5月28日に武蔵野市の事業である「歯つらつ教室」に参加してきました。歯つらつ教室というのはお口の機能の中でも特に噛む、そして飲み込む(専門用語で『嚥下』と言います)、そのために必要な機能の衰えを防ぎ、毎日美味しく何でも食べられる訓練を楽しく行っている事業です。詳しい申し込みなどはこちらからお願いします。
衛生士さんたちと唾液をたくさん出すマッサージや、舌の運動機能の向上のための体操、そして歌を歌ったりしながら楽しくお口について学べたり、訓練できたりします。最近モノを飲み込むのが難しく感じる方、むせやすくなったと感じていらっしゃる方に是非参加していただきたいです。武蔵野市在住で65歳以上の方であれば参加でき、無料です!
そして30日は乳幼児歯科相談に参加してきました。
季節柄、学校健診に参加した時も感じたのですが、子供の虫歯そのものが少なくなってきているのはとても素晴らしい事だと思います。歯科医の努力が実った結果です。DMFT指数(虫歯の歯、疾患により失われた歯、虫歯を治療し歯の合計を表す数値です)もかなり良好だと感じました。でも、全く問題が無いわけでもありませんし、日々のブラッシングは続けなければなりません。
たくさんのご参加ありがとうございました。これからも公衆衛生事業には参加していきたいと思いました。
内田 けんじ監督 クロックワークス
私はこの監督さん、かなり好きです。デビュー作である「運命じゃない人」が本当に素晴らしい作品だったのですが、2作目「アフター・スクール」も見ました。なかなか良かったですけれど、1作目程じゃなかったです。そして3作目がこの「鍵泥棒のメソッド」です。最近知り合った親しい友人にオススメして頂きました、多謝!
売れない役者桜井(堺 雅人)は職すらなく、所持金もほとんどありません。捨て鉢になっていましたが、とりあえず銭湯に入ることにします、そこで派手に転倒した客であるコンドウ(香川 照之)の鍵をすばやく取り替え、コンドウになりすまそうとするのですが、コンドウは実は・・・というのが冒頭です。
毎回ですが、脚本の練られ方に、驚かされます。今回は『記憶喪失』という大ネタを組み込んでいるので、リアル目線というよりは少しコメディタッチに寄っているとは思いますが、その分間口を広げて様々な人に楽しんで貰いたい、という工夫がたくさんなされていると感じました。
また役者さんたちの演技がどの方も光ってますね。堺さん、私は大河ドラマ「新撰組!」の山南さんしか見たこと無いんですが、その時も面白い方だと思いましたし、この映画でのダメさ加減が絶妙にいそうでいない、いなさそうでいる、という難しいバランスを演じていらっしゃって素晴らしい。しかし、この映画の主役は間違いなく香川 照之さんですね。この方も私はほとんど知らないのですが映画「鬼が来た!」チアン・ウェン監督作品の日本人兵役で見たことがあります。その時の演技は非常に印象深いです。とても難しい役どころなんですが、見事に演じられていましたし説得力ありましたし、笑わせもしますけれど、非常に恐ろしくもあるのです。今回の映画では2面性あるキャラクターを演じられているのですが、その本質は同じところを見せることで説得力が増す演出で見事です。もう1人の主役というかヒロインを広末さんが演じているのですが、キャラクターとしては何処かで見たような感じは否めませんけれど、現実味は薄いんですが、そこを何とか保たせるコメディ映画の中での現実味は出せていたと思います。感情の起伏の無い部分は面白かったですし、クライマックスでの光らせ方も良いと思いました。
端役ですが、物語のキーになる人物を森口瑤子さんという役者さんが演じているのですが、素晴らしいです。びっくりしました。上手いです、他の映画でも見てみたいと思いました。
とにかく、この映画を楽しむのであるなら事前情報は少ない方が面白いと思います。拡げた風呂敷の大きさをさらに小さく見せて驚かせるあたりの脚本の練られ方は秀逸だと思います。
