アレキサンダー・ペイン監督 パラマウント・ヴィンテージ
昨年の映画で割合みなさんが上位に挙げている作品ですし、アレクサンダー・ペイン作品は「ファミリー・ツリー」を見たんですが、もうひとつピンとこなかったので見てみようと思いました。
雑誌の賞金に当たったと信じる父(ブルース・ダーン)は足が悪いにも関わらず、一人高速道路を出版社に向けて歩いて行こうとします。運転免許を取り上げられる程の高齢であり、警察に保護されたことも既に数回、息子であるディビッド(ウィル・フォーテ)も何度も説明しますが納得してくれません。そこで2人で父の故郷でもあり、出版社のあるネブラスカまで車で旅に出るのですが・・・というのが冒頭です。
いわゆるロードムービーであり、故郷を訪ねる話しであり、父と子の話しなんですが、ストレートでありつつも、何処か笑わせる演出、キャラクターが散りばめられていて、非常に上質です。何も起こらない話しではありますが、何と言いますかウディ・アレン作品では出来ない諦観を描きつつ、しかしその先を魅せる映画でして、私は好感を持ちました。
ブルース・ダーンはあまりよく知らないですし、ウィル・フォーテはもっと知らない役者さんですが、この2人がとても良い感じの距離感で、自然なのに、どこかしら、何かしらの問題を抱えた個人であり、その問題の抱えたからこその世界に対する疎外感があるからこその親子間の距離感になっていて素晴らしくリアルに感じられました。
息子であるディビッドの冒頭で分かるダメさと、頑固なだけでない父のダメさとが入り混じっていくのがまた面白く、しかもクライマックスで見せる息子の計らいと、それを受けての父の行動が、非常に、胸打つ作品です。
また、共感も何も感じないながらも、居そう、という1点に置いて恐怖すら感じさせる母親の半ば狂気にも似た怖さが印象的でした。お墓の前でする行動、凄いです。
家族のいる人に、オススメ致します。