岡本 喜八監督 東宝
岡本 喜八監督作品の中でまず見るべき作品と聞いたので見ました。ずっと前に黒澤明を紹介していただいた時と同じ方にオススメしていただいたのですが、本当に凄い作品でした。
昭和19年の大陸の何処か。将軍廟という最前線にある日本軍の駐屯地に新聞記者荒木(佐藤 允)が現れます。平和な将軍廟でも戦争は続いていて、大隊長(三船 敏郎)は心に病を宿してしまい、副官橋本が事実上の上官です。この将軍廟の先には独立愚連隊というさらなる最先端地を守る拠点があり、そこに荒木は向かおうとするのですが・・・というのが冒頭です。
もう、まっさらな状態で観賞するのが最も望ましいのは言うまでもないんですが、素晴らしくエンターテインメント性溢れる、それでいて黒沢作品とは少々テイストが異なり、戦争という現実を見つめた作品に仕上がっています。戦争の悲惨さを訴える作品は映像にも書籍にも多くありますし、確かにその通りですし、ある種の娯楽性(もちろん生き残って勝つ善側から だけ の視点作品)も多くあります。が、その両方を扱ってこそのささやかなリリシズムみたいなものがあると思います。その両方を扱いつつ、とてもリアルな作品になっているのに、娯楽性を失っていないのが凄いと感じました。
三船さん以外は、全然知らない人ばかりだったので(三船さんの大仰しさ、当たり役だと思います笑)主役の佐藤さんの顔の強さ、馬賊鶴田浩二ののっぺりした美人顔にも驚かされましたが、何と言っても石井軍曹役の中谷一郎の顔と雰囲気と演技にやられました。中谷一郎、凄い!こんな難しい役どころで存在感が出せる人はそんなにはいないと思います。本当に凄かったです。
脚本も非常によく練られていて、伏線回収や見せ方の演出、タイトルの出る瞬間の構図とタイミング、どれも息を飲む瞬間になっていると思います。戦争を描きつつ、推理サスペンスを交えていて、しかもそこにある種のロマンティックラブの要素も入れ(そして入れ過ぎない!)、なおかつ心意気という1本の大きな筋の通ったシナリオは本当に素晴らしいと感じました。西部劇要素がある、と言われていますが個人的に西部劇を子供のころから見させ られて きた身としてはそんなに西部劇っぽく感じなかったです。西部劇独特の勧善懲悪要素は皆無と言って良いと思いますし。
黒澤明と同じくらいのエンターテインメント性ある戦争を扱った作品、邦画に興味の無かった方に強く(私がそうなので)オススメしたい作品です。