スティーブン・スピルバーグ監督 ユニバーサル・ピクチャーズ
知人が何度見ても面白いという発言をされていたのと、スピルバーグの出世作、ということで見ました。スピルバーグ監督は「ジョーズ」と「未知との遭遇」の人として認識されてます。「E.T」も「プライベート・ライアン」も素晴らしいけど、もう1つ個人的に好きな作品とまでは行かない、でも凄い監督としての認識です。
作家もそうですが、映像作家も割合当てはまりそうな感じがしますけれど、私は「作家の評価は処女作で決められる割合が高い」と思ってます。そうでない例外もいらっしゃいますが、結構な割合で処女作の「好き嫌い」がその後変わることはあまりない、という私の個人的な経験則です。で、この「激突」はテレビ映画として作られた作品でして、あの「ジョーズ」より古い。ということでほぼ処女作なのではないか?と。でも調べてみると、なんと「刑事コロンボ」の1作が監督デビュー作とのこと、知らなかったなぁ(ただし!ネット調べですし、主な情報源はどうやらウィキですので完全に裏が取れているわけではございません)。
個人的にはこの「激突」はとても面白かったです!この作品が処女作というか出世作というのも納得です。
とても平凡なサラリーマンであるディビット(デニス・ウィーバー)は車に乗って商談相手との交渉に向かっています。とても空いている中西部あたりの長閑な道路を走行中にとある古いトレイラーを追い抜くのですが・・・というのが冒頭です。
1つのアイディアというかモチーフを、これでもか!と言わんばかりのストレートな手法で一気に見せる素晴らしい作品です。構造的に直線的であり、ある程度の試行錯誤は繰り返されますが基本的には大きくクレッシェンドしていて最も盛り上がった部分で映画が終わるというのも古典的にして王道です。これは人気出たでしょうね。大きな流れに非常にテンポよくしかもおよそすべて1人の心情だけを扱ったもので、この平凡な普通の世界がいきなり弱肉強食の世界になるという潜在的にほぼ全ての人に当てはまる恐怖を描いていて、ある意味非常にスティーブン・キング的なストーリィです。
そのスティーブン・キング的な『恐怖』を、的確に見せるのが上手く、コンパクトに仕上がっているのも凄いですね。原題「Duel」を「激突」とするセンスがなんか分かるような分からないような、でも面白いです。
個人的に気に入ったのは、ディビットがサングラスをかけ直し、シートベルトを締めなおし、ある決意を胸に秘めていよいよ乗り出すシーンです。役者さんの演技は素晴らしいですね。また、このトレイラーを見つけたのも凄いです、主役はトレイラーだと私は思います。
車の免許証を持っているすべての人に、スティーブン・キング作品が好きな方に、オススメ致します。