岡田 斗司夫著 ダイヤモンド社
最近気になっている岡田さんなので図書館で検索して追いかけてみました。考え方の面白さが気になってたので読んでみましたが、今まで読んで中では最も響かなかったという印象が残りました。
大まかに人物のタイプ分けをすることで、全部同じように見える人間から視点を少し近づいて違いをいくつかに絞るというマクロ的視点からの解決と、全部違うように見える人間から少し視点を遠ざけていくつかに絞るというミクロ的視点からの解決を考えて、4つになっています。また自己啓発を避けつつ、いわゆる「本当の自分」ではない素の自分をタイプ分けして自分を知ることの重要性を説き、その4つのタイプの関連性を解き明かすことで『人生の取り扱い説明書』という大上段の構えになっています。
ここで著者である岡田さんは『自己啓発』を定義してまとめ、そのいわゆる『胡散臭さ』を言葉にしていかにして『胡散臭く』なってしまうのか?この本とは何が違うのか?を語っているのですが、それが既にもう『自己啓発』の匂いがします。『自己啓発』という名の『自己欺瞞』な部分を岡田さんは指しているのですが、そもそも『人生の取扱説明書』という例えからして欺瞞に見えますし、あまり上手くないやり方に見えました。ただ、本書の初めの方で語られるような『占い』として、全く根拠無くただの気分を変える為のものであって、科学的合理的根拠は必要無いわけです。娯楽として面白いか?という点と、言葉巧みにどう信じさせているのか?を統計学的な観点から見るという点は面白がれるとは思いますけれど。そもそも「占い」というものは当たっても外れても責任は発生しませんしね。
自己啓発は安易なノリの良いのBGMのようなものだと思います。曲が聞こえている間だけは勇ましくアッパーな「気分」になれるでしょうけれど、曲が終われば元通りになってしまいます。『本当の自分』なんて何処にもいませんし、強いて言えば探している迷った弱い自分が本当の自分だと感じます。せめて探す前に訓練や経験をしに行くか、せめて進みたい方向を真剣に考えるべきでしょう。最もローティーンまでは誰もがこの迷った状態だとは思いますけれど。でもある程度経験を積んでしまうと見苦しいものになってしまうと思います。
と、非常にネガティブな見方はしていますが、それでもタイプ分けされることは楽しい部分もあります、気分的に、ですけれど。大まかに誰も彼もを4つのタイプに分けるというのはかなりの大雑把であると思います。無論傾向、という程度の話しだとしてもです。考え方として反論は出来ますし、頷ける部分もあります。ただ、人生の取り扱いに上手くなるわけでは全く無いと思います。この本を読んで楽に感じられるとしたら、その方はとても感受性豊かな方なんだと思います。
傾向を知る為の設問があるのですが、これがかなりどちらとも取れるものであって(例えば「感情に流されるのは愚かなことだ」という設問があれば「自分の感情に素直になることが大事だ」という設問がある)、だからこそ直感で答えろ、ということなんでしょうけれど、まさに時と場合によりませんか?という部分が大きいと思います。つまり本当にどう考えているか?ではない『こうであって欲しい』という選択肢をチェックし易いわけですから、結果も呑み込みやすいのではないか?と。
そして、誰にでも、この4つのタイプが心の中に存在すると思うのです。時と場所と場合に、相手にもよるのが関係性の妙であり、表立って出てくるのも違うと思うのです。その辺の難しさが抜け落ちていると思います。後半には実用例が存在するのですが、どれも岡田さんの判断した結果なのであって、その良く知らない相手をタイプ分けすることが難しいのではないか?と感じました。
あとがきで、いかに有効性が高いか?を説いていますし、そこからとても当たり前な結論へと結ばれています。個人的にはこの結論を考えた事が無い人は相当幼いと言わざるをえないと思うのですが・・・
あくまでメソッドの1つではあると思います。このやり方が合う人もいらっしゃると思いますし、違うやり方もあってよいはずです。このやり方を否定はしませんが、違うやり方を否定的に扱うように読める文脈は違和感を感じました。
考え方の様々なタイプの違いを考えてみたい方にオススメ致します。