は手を出さない邦画に手を出してみました。
とある高校の2年生を舞台にした物語です。成績優秀、バレー部ではキャプテンを務める桐島が、突然、彼女にも、親友にも、何の相談も、連絡も無く、部活をやめたことで波紋が広がる高校生活の数日を追った映画です。桐島の恋人で学校一の人気女子で帰宅部の梨紗、成績優秀で見た目も良い何でも様になる親友の野球部を休んでいる菊池、菊池が気になって仕方が無い吹奏楽部で部長の亜矢、学校のヒエラルキーの中の最下層でオタクの映画部の前田、女子グループの中でもどこか醒めているバトミントン部のかすみ、等々、様々なクラスメートが織り成す群像劇です。
時間軸も面白く描かれていて、ある場面を何度も繰り返し視点を変えて描かれるんですが、何よりこの映画が良かった部分は高校生のリアルなヒエラルキーの空気を、そのまま描けているところです。
どんな学校のクラスであっても、必ずと言ってよいほど人気のあるグループや平凡なグループ、あるいは最下層である、ちょっと根暗で秀でたものが見出しにくいグループなど、ヒエラルキーが存在すると思うのですが、そのヒエラルキーの差はおよそ高校生活の中では恐らく大きく変わることなど無いのですが、どんな立場の人であったとしても何らかの感情移入しやすいキャラクターが存在し、且つそれ以外のキャラクターとの位地や距離感、もっと言えば高校での格の違いを言葉で説明せずとも理解させるのが素晴らしいと思いました。
性別の違いでの別世界感も非常にリアルで、確かに今は分かりませんけれど、高校生活での男女間の世界の違いを感じさせるのも上手いと思いました。最も、男女とも上層部階級ではそんな壁も違いも感じないのかもしれませんけれど(はい、私は最下層出身者)。
それぞれキャラクターを演じきった、特に映画部の補佐武文役の前野 朋哉さん(このページの写真の右側の人物)の演技力は脱帽ものでして、居ました、こういう人!というズバリ感は半端なモノではありません。しかも前野さんは映画監督もされているようで、作品見てみたいと思いました。そして私が思うこの映画の主役菊池を演じた東出 昌大さんも、なかなか面白い演技をされる方だと感じました。ヒロイン(?)を演じている橋本 愛さんも素晴らしい演技だと思います。いろいろ誤解したくなる雰囲気ありますね。
実際のところ、この映画はいなくなった「桐島」を追うようでいて、彼を取り巻く環境を描いた作品、学校生活を送られた方にオススメ致します。
果たして桐島とはどんな人物だったのか?何が原因だったのか?全てが謎なんですが、それはそれとして良い効果を生んでいますし、この映画の主人公は私には間違いなく菊池くんだと思うのです。何でもある程度以上が出来てしまうけれど、それ以上の努力を払うべきなのか葛藤している菊池くん。「出来る奴は何でも出来るし、出来ない奴は何にも出来ない、それだだけのこと」と素面で友人に言い切れるくらい何でも出来ているからこその発言だという自覚さえある菊池くんの物語なのではないか?と思うのです。