南 伸坊著 南 文子写真 文藝春秋社
思わず書店で手にとってしまったのですが、大変面白かったのでそのまま購入してしまいました。
南 伸坊さんが本人になりきった顔写真に本人になりきった文章を載せたのもを1セットとしたものですが、とにかく笑えます。もちろん似ているものから似ていないもの、ディフォルメのキツイものからかなりその人のコアな部分を風刺してしまっているものまで、様々なレベルがあるのですが、どれも可笑しいです。基本的には文章よりも写真のインパクトが大きく、より笑えました。
著名人として顔が世にある程度でも知れ渡ってしまうことの恐ろしさを考えさせないでもないんですが、それよりも可笑しさがずっと先にきてしまい、感情は思考よりもビビッドであるのだなぁ、と再確認してしまいましたが(やはり顔真似される本人たちにしてみれば心地よい事ではないでしょうけれど、逃げられないですものね・・・)、顔に性格が出る、とか見た目で判断する、という部分ありますよね。確証はないけれど、根拠はないけれど、今まで培ってきた見た目とその人との間にある関連性のある『何か』を個人的には判断のひとつと、印象としてあると思ってます。ただ、それが絶対的な基準でもありませんし、偏見に近いと言う感覚もありますけれど、それでも、何かしらの先入観の根拠にさせる印象があります。
しかも著名人はテレビに割合頻繁に顔を出し、そこでのキャラクターを演じている部分も大きいと思いますし、さらに洩れ伝わってくるプライバシーと相まって醸し出される著名人の人柄、否応なしのパブリックなイメージはなかなか強烈ですし、メディアに作らされるイメージも入ってきますから、素の本人から遠いとしてもメディアを通しての受け手のイメージの刷り込みは大きかろうと思います。そこを笑わせるのですから、結構な批評性が入ってくるわけです。
しかし、それでもなお、この南 伸坊さんの顔真似はある意味芸の領域にまで入っている、と個人的には感じさせられました。掴み所、勘所を外さない強さがあります。もちろん全然似ていない人もいらっしゃいますし、私が全然興味無いから知らない、という人は似ているかどうか、というよりも勘所を外しているのか?という部分さえ不明なんですが、少なくとも、面白いことに変わりないというのが凄いです、よく知らない人なのに・・・
個人的に気に入ったのは(敬称略)、そのポーズが上手すぎるスティーブ・ジョブズ、眉と口が・・・な糸井 重里、アングルとピントのズレとさえ似させる要素になってる鶴見 俊輔(この本で1番似ていると思うし、1番笑った)、口元で勝負アリの福岡 伸一、アゴの引き具合で醸しだした枝野 幸男、ほうれい線の出し方と髪の毛のまとまらなさと瞳が上手い前原 誠司、個人的には文章の上手くない作家というイメージがあるんですが確かに似ている伊集院 静、目線の切れ方で納得の池上 彰、鳩山由紀夫はあんまり似てないのに?な鳩山 幸(肩書きのライフコーディネーターって何?)、どこが似てるのか分からないけれど似ていると感じさせる連舫と勝間 和代、似ている度で言えば1番かもしれない茂木 健一郎とダライ・ラマ14世、不敵なニュアンスが似ていると感じさせる櫻井 よしこ、ポーズの選択が上手い麻生 太郎、アンニュイな感じで理解してしまうリリー・フランキーです。ホントどれも面白いんです。
逆に似ていないのが長友(インテル)、朝青龍(相撲)、ダルビッシュ(日ハム)、浅田(スケート)等のスポーツ選手です。どうしてこんなにスポーツ選手だけ似ないんでしょうか?ちょっと謎です。あ、琴光喜だけは似てます!
顔に興味のある方、似せる、という批評性に興味のある方にオススメ致します。
蛇足だけれど、ずいぶん以前読んだときも思いましたし、今この本読んでまた思い出しましたけれど、金井 美恵子著「目白雑録2」朝日新聞社を読んだこと思い出しました。本人写真を南さん、それに金井さんが文章をあてる、自分をセクシーと信じている人特集、面白いと思うんですけれど。やって欲しいなぁ・・・