ただ、個人的好みの話しですが、スケールが大きすぎる気もしました、初監督作「運命じゃない人」のスケールの小ささだからこそ醸し出せるリアリティと編集、そして練られに練られた脚本こそ、内田 けんじ監督作品の真骨頂だと思います。
映画が好きな方にオススメ致します。
昨日は小学校の歯科検診に行ってきました。
小学校の検診ですので小さい子ではまだ乳歯だけだったり、6年生になると永久歯がかなり揃っている子もいますので、非常にバリエーションに富んでいます。
たくさんの人数を短時間で見るのでなかなか大変ですし、とても落ち着きの無い子(はい、私も落ち着き無い子でした・・・)やすごく素直な子がいたり、話しかけてくる子や、ずっと黙っている子、本当に様々な子供がいました。小学校の中に入るってなかなか無いことですし、初めての場所なのに何故か懐かしい感じがして新鮮でした。
廊下に張ってあったポスターがまた良かったです。
一緒に参加した先生方もおっしゃっていましたが、20年前と比べたら本当にう蝕(虫歯)は少なくなっていて、防げる病気であり、歯科医の果たしてきた役割の成果を感じました。
そんな小学生の子でも楽しめる食育の話し、もっと言えばお弁当を作る日の話し(自分で自分のお弁当を作る!)が聞けるのが6月15日土曜日の「よい歯の集い」です。
入場無料ですので、是非多くの皆様ご参加お待ちしております。
スティーブン・スピルバーグ監督 20世紀フォックス
スピルバーグの最新作!というわけではなく、ダニエル・デイ=ルイス主演という事で観てきました。アカデミー俳優の方にこんなこと言うの失礼なんでしょうけれど(でも、アカデミー賞が評価の基準ってわけでもありませんし、あくまで個人的な印象の方が重要ですよね)、上手い俳優さんだと思います。有名な「眺めのいい部屋」とか「マイ・レフト・フット」とか「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の演技もさることながら、私には「エバー・スマイル・ニュージャージー」の役者さんとしてインプットされています。
まだ大学生の頃に観た映画でして、主役が歯科医というのが驚きました。サイドカーの助手席を診療台にして、旅をしながら治療する青年歯科医をダニエル・デイ=ルイスが演じていて、マイナーな映画でしたが歯科大学に入学した年の冬休みに観に行ったのを覚えています。ヘンテコリンなロードムービーでしたけれど、最後の決め台詞「どうしよう!世界は終わってしまったのに、私は立ってる」というのがとても印象的な映画でした(ネタバレになしますが、もうこんなマイナーな映画はビデオでも見当たりませんしね!)。
そんなダニエル・デイ・ルイスがリンカーンにしか見えない演技で素晴らしいです。
南北戦争中のある戦地へ向かう若い兵隊がリンカーンの下にやってきて、あの有名なゲティスバーグの演説内容を語り、誇りを持って戦地へ赴こうとしています。リンカーン大統領(ダニエル・デイ・ルイス)は戦争による被害が増え続けている事に心を痛めつつも、戦時であることを理由に、なんとか合衆国憲法に奴隷解放の修正を加えるべく働きかけているのですが、当の共和党の中でさえまとまりを欠いている状況で、しかも下院での修正はほとんど無謀にも思えるような状況で・・・というのが冒頭です。
とても、とても淡々とした映画でした。
人間であり、夫であり、父親であり、大統領であることにとことん苦悩するのですが(ある人物の前でだけはその苦悩を吐露するのですが・・・)、しかしその苦悩を受け止め、ちょっと立ち止まって笑いや逸話を交えてもう1度前向きになろうとする様が、事実かどうかは知らないのですが、納得してしまいました。
