北方 謙三著 角川春樹事務所
友人からお借りしている北方「三国志」ただ今6巻を読み終えたところです。全13巻ですので、正直感想をまとめるのは早計なのは重々承知の上での感想です。なにしろ13巻分の感想はちょっと長くなってしまいますしね。
1~3巻では、黄巾族の乱から桃園の誓い、曹操と袁紹の確執を伏線としつつ、董卓の台頭、呂布の丁原裏切りから、董卓滅亡寸前までを一気に描いています。なので4~6巻では官渡の戦いが4~5巻のメインで、6巻でいよいよ諸葛亮公明への三顧の礼を経て江陵争奪戦~長坂橋の戦い~趙雲の阿斗救出~赤壁前夜へ、となっています。
確かにフィクション寄り、正史寄りなので仕方がないのかも知れませんが、やはり貂蝉が出てこない、曹操と劉備が袂を分かつ「雷の一件」は無く、関羽千里行はカット、しかし、鄒氏はクローズアップされてるとか、諜報戦の描写への配慮、帝位をめぐる思想など、宗教へのそれぞれの陣営での考えの差など、なかなかのこだわりを感じさせます。
とにかく徹頭徹尾、男臭さ全開の三国志を追及しているため、ある程度登場人物を絞る必要があると思いますし、その目論みは成功していると思います。なので、名前は出てくるものの、私の体感として、曹操陣営では曹操本人がほぼすべての比重を持って描かれていて、軍人である夏候惇、許褚、張遼、など名前は出てくるもののほぼ寡黙で特に意見らしい発言は数少なく、文官や軍師など言葉や理屈、戦術や戦略を語らざるを得ない人物でさえ荀彧がかろうじて言葉数が多少ある程度で(その後を考えると、ここに劉備と諸葛亮のような水魚の交わりを感じさせる描写は無い!)、かろうじて目をかけられるのは郭嘉だけ(それも残念な結果なんですが・・・)という状況です。
ついで呉の勢力では圧倒的に孫権、そして周瑜。時々顔を出すのが太史慈くらいで、孫策の頃はかなり孫策に焦点が当てられていたのですが、ここでも「正史」寄りのために孫策と周瑜の関係性は大喬小喬姉妹との結婚と義兄弟に焦点が絞られています。孫権の代になってから二張の内の張昭が活躍するくらいです(張紘は7巻現在まだ出てきていません)。
しかし、だからこそ、この2つの陣営は、やはり主人公と言える劉備と相対する部分を担えていると思うのです。
三国志の世界の面白さは様々ですが、いわゆる群像劇の面白さを最低限残しつつ、しかしどちらかと言えばハードボイルド寄りの為に曹操は「治世の能臣、乱世の奸雄」の奸雄部分がより際立った演出になっていると思います。孫権は内省的な性格を前面に押し出し、非常に対照的な描かれ方、そして劉備は徳の武将と言いつつもしたたかで、たしかになるほど、という描かれ方です。
いよいよ赤壁の戦いです!続きが気になります!
三国志が好きな方にオススメ致します。