東京バレエ団のイメージといえば、男性ダンサーが多い事だと思います。それくらいしか知らないド素人です。見たことがあるのはアニキ・ベジャールの振付作品「ザ・カブキ」とか「ボレロ」とか。有名どころしか見てないですけど、今回はゲストが凄い!シルビィ・ギエムとマニュエル・ルグリ!!!生見られるのは恐らくそうは無いでしょうし、ギエムは来年の引退を発表しましたし、ルグリの年齢考えると(踊りはまだまだ現役でした!けど)そうは無いチャンスですし。
続いて「スプリング・アンド・フォール」はノイマイヤー振付です。ダンサーはすべて日本人なのですが、物語の無い作品です。予習として、マニュエル・ルグリの「スーパー・バレエ・レッスン」での「スプリング・アンド・フォール」を見ていったのですが、なるほど、と思いました。全体的に女性ダンサーは躍動感と停止した落差を感じさせてくれましたが、男性ダンサーがいま一つ迫る迫力に足りない気がして、男女の差を感じてしまいました。決して悪くないのですが、かえって「スーパー・バレエ・レッスン」を見なかった方が楽しめたのかも知れません。私は当たり前ですが、バレエを踊ったことが無く、習った事もありません。ですが、このマニュエル・ルグリの「スーパー・バレエ・レッスン」を見たことでかなり意識が変わりました。この番組では(ずいぶん昔にNHKで放送された、その当時のエトワールであるルグリが若い後輩に指導する番組です)練習指導場面をそのまま放送するという、バレエを体感したことが無い人でもどのように練習していくのか?を十分に分からせる番組になっています、もちろん基本的にはバレエを踊る人向けのレッスン番組なんでしょうけれど。ものすごく難しい事を演じているのだ、とか、どのような感情をこめているのか?などを初めて知ったと思います。あまりに経験のない事にはなかなか想像が及ばない私でも、レッスン状況を知ることで出来上がっていく(さらに番組の最後には模範演技があり、これが凄い!)作品の意味を知ることが出来ました。また、その指導者であるルグリの言葉のセンス、教え方の上手さには非常に驚かされました。よく言われますが、良い選手が良い指導者であることは稀だと思いますが、ルグリはその両方を備えた稀な人間なんだと実感しました。その指導を受けた2人のダンサーが上手くなっていく(言われてすぐに身体が動く、生徒側の凄さにも驚かされます)のを見ているとやはり指導の凄さを実感します。
また、どうしても直前に見てしまったのが良くなかったのは、いわゆるプロポーションの問題ですね。恐らく、着物が1番似合うのが日本人の体形であるように、バレエの舞台で映えるのは西欧人のプロポーションなんだな、と男性でも女性でも、そう感じました。
続いて「オネーギン」で、ルグリ!です。これもずいぶん前ですが、東京バレエ団で行った「オネーギン 全幕」を観に行った事がありまして(その時の感想はこちら )その時もタチアーナを演じたのは吉岡さんだったのですが、その時と同じような印象を持ちました。いや、もっとはっきり言えばさらに相手との開きを感じてしまいました。まあ、ルグリと踊って見劣りしないというのは相当だと思いますけど。
ルグリはやはり素晴らしく、オネーギンのこの場面は正直みっともなく縋る男を演じるわけですが、その演じ方にもいろいろあるのだな、と感じてしまいました。なんといいますか、粘り気や湿度をあまり感じさせないスマートさがあるように思うのです。だいぶんと私がルグリを気に入っているからこそ、そう感じるのかもしれませんけれど、とにかく生で見られて良かったです。
次に「ラ・バヤデール」の影の場面です。1番有名な場面ですし映画「愛と喝さいの日々」ハーバード・ロス監督のオープニングシーンでも使われています。幻想的なコール・ド・バレエ(群舞と思ってこの言葉を使っています)です。
このバレエくらいコール・ドが主役と思える演目は無いと思います。こういうコール・ド・バレエはもしかすると日本人に向いたものかもしれません。で、気になったのがアラベスクというのでしょうか?片足を上げて片足で立ち、背中を反らせる姿勢をとるのですが、これが綺麗。素晴らしく幻想的です。が、ここで気になったのが振付です、なんとなく私が覚えている振付では上げる足が交互に左右で変わっていったと記憶しているのですが、何故かずっと同じ足を上げるのです。出来れば交互に違った足を上げる方がより美しく見えると思うのですが。少し残念でした。が、それも些細なもので、非常に美しいコール・ド・バレエだったと思います。
「ボレロ」は素晴らしかったのですが、ひとつだけ不満もあって、演奏がいまひとつでした・・・特にボレロってある意味ソロの連続。そのソリストがミスタッチされると、そちらが気になって集中できなくなってしまいます。もう少し配慮して欲しかったです、プロなんですから。ギエムだってびっくりしたと思います。テンションが上がってクレッシェンドで終わる曲、踊るダンスですし、最高に盛り上がっての幕となりました、余韻に浸りつつ家路につきました。
上野水香さん、もっと観に行こうと思いました、しかし、いい写真です。