いや〜サイコーです。ネタバレは避けますが、いや〜サイコーでした。タランティーノ節サイコー!なんて贅沢な時間なんだ!
ああ、新宿ミラノ座で観たかったなぁ。
しかもキャスティングが素晴らしく、途中大きなある出来事が起こってからの畳み掛ける展開もさる事ながら、私は前半の伏線の張り方の絶妙さが特に際立って良く感じました。
そして、ラストの朗読は本当にサイコーです、まるで『グレイト・ギャッツビー』のラストの文章みたいな名文で名シーンだと思います、はちょっと言い過ぎかも知れませんがそれくらい良かったです。
あと、誰が思いついたらのか分からないけど、ドアの仕組みはとても良かったです。
ああ、ブルース・ダーン、ティム・ロス、カート・ラッセル、メキシカン・ボブの人!、マイケル・マドセン、そして、サミュエル!みんなに見せ場があり、それでいてタランティーノの作品です。
特に『レザボア・ドッグス』が好きな方にオススメ致します!
イングマール・ベルイマン監督 ハピネットピクチャーズ
凄いモノを観てしまいました。個人的に今までで1番恐ろしい映画は「ブルー・バレンタイン」だったのですが(2番は「ファニー・ゲーム」)、この手の男女関係モノとして有名な「レボリューショナリー・ロード」や「ブルー・バレンタイン」や「ビフォア・シリーズ3部作」よりも時間をかけた作品です。それも極小の関係性に焦点を当てて、これでもか、と時間をかけた作品です。
ある種の地獄となりうる閉じた「夫婦」というリレーションシップだけに焦点を当てた作品です。正直ちょっとしたホラー演出やスプラッター作品よりも、恐ろしいと私は感じました。まぁ「ブルー・バレンタイン」ほどではありませんが、しかしそれは帰結先が違うからで、こちらの方がより恐ろしいとも言えますし・・・
1話50分くらいの6連ドラマの映画版、297分あります。まぁほぼ5時間ですが、これが5時間見た、という疲れは感じさせません。ものすごく緻密に積み上げられ、しかも結婚や同棲をした人であれば必ずどこかに共感出来るダイアローグがあります。というかこの映画は基本バストショットの対話劇で、しかも主要登場人物は2人です。各話に多少友人夫婦なり、インタビュワーなり、同僚なり、母親も出てきますが、90%くらい主人公の2人のどちらかが画面に映っていて、95%くらい議論を繰り返す室内劇です。
ユーハン(エルランド・ヨセフソン)は42歳で心理学研究所の助教授、寡黙でパイプを好む知性ある男です。マリアンヌ(リブ・ウルマン)は35歳で民法を扱う弁護士であり、2人の娘にも恵まれた善き母であります。そんな2人が結婚10年を迎え、マリアンヌの友人である雑誌のインタビュワーに、理想的夫婦として取材を受けています・・・というのが冒頭です。
この取材を受けているソファーに座った2人を映すショットを観て思い出したのが「恋人たちの予感」ロブ・ライナー監督作品です。そうか、この映画へのオマージュだったのか、と勝手に納得してしまいました。
というのはまぁ勝手な思い込みとしても、素晴らしく練り上げられた脚本、その非常に緻密な脚本を見事に演じきったエルランド・ヨセフソンとリブ・ウルマンの2人が凄過ぎます。こんなに表情の変わる、目で訴えられる、しわが動く事で受け手を深い虚無的な印象を与えるなんて本当に凄いです。というかこの脚本を演じられるだけで凄いです、なにしろ凄い長回しの連続なんです。
ネタバレは避けて、の感想ですがせめてタイトルだけネタバレ致します、というのも各話のタイトルが秀逸なんです。1話「無邪気さとパニック」2話「じゅうたんの下を掃除する方法」3話「ポーラ」4話「涙の谷」5話「無知な者たち」6話「夜中のサマーハウスで」とても詩的でもあり、観たい!と思わせる魅力に溢れています。
男性の傲慢さ、女性の衝動、相手を思いやるようでいて、実際は自己保身でしかない事、身体的接触を取引に使うなど、様々な心に刺さる言葉に溢れた作品です。
私の個人的な感想ですけれど、この極小の関係性を保っていく努力をお互いが払えないと(しかもその努力はきっと、相手にはっきり伝わる事はないんだろうなぁ)難しいですし、それでも人の心は移ろって行くものですよね。この放送後にスウェーデンの離婚率が急上昇したそうですが、なんかそれも分かる気がします。離婚はあまりよくない出来事かも知れないけれど、決して悪い選択肢では無いのではないか?とも思わせる映画でした。
「ブルーバレンタイン」や「アニー・ホール」や「ビフォア3部作」が好きな方に、夫婦関係がどういったものかを知りたい方、既に知っている方にオススメ致します。