岡田 斗司夫 FREEex著 幻冬舎新書
岡田さんは合意形成するための、この本の場合は対話対談ではなく、あくまで人生相談ですから、質問された文章をよくよく読み解くことで相手を察し、しかも相手に届く為にこちら側で出来うることをすべてやろう、という姿勢の持ち主、というところに共感しました。なかなか出来うる事ではないです。質問者のレベルに、立場に、感情に、寄り添った答えの出し方なんです。
たぶん、それが引き受ける、という事なんでしょうけれど。その考え方や思考方法をつぶさにさらけ出しているのがこの本です。
思考方法といいますか、ツールとしての考え方はかなり実践的で面白いですし為になります。が、個人的にはそこへ至る考え方に、最も感銘受けました。岡田さんも最初から到達したわけではない部分をあえて文章化する部分にも、凄さを感じます。
人生相談はそもそもパフィーも歌っているとおり「子供だまし」であると私も思っていましたが、ここまで踏み込んで、引き受けて、自らの問題としつつ、しかし解決出来ない事のほうが多いことから逃げない、姿勢を見せることで応える度量の深さに凄さを感じました。確かに上野千鶴子さんの凄さや啖呵にはカタルシスがありますし心地よいかもしれませんし、確かに解決出来うる回答で手段でしょうけれど、それが出来ていれば相談しないんですよね。あくまで回答者の面白さなんです。でも、私も数冊は上野千鶴子さん読みましたが、この方だからこそ、というキャラクターですし、1度は読んでおいて良かったと思えます。でも人生相談の解決者向きじゃないです、面白いけれど新聞紙上の面白さであって、相談者向きの回答者ではないんですよね。
相手と同じ温度の風呂に入るだの、信じたいウソを否定しないだの、愛とは根拠の無い信頼で恋は理由のない信仰だの、パンチラインもイイです。
相談内容とその回答の中でも最も面白かったのはステージ1「彼のケータイ盗み見たら」です。ここまで行くと微笑ましく感じます。最も岡田さんらしく高度だと感じたのはステージ11の「クラス内の位置が気になります」という相談です。この回答はちょっと凄かったです。
人生相談ってこういうものだっけ?という興味がある方、比較的メンドクサイ考えの持ち主、あるいは理屈っぽいと言われる方にオススメ致します。