先週末に老年歯科医学会に参加してきました。
老年歯科医学会とは高齢者の歯科医療に特化した歯科の学会です、ものすごくいろいろ端折った言い方になってしまいますが。私は2年前から参加するようになりました。
また歯科医師会での仕事の関係上、老年歯科医学会での発表は、私たち歯科医師会での高齢者への様々な関わりを、評価する機会になります。評価する事で、初めて事業をよりよい方向に変えていく事も出来ると思うのです。
今回は虚弱(=フレイル)というトピックを大きく扱っていました。
まだまだ分からない分野の話しですし、専門性も高く、私自身も勉強してお役に立てるようになっていきたいと考えています。
特に学会場では国分寺市歯科医師会の横山先生とお話しする機会があって、いつも驚かされます。非常にバイタリティ溢れる熱い先生で、少しでも同じように出来たらなぁ、と思います。
学会に参加する事で土曜日を休診になってしまいました、ご迷惑おかけしてすみませんでした。その分勉強もしましたし、今後に繋げていきたいです。
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督 アスミックエース
とある友人が楽しかった、との感想を聞いたので観てきました。
ただ、この邦題はかなりの抵抗感があります、原題「THE BRAND NEW TESTAMENT」をどう訳すか?なかなか考えると面白いです。私なら「新・新約聖書」でいいような気がします。もしもう少し捻るなら「ネオ・リアル・聖典」とか「新たに加わる6人の使徒」とかどうでしょうか?この邦題ですと、私は多分劇場にはいかなかったと思います。
いわゆるお伽話の形をとったブラック・ユーモア、リアルでファンタジックな新・新約聖書物語です。
キャスティングがとても良くて、神様の娘・エアがとてもかわいく、上手いです。非常に嫌な感じの神様の役のも非常に上手いと感じました。
また、音楽もとても素晴らしく、人物を表現するのに使う選曲がたまりません。
ファンタジックと言いながらもリアルで少しビターなジョークを交え、くすっと笑える映画です。私はある映画監督を思い出さずにはいられませんでした。「アメリ」の映画監督ジャン=ピエール・ジュネです。リアルとファンタジーの混ざり具合、その余韻なんかもかなり近いと感じました。
アメリが好きな映画な方に、オススメ致します。
塚本晋也監督 海獣シアター
塚本監督作品はわずかに「鉄男」を見ているのみです・・・不勉強で申し訳ない感じがします。ただ、なんとなく、ですが私は監督が主演を兼ねる作品に個人的傑作があまりなく(フィルモグラフィー的に追いかけてるわけじゃないのに偉そうですみません)、その辺も敬遠気味だったのかも知れません。なんとなく、で申し訳ないんですが。この『監督兼主演問題』は一考に値すると思っていますし、どうしても自意識の問題、ぐるっと回ったマッチョ的な思考を覚えてしまうのです。自己顕示欲と言い換えても良いかも。その辺を上手く処理(客観的思考もしくは卑下される、笑われる行為が入らないと・・・)している監督、チャーリー・チャップリン監督くらいしか思い浮かばないです、逆に見てダメだったの筆頭がウディ・アレン、次いで北野 武、クリント・イーストウッドです・・・世間の評価は高いかも知れないけど個人的に好きになれない・・・もちろん中には素晴らしい作品もありますけどね。あ、主演でなく監督作品にチラリと出てくる(たとえばヒッチコック)は大好きなんですけど。
大岡 正平さんの作品は何冊か読んでいますし、あの金井 美恵子さんが『目白雑録』を書いたのは大岡 正平さんの『成城だより』を書いていたから、という話しから数冊読みました。で、素晴らしいなと感じていたのと、映画を観た方々の評価が非常に高いので、DVDになったので手が伸びました。本当は劇場に行きたかったんですが・・・
太平洋戦争末期の南方の何処か。咳き込む男(塚本 晋也)が上等兵に殴られながら、必死に咳を押し殺しつつ、病院送りから本体復帰を願い出るも、受け入れられない。それでも上官の指令には逆らえずに、野戦病院に舞い戻ると・・・というのが冒頭です。
この後、野戦病院での出来事から、この戦場では何が起こるか分からない恐怖、自然と仲間である兵隊たちと行動を共にする事など、戦時における(普通の)時間が描写されるのですが、鮮明な画像で見せつけられ、恐怖を覚えます。いかに戦時が異常な状況であり、正常な判断が効かない、普通であることが死に繋がる世界を生き抜く事の葛藤を描いていて本当に恐ろしいです。
サーチライトのあるシーンの描写については、顔をそむけたくなるくらいの衝撃度があるのですが、その後のクライマックス、そして後日談として描かれる行為を考えるに、いかに『人』を傷つけ、元に戻る事が叶わない事であるのか?を受け手に突き付けてきます。原作の持つ恐ろしいまでの事実性、体験に伴った映画化だと思います。
リリー・フランキーさん演じる兵隊とその子分的な兵士を演じる中村 達也さんの演技、狂気へと至る過程が恐ろしく臨場感ありました。全然知らない俳優さんですが、幼さを残しつつ、純粋だからこその狂気への変貌の早さみたいなものを感じさせてくれて本当に恐ろしいです。象徴的な「赤」の表現、呪いをかけるような呪詛とも捕えかねない最期の言葉、本当に怖いです。
また伍長という特別印象に残る役を演じた中村 達也さんの目の演技はなかなか凄かったです、気になる俳優さんになりました。
日本軍の死者のどのくらいが餓死者であったのか?正確な数字はネットでは分かりませんでしたし、多分正確な数字は無いと思います。しかし、いや、だからこそ、いわゆる大本営が軍隊を統制出来ていなかったのか?を表す事実ではないかと私は思います、徹底的に、無条件降伏という条件を呑まなくてはならない程の、敗戦であったわけです。おためごかしの「終戦」という単語はどうしても好きになれませんが、それが日本という観念を大事にする国の良い所でもあり、悪しきところでもあるわけで・・・
閑話休題
とにかく、餓死という極めて受け入れがたい、状況が目の前に広がる世界に立たされた男を描いた傑作であることは事実です。
で、良いところも多かったんですが、あくまで個人的な意見ですが、私はもう少し塚本さんの視野を見たかったように感じました。どうしても塚本さんの視点ではなく塚本を映す場面が多く、たしかに説得力ある表情なんですけれど、少し盛り過ぎな印象を受けてしまいました。もう少し抑えた演技が見たかったです、あくまで個人的な意見ですけれど。
戦争行為に、究極の状況に置かれた人間に興味のある方にオススメ致します。