トラン・アン・ユン監督 アスミック・エース フジテレビジョン
村上 春樹原作の映画化作品、いろいろ思うところあり未見だったのですが、ふとしたきっかけで見ようと思い立ちました。
1969年、ワタナベ(松山ケンイチ)は20歳になろうとしている大学生で、東京で死んでしまった親友キズキの恋人であった直子(菊地凛子)と出会い・・・というのが冒頭です。
相当昔の小説で、その当時とても流行りました。村上春樹作品にはもう少し前からの読者でしたが、例に漏れず私も読みました、私は高校生でした。村上春樹の小説の影響力と言いますか、感染力はかなりのものですし、良い評価も悪い評価もあるでしょうけれど、この読みやすさと、文体、そして「この主人公(または小説)は自分の事だ」と思わせるのが特別上手いと思ってます。そういう意味でインパクト強かったです。「海辺のカフカ」以降、だいぶ変わっているとは思いますが、読まれる作家であるということは凄い事だと思います。村上作品、好きな人は凄い好き、嫌いな人は凄く嫌い、という評価の別れる作家さんだと思ってます。
そんな村上作品の映画化です、私は原作のある映画化は、基本的に原作を読んでから見たいと思っています。というのも、原作の何を映画化したかったのか?に興味があるからです。読書をするということは頭の中で知らぬ間に最も都合よく映像化しているとも言えますし、その頭の中の映像化はその人にとっての完成形である以上、原作を超えることはとても難しいと思います。しかし、その中でも映像化することで新たな深みが得られたりするのが面白いと思ってます。そういう意味で原作のある映像化は楽しいものですが、ハードルも高い気がします。個人的な数少ない経験の中で最も映像化に忠実に成功し、且つ映像化して良かったと思えるのは「刑務所のリタ・ヘイワース」スティーブン・キング著の映画化「ショーシャンクの空に」だと思ってます。
この映画も、とても忠実に映像化出来ていると思います。最初、直子とミドリのキャスティングは相当難しいのでは?と思っていたので敬遠していたのですが(もうひとつの敬遠しがちなのはセリフの難しさです)、最初は違和感あったのですが、直子に関しては納得してしまいました。ミドリは本当に難しいキャラクターだと思いますが、ミドリを演じた俳優さんも悪くなかったと思います。個人的には物語上の最も重要な人物がハツミさんだったのですが、恐らく私の思い込みが強いせいか、期待が高すぎたのでしょうけれど、もうひとつ私の好みではなかったです。出来ればビリヤードのシーンは入れて欲しかったですし、オレンジに染まるシーンも見てみたかったです。そして忘れられないのが突撃隊と永沢先輩。結構特異なキャラクターですし(対照的ですが)、オーバーにするとこの映画から浮いてしまいかねないのですが、微妙なラインで留まっていて良かったと思います。