アリス・マンロー著 小竹 由美子訳 新潮クレストブック
ノーベル文学賞を取ったアリス・マンローさんの作品、久しぶりに読み返してみました。ノーベル文学賞を取ったから素晴らしいとか、取れなかったから残念とかは、正直ちょっと違和感を感じますし、日本人だからとか、村上 春樹さんが受賞しなかったのがニュースになる、というのはなんだか妙な話しだと思います。面白い作品は人によって違うと思いますし、何も文学賞を受賞していない作品でも素晴らしく面白い作品だってたくさんあるだろうし、受賞したつまらない作品もありえます。と、いいつつも最近知ったビブリオバトル、という書評の競技はなかなか面白そうだな、と思ったりもします。一貫してないかも知れませんが、そういうものだと思います。
短編集で何気ない一瞬の出来事が、その人の一生に影響を与えたり(ただし、大きな変化ではなく心のありようが変わっただけで表面上の変化は誰にも分からない様なモノ)、掛け違いから始まった物語が意外な結末を(でも、およそ重要な事って偶然のきっかけだったりしますよね、そんなリアリティがある物語)呼ぶモノだったり、こんな事あった日のこんな出来事だったら一生忘れられないよね(何気ない1日のちょっとした風景なのに、しかもその事をこの先誰とも共有できないけど)ってお話しだったり、楽しめます。
中でも「クィーニ-」と「恋占い」と「浮橋」と「クマが山を越えてきた」は良かったです、ちょっと膨らませたらとてもイイ映画になりそうな話しです。
別に辛いことがあってもいいじゃないと思える、もうすぐ終わってしまう人生の中でもこんな事があるんだなぁ、と思える、そしてそれなのに、あるいは小説なのにリアリティを、現実感を感じられる1冊です。なんだか視点の多様性に気付かされるような読書体験だと思います。
短編集の良いところはちょっとした時間に少しだけ読むことが出来るのがイイですね。
ちょっと疲れちゃった方で気分をすっきりさせたい人にオススメします、多少女性よりな短編集だとは思いますが、でも最後の「クマが山を越えてきた」は断然男の方にオススメです。
アンドレ・カイヤット監督
何気なくレンタルビデオ屋さんで見かけたので手に取ってみました。が、これがとてもサスペンスフルで素晴らしい作品でした。サスペンス映画は好きな方だと思いますが、この作品は1958年の映画なんですが、今見ても斬新な演出だと思いますし、本当に脚本が凄いです。
とある砂漠のある国で医師として暮らす中年の男ヴォルテルは誤診が少なく有能な医師です。研修医や後輩の医師からも尊敬されています。フランス語を喋りますが、この国の言葉は理解できません。ある夜、自宅でくつろいでいると、守衛が電話を繋いできて、腹痛の急病人を診てくれないか?と持ちかけられますが、病院に急げ、ここには設備がなく、車なら20分程度だ、と諭します。翌朝、いつものように車で出勤する途中に1台の壊れた車を見つけ、それがどこかで見覚えのある・・・というのが冒頭です。
私にはこの国がどの国を示唆しているのか?映画の中からは察する事が出来ませんでしたが、フランス領の何処かであろうと推察されます。現地の人は違った言語を話し、違った宗教を信仰しているように見えます。
ヴォルテルの行為は褒められたものではなかったのかも知れませんが、結末について誰かと語りたくなる、そんな映画でした。
映像はとても綺麗なのに、いや、綺麗すぎるからこそ、とても不安にさせますし、演出が非常に緊張感を強いる展開を引っ張るので、とても惹きつけられます。全編、ほぼBGMが無いのも意図的で、より恐ろしさを際立たせます。
ちょっとだけ調べてみると、監督のアンドレ・カイヤットさんはもともと弁護士!!という事で、ちょっと他の作品を見てみたくなりますし、短編小説ですが思い出されるのがドイツの作家フォルディナンド・フォン・シーラッハの「犯罪」です(の感想はこちら)。でもシーラッハさんよりも、もっとプリミティブな感情をサスペンスフルに扱っていると思いますし、だからこそ怖いし、誰の何に問題があったのか?を考えさせられます。
私は映画を見ている時には、その中に身を委ねてはいるものの、観終わった後に、監督や脚本が何を指示したかったのか?を考えてしまうのですが、そもそもそういう考え方は意味を求め過ぎているのかも知れません。何処かで納得したいという欲求が強すぎるのかとも考えてしまいました。
果たしてボルタクは満足したのでしょうか・・・
サスペンス映画が好きな方にオススメ致します。
長いタイトルになってしまいましたが、連日の研修会に参加してきました。
一つ目は武蔵野市歯科医師会主催の口腔ケア研修会で講師は多摩クリニックの高橋先生です。
