池袋ジュンク堂のトークセッション「金井美恵子×中島京子」を見てきました!!
私の少ない読書歴の中で、ですが、最も批評性の高さと公平さが群を抜いて高く、出会った頃の衝撃がいつまでも色褪せずに新鮮であり、新刊が出ればほぼ確実に手に取って購入するべき作家、今同時代に生きている事に幸せを感じさせてくれる作家、それが私にとっての金井美恵子さんです。
そんな作家の生の声を聴けるのは得難い体験です。とても楽しく拝聴することが出来ました。
金井さんの新刊であるエッセイコレクション「1964-2013」1「夜になっても遊びつづけろ」と2「猫、その他の動物」の刊行記念のイベントだったのですが、過去のエッセイの中からご自分で選んだエッセイ集なのですが、高校卒業後に作家活動に入っているので、なんとこのエッセイ集には入らない量の方が多いわけです。
綺麗な装丁の本でして、お姉さまの久美子さんの作品です。
トークセッションの中でもおっしゃっていたのですが、「美空ひばり以来の天才」と呼ばれていたと笑いながら語られる金井さん、普通嫌味っぽく聞かれる事もあるのでしょうけれど、この方の場合はまさに納得してしまいます、ただ、私は美空ひばりさんがどのような凄い歌手だったのか?は理解できていないんですが、まさに早熟の天才という表現が似合う当代きっての言葉の使い手だと思います。
お相手を務められる中島さんの著作を読んでいないので分からないのですが(と言いつつも、興味はかなり湧きました)、中島さんの「女性作家は金井さん以降、影響を受けている人を多く感じるし、自分の著作の中でも、このエッセイ集の解説を書くために読み返して強くそう感じた」という告白を受けて答えられる金井さんの「影響を受けた、と言ってくれる方の存在は作家として非常に嬉しい」という趣旨の発言が聞けたのはとても嬉しかったです。
「エッセイを書くのは小説を書くよりも、ずっと頭がよくなければ面白くならない」とか、「性欲に反比例して、書きたい事が増えていって恥ずかしい」とか、正確に一言一句同じではないのでニュアンスが変わって伝わってしまいそうなのを考慮に入れても、覚えておきたい言葉の数々でした。
そして、時事問題やテクストに付箋を付けて保管し、頭の何処かで記憶しておいて、何処かで使える時が来たら、取り出せるようにしておく金井さんの長い視点の普遍性には、信頼を強く置けると確信しましたし、その金井さんが言う「こうやって振り返ってみてみると昔からたいして変わっていない(政治の揺り戻しや保守化の流れに対しての文脈の中での発言)」という言葉は重いと思います。金井さんの記憶力や引用力(正確な引用を用いることで有名)こそ、このような情報化社会で本当に求められている事なのではないか?と思ったりしました。ブレないという意味であれば、金井さんほどブレない方も珍しいです。
そして、金井さんの記憶力、引用力、言葉を選ぶ力、そしてだからこそ生かされる批評性という非常に切れる刃が自身にも向けられるのも、その信用の度合いを高め、公平性を感じさせるのです。ダブルスタンダードを許さない強さ、だからこそ強く惹かれるのかも知れません。まさに天才。
この9月には新たなエッセイが出版されます、とても楽しみにしています。
サインまでいただいてしまいました!