合衆国憲法に修正を加える、という今現在の日本でも起こっているような重大な案件に対して、再選されたリンカーンが、その信を持って着手し、しかも奴隷制度というその当時であれば『財産』と認められていた「モノ」を(下院議会では奴隷のみならず女性にも参政権を与えることを罵る場面もあるのですが、現代という時間から見るととても差別的な言葉を口にする議員が多数で非常に驚かされます)、「人」として扱う、という事に驚かされます。
信念を持って、とはよく聞かれるフレーズだと思いますが、本当に信念を通すことは、実は非常に難しく苦いものであることを考えさせられました。偉人の話しはとてもバランスが難しいと思いますが、この映画では綺麗にまとめられていると感じました。だからこそ、リンカーン大統領が苦悩し続けるのではないか?と思います。
戦時であるからこそ憲法に修正を加えることが可能であり、南北戦争を終結させたいが、それは修正案が下院で可決された後でが望ましい、というジレンマに苦しめられます。戦死者が増える行為を続けなければならない事になるからです。しかし未来で生まれてくる人々の権利を回復することにも繋がるのです。様々な立場の人々が様々な理由でこの修正案に異議を唱え、ロビーストのような交渉やポストを与える密約まで出しながらも、それでも足りない部分をどう埋めていくのか。また急進派である人物を取り込むことでの危険性の話しもスリリングでした。
チラリと出てくるジョセフ・ゴードン=レヴィットがまたまたカッコイイ役でした。
そして何より、大統領が「それは今なのだ!」と訴えるシーンは本当に素晴らしかったと思います。
スピルバーグの映画が好きな方にオススメ致します。
今、というかここ数年で最も続きが読みたい漫画に「ヒストリエ」岩明 均著があります。現在7巻まで出版されている歴史モノなんですが、紀元前330年くらいのマケドニアという、ヨーロッパとアジアを繋ぐ地方の話しです、今のところ。とても有名なアレキサンダー大王(正確にはアレクサンドロスⅢ世)の書記官として東征に従軍し、大王の死後、後継者戦争(ディアドコイ戦争)において将軍という、記録する係りであったのに記録される側に回るエウメネスという人物を主人公にした漫画です。
とても壮大な物語になりますし、未だアレクサンドロスⅢ世(の活躍をまとめた本の感想はこちら)の父であるフィリッポスⅡ世の治世の話しですから、とてもとても長い漫画になるであろうことは理解していますけれど、どうしても続きが、アウトラインだけでも流れを知れないか?と思い読んだのが「プルターク英雄伝 8」のセルトリーウスとエウメネースの対比項目です。
その国に縁があるわけではないが、武勇に優れ、さらに知性を感じさせる人物として対比されています。漫画「ヒストリエ」の中でもエウメネスが惹かれ憧れる人物にホメロスの「オデュッセウス」という知性で戦う人物が挙げられています。そんな人物の末路はとても哀しいものでした。いかに武勇に、戦闘に優れ、先を読む能力が高かろうとも、信頼を勝ち取ることの難しさを物語っていました。対比されるローマ人のセルトリーウスよりも影のある人物として語られています。
もちろん漫画ですから、そして基本的には歴史を扱ったものですから、史実を曲げることはないでしょう。しかし、それでも、経過を見せることでニュアンスは変わってくると思います。どのような岩明さんの手によるエウメネス像を見せてくれるのか、大変楽しみです。最もこれまでのペースでも相当時間かかるのでしょうけれど、何とか続いて欲しい漫画です。現在はまだフィリッポスⅡ世がギリシャ世界の覇者になる(ことでアジアに向かえるんですが)為に行うカイロネイアの戦いさえ描けていないわけで・・・(エウメネスの半生を振り返るとしてもまだ序章も始まってない感じがします・・・)不安もありますが一ファンとしては待ち続けるだけですね。
今までは1年に1冊くらいのペースで出版されていたのに、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞しているのに、ここ1年6ヶ月も刊行がありません。それでも期待は高まるばかりです。