高橋先生は私も協力医として参加している北町ナーシングホームにおける摂食・嚥下カンファレンス(食べたり、飲み込んだりを安全かつ楽しく行うための多職種の方々との現状把握や協議を行うものです!)の座長をお願いしていますので、月に1度はお会いする先生です。とても分かりやすくて相手の立場に立った話しが出来る方ですし、とても粘り腰のある方で、カンファレンスにおける説得力がとても深いです。
そんな高橋先生の講演ですから期待して行きましたし、その期待を上回るとても面白い講演でした。なんといっても考え方が理路整然としていて、しかし柔軟に対応できるのが素晴らしいです。
目的の為の評価、の為に必要な知識、の為に必要な検査、の為に・・・と考えつつも、介助者を含む、周りの環境やどこまで出来るのか?によっても変化がある事を考慮している事を理解出来て良かったです。
2つ目は訪問診療についての講演を受けに日本歯科口腔リハビリテーション多摩クリニックに行ってきました。
山梨県の花形先生のご講演、いかに多職種とのカンファレンスが重要であるのか?出来る事からはじめて行く事の重要性を認識させられました。連携の難しさは専門用語が使えない不便さも相まって、なかなか複雑な問題のようです。私もまだ駆け出しですが、訪問診療をこれからも行っていく上で、もう少し、より良い診療行為や衛生指導を行っていきたいと思っていますし、関わっている摂食嚥下カンファレンスを少しでも生かして、安心し安全に、楽しく口から食べられる健康の維持に貢献したいと思ってます。
もう1方の衛生士さんの講演でも、バイオフィルムの除去、そして除去したバイオフィルムやプラーク(お口の中の汚れの事です)の口腔外への回収の重要性(前回の講演でも菊谷先生がおっしゃってました!)を再認識させられました。
最近は勉強会の出席が多くてなかなか本が読めないんですが、講演を聞きに行くのも、面白い刺激になります。
とても刺激的なタイトルなので、扇情的にも見えるかも知れませんが、読んで頂けたら理解できる、面白さの詰まった本でした。
『私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな』というタイトルの本です。
著者はジェーン・スーさんという日本人の方です。以前、キリンジというバンドからのVoの弟さんが脱退した時に名言をブログで書かれていたのを、私も強く共感してここにも載せさせて頂きました(その時はこちら)。とても分析的で、しかも面白おかしくプレゼンテーション出来る方です。
カラフルでタイトルも自虐的ですし、面白そうと感じる人もいれば、なんだか眉をひそめたくなる方もいらっしゃると思います。が、表紙やタイトルからでは分からないとても面白くて為になる本でした。決して未婚の方だけを対象にしている本ではありません、既婚の方であろうと、未婚であろうと、男性だろうと、女性だろうと関係なく、読ませるチカラの大きい本でした。
ただ面白おかしく読めるだけではなく、客観的に自らを振り返り、今まで批判や批評してきたとても鋭いその切り口を自らにも向ける勇気のある、公平性のある著者ジェーン・スーさんはとても頭脳明晰な方です。男性が読んでも十分その面白さを理解できますし、正直、この人くらい考えた事があるかどうか?を試される気がします。とくにあとがきの前につけられた著者自らの分析の鋭さには唸らされました。
自らを振り返って考えるだけで、今後に悩まなくて済む問題はかなり多いと思います。その代り、かなり真剣に自らを省みる事が求められるわけですが。それでも、悩むよりは考える方が現実的で生産的だと思います。
コミュニケーションをとる事のあるすべての方にオススメ致します。
私は松本歯科大学出身なのですが、東京都の松本歯科大学出身者の校友会という同窓の会の理事の末席を務めさせていただいております。
そしてこの11月になりますと、いわゆる新設校(後発の歯科大学の事です)の中でも12校を集めての会議が開かれます。その12校会議に出席してきました。
他大学の先生方との席ですし、諸先輩方と一緒の席ですので、とても緊張します。偉い先生方ばかりですし、国会議員の方々もいらっしゃいます。
そんな会議に今回は東京都歯科医師会の会長であられます高橋先生の講義を受けてきました、大変ためになるお話しです、皆保険制度(どんな方でも何かしらの保険に入られている制度のことです、日本はとても恵まれています)を敷いている以上、私たち歯科に携わる人も政治的な活動をしなければなりません。
組織率の話しや、TPPのお話しを聞きましたし、ISD条項のお話しもありまして、有意義な時間でした。そしてもちろん、懇親会もございます。
毎年、この会議の季節が来ると、年末が近づいてきているのを実感致します。年々早く感じます。
急に寒くなってきましたね、皆様も体調管理には十分ご注意くださいませ!