宮沢 賢治、とても有名な童話作家であり、詩人であり、農学者であり、そして田中 知学-国柱会-法華経の信者でもある不思議な繋がりのある方です。私は小学校時代の読書感想文で「銀河鉄道の夜」を読んだのが初めてでした。
その後「注文の多い料理店」や「猫の事務所」などは読んだことがある程度で詳しく知っているわけではなかったのですが、高橋 源一郎さんや(著作に「ミヤザワケンジ・グレイテストヒッツ」なるオマージュ作品があります)江川 達也さんの漫画「マンガ 最終戦争論 石原莞爾と宮沢賢治」(の感想は
こちら)から興味を持つようになりましたので、行ってみました。
私はにわか読者なので知らない事ばかりでしたが、有名なコートを着て俯いた写真(上の写真)は、あのベートーベンの写真を模したものであるとか、有名な詩(?)である「アメニモマケズ」は実は手帳に書かれたものであって原稿が存在するわけではないとか、作品を何度も書き直していて様々な改訂版が存在することとか、あの棟方志功が連作で「アメニモマケズ」を残していたとか、知ることが出来て良かったです。
あくまで私見ですが(ってこのブログはいつものことですね)、宮沢賢治の作品って、子供を対象にしているように見えて、実はかなり受け手の自由度の高い作品なのではないか?(だからこそ子供向けとも言えますし、大人も愛読者が多く様々な解釈を許す自由度があるとも思えます)と思いました。この宮沢賢治展では、作品のあらすじと絵画を一緒に展示しているのですが、気になるもの数編を読んでみると、本当に独特だと感じます。確かに童話なのかもしれませんが、もしかすると童話ですらない感じもします。
独特で自由度が高く、しかも『私にはこう解釈できる、私が1番この作品を理解できる』と強く思わせる読ませるチカラのある作品、強い感染力があるのも納得です。
中でも秀逸だったのが「オツベルと象」という作品でして、オツベルという地主の家に白い象がやってきてその象をオツベルは・・・というのが冒頭なんですが、いかようにも受け取れる内容で、象は何かの比喩なのか?オツベルの強欲さを資本主義の強欲さの歯止めの無さが象徴されているのか?とか、果たして末尾に一字■(原稿が失われてしまっていて一字欠損がある)は一体なんだったのか?とか、謎が多いのに読み終わると納得してしまう不思議な読後感があり、あまりない読書体験になりました。
今回「グスコーブドリの伝記」も読んでみたのですが、こちらもファンタジックでありながらも何かの暗喩が多用されているような、深読みがいくらでもできそうな作品でした。ただ、比較的お話しとしてまとまっており、よく言えば完成度が高いものの、未完成作品の持つパワフルさは幾分おとなしめのように感じられました。またあるテーマが非常に鮮明でして、だからこそ宮沢作品の中ですと、普通に感じてしまうのかもしれません。
童話がお好きな方、自由度の高い作品を好む方にオススメ致します。