小田嶋 隆著 技術評論社
小田嶋さんの新刊ということで購入しました。
前作「地雷を踏む勇気」(の感想はこちら)も面白かったですが、今回もレベル高いと感じます。が、衝撃度で言えば前作の方が強く感じました。
中でも面白かったのは、いわゆる民主主義という政治形態との絡み(多分、史上最もマシな政治形態であろう民主主義【不勉強なんですが、様々な形がありましょうけれど】の手続きの遅さやメンドクサさという欠点に焦点を当てた、実感)での「大阪維新」関連の『わが心は維新にあらず I don’t Wind』、再稼動問題の裏側にあるAll or Nothingという心地よさを求める問題を扱った「イン・ザ・シャドウ・オブ再稼動」、まさかAKBについて小田嶋さんから語られるとは思わなかったが確かに4~8名なら全員を拒否できるが48名となると確実に相対的な好き嫌いが存在し、だからこそ誰も批判できなくなるという手法の汚さを理解出来る「メディア総占拠の夜」、私も欲しいです「遺書.txt」(パソコンのデスクトップに「遺書.txt」なるアイコンがあり、実は偽装したハードディスク全消去ファイルのこと)!の話し「シャイロックの遺言」、 『新型うつ』という新たな病名ではない(ということは未だに診断基準が曖昧な病気に見える状況を指している)病態に見える何かの記事における受け止め方とダーウィニズムの誤解と生活保護問題の建前と本音の境目にある偽善を扱った「進化としての逸脱」です。
小田嶋さんの面白いと感じる部分は、やはりその思考の柔軟性であり、文脈的なテキストの解釈の裏を見せてくれる部分が大きいと思います。また、全然笑えないけれど笑わせようとさせる非常に困難な事への挑み方、もしくはその姿勢もあると思います。実際にあまり笑えなくとも、です。文章でなく、文脈で語られる心意気の話しでもあると思うのです、そして今読んでいる(いつ読み終わるのか、感想に纏めるのはとても難しいであろう)中野 剛史さんにも全く同じ文脈で語られる心意気があります。多分両者の主張には隔たりが大きいと思いますけれど、合意できる部分があると感じます。この2人が対談したら、凄く面白そうなんですけれど。
また、最も目を見開かされたのは、昭和11年に石橋 湛山という人物が指摘している性急さの危うさを指摘して使用した言葉「根本病患者」というものです。なるほど、と思ってしまいました。
過去の小田嶋作品を読んで面白かった方に、中野 剛史さんの著作を面白いと思われている方に、オススメ致します。