ニール・ブロムカンプ監督 コロンビア
あの!「第9地区」(の感想はこちら)の監督最新作!ということで劇場に足を運びました。
西暦2154年。地球では汚染が進んでいて、全世界的なスラム化しています。一部の特権階級は宇宙ステーション「エリジウム」へと移民しており、完全な階層社会となっています。孤児院で育ったマックス(マット・デイモン)は今は工場に勤めていますが前科があり、それでも生活を立て直そうとしているのですが・・・というのが冒頭です。
SFでありながらも、かなりのすさんだディストピア映画だと思います。そして医療という手段を独占するという事がどんな権力を握る事にあるのか?を見せつけてくれます。階層社会の断絶の大きさ、あくまで一握りの権力者だけがすべてを統轄することの恐ろしさ、そして、システムとして組み込まれた中にも野望を、さらなる権力を邪なチカラを持ってしても手に入れたいという欲望が生まれる事の恐怖も観れます。そういったディストピア映画でもありながら、アクションシーンもかなり面白かったですし、主人公マックスを演じるマット・デイモンさんには個人的な感情があり、イマヒトツ乗れなかったのですが、悪くもないです。でも、いつも通り、と感じさせます。
それよりも、脇のキャラクターであるマックスを案じる友人のフリオ役のディエゴ・ルナさんは非常にイイ男で良かったです。演技も出番は少ないながらも印象に残りました。また、何よりまた観れて嬉しかったのが「第9地区」のヴィカスことシャールト・コプリーさんです。あの巻き込まれ、散々な目に遭いながらも、最後の最後に他者への手を差し伸べる利他的行為(=ヒーロー像)を苦渋の末に選んだヴィカスさんが、今度は完全な悪役を演じています。まずそこにビックリしましたし、その演技力が素晴らしかったです、身体も鍛えて見違えるようでしたし、様々なキャラクターに説得力を持たせるのは、さすが役者さんですね。
物語の構造的にも、演出も、どう転ぶか分からない部分が素晴らしいですし、地球とエリジウム(=ユートピア)の関係や対比も素晴らしかったですし、前作のアーマードスーツやミサイルの飛び方、ホバータイプの飛行機のスタイルなどの素晴らしさを引き継いでいますし、衝撃度は低かれど、水準はやはり高いと思いますし、ガジェット(ビームのシールドが出てきますし、その実用度が完璧ではない部分のリアルさがとても良かったです)も好きです。
でも、私は結構気になる部分がいくつかあって(しかも結末について・・・)、もろ手を挙げての賞賛ではなかったです、ちょっと残念。でも、もちろん十分楽しめました。
SF作品が好きな方に、ユートピア≒ディストピア関連が好きな方にオススメ致します。