(恐らく)中世のイギリス。アーサー王が亡くなった直後くらいの時期。貧しい村で暮らすアクセルとベアトリス夫婦は老年に差し掛かっています。この世界には「鬼」が存在し、常に霧が立ち込め、その霧のせいで人々は常に記憶を忘却しやすくなっています。2人は自分たちに息子が居た事を思い出し・・・というのが冒頭です。
また、アーサー王伝説はいろいろ話しがありますけれど、もっと詳しく知りたくなるように感じさせる部分もあって、もう少し調べてみようかと思ってます。特にガウェイン卿、ランスロット、については詳しく知りたくなりますね。
とても解釈の開かれた、しかしそれでいてどことなく悪夢的な作品でありながらメインテーマは多分『愛』なんで、そういったものが気になる方にオススメ致します。
細田 守監督 東宝
「時をかける少女」と「サマー・ウォーズ」が良かったからものすごく期待して観に行った「おおかみこどもの雨と雪」があまり好みの作品じゃなかったので・・・まぁ私が子供が基本的に好きじゃない部分もあるとは思うけど、ストーリィがとにかく・・・で敬遠していたんですが、ちょっとした空き時間にピッタリ上映していたので観ました。
9歳になるレンは両親の離婚に伴い(母は死別)引き取られる事になったのですが、納得できずに家を飛び出し、渋谷の街を彷徨っていると・・・というのが冒頭です。もちろんファンタジーの映画です。前作が母親の母性を完全、100%肯定映画だったので非常に心配しながらの鑑賞でしたが、割合素直に面白かったです。
今作は父親と子供の関係に焦点を絞ったのが良かったのかも。関係性という意味では熊徹(という父親代わりになる妖怪)とキュウタ(レンの妖怪世界での呼び名)という子供に成長や変化はほぼ皆無であるのに信頼性が高まるのが良かったです。リアル父親との関係性の再構築も葛藤があって良い。ただかなり説明台詞が多いし、強引な展開も多いし(あのヒロインの登場場面の古くさい手法はちょっとどうかと思いますよ・・・)、ダメな部分も多々あるけど、これはやはりローティーンに向けた作品なんだと思うといろいろ納得出来きます。そういう意味で子供向けの作品の素晴らしさは充分に感じられました、ただ大人の鑑賞に向けられた作品ではないかも。何処かで見た、という部分が多いのも事実だと思いますし。でも子供にとってはこれがその最初のひとつ、と考えると丁寧な作り方だと思いました。最初の1回性って偶然出会うものですしね。それがこの作品だったなら、そんな子供は恵まれていると思います。
宮﨑あおいさんが少年役にはちょっと無理があります(女の子に見える)が、大泉洋さんと、何より熊徹の役所広司は素晴らしかったです。子供ならびっくり出来る伏線の張り方も良かったと思います。
まあ死者が出なかったニュースを流すのはちょっとどうかと思うけど(あの規模の爆発で死者が出ないのはまぁ無いのではないかと・・・)とか、ダメな部分はあるにしろ、子供向けと考えれば十分良作だと思います。
子供の人に、あるいは親になった人に、オススメ致します。
アリ・フォルマン監督 TOHOO FILMS
これはなかなかの良作。絵柄がぶっ飛んでます。あと、ホントに愛の話しなのかな?なんかエゴの話しに見えました。宣伝では「愛」の物語とうたってるけど、何か、微妙に違った印象を受けました。
女優として華々しくデビューし、一時代を築いたロビン・ライト(という役を演じているのが実名ロビン・ライト というメタ構造です)。しかし息子が難病に罹り現在は仕事があまりありません。ロビンの代理人であるアル(ハーヴェイ・カイテル)はそんなロビンの唯一の理解者でありますが、新たな契約を映画会社ミラマウント(!)と結ぶべくロビンの家族とも話し合うのですが・・・というのが冒頭です。
映像が実写とアニメーションを組み合わせたものになっていて、幻覚剤を使用している場面をカッコつきの「幻想」をアニメーションで、カッコつきの現実世界を「実写」表現で表しています。その表現方法からしてかなりぶっ飛んだ映画になっていると思います。しかも役名をリアルな現実の役名でわざわざ採用している部分も考えると、かなりのメタ構造を含んだ作品になっています。
これはおそらく、何度か視聴しないとワカラナイ構造にもなっているんですが、非常に面白い作り方だと思いました。またちょっと見たことが無い作品です。主役のロビン・ライトにはあまり好印象を持てませんでしたが、精神科医を演じたポール・ジアマッティはさすがでしたし、久しぶりにハーヴェイ・ミスターホワイト・カイテルが見られて嬉しかったです。
ネタバレを避けての感想になりますが、私は母親の愛情、というよりも母親のエゴイズムを感じてしまいました・・・とても奇妙で、リアルの底が抜ける作品、非常に近い感想を持ったのがアニメーション作家の今敏監督作品です。特に「パプリカ」と「パーフェクト・ブルー」の2作です。そしてもう一つ、これは演劇の作品ですが、最近見たブルドッキング・ヘッドロックという劇団の「1995」という作品です。どの作品も丁寧な作り、様々な伏線、細かな演出、説得力あるガジェット、素晴らしい作品に共通する何かを持っています。特に「1995」は女性の自己認識欲求の業の深さ、という意味でも似たテーマを扱った作品だと思います。
リアルという認識とは何か?という袋小路に入り込んだことがある方、母親という世界最大の秘密結社の構成員の方にオススメ致します。