井の頭歯科

「ハクソー・リッジ」を観ました

2017年6月30日 (金) 11:40

メル・ギブソン監督     キノフィルムズ

宣伝かなりしてますね、言えばいわゆるハリウッドの言う「真実の物語 True Story」って奴です。でも事実はひとつしかないけど、真実はいっぱいあると思いますし、物語って基本的に脚色された、作られた話しですよね?とか、いろいろ言葉として考えてしまうんですが、まぁこれは映画ですし、もちろん脚色されていると思います。そして「真実の物語」と宣伝して、お客さんにたくさん足を運んでもらいたいと映画製作会社から依頼を受けた広報が考えて、戦争映画だけれども、感動巨編という切り口で宣伝した方が良いと判断した結果なんだな、と思います。こういうどうでも良い事考えたりするからメンドクサイ人間なんだと自分でも思いますけど、でも言葉を使うのであればどうしても考えてしまいますね。

第1次大戦に従軍して色々な意味で傷ついた父の基で育ったデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は敬虔なクリスチャンです。しかし、徐々に第2次世界大戦の戦火が広まり、自分でも軍に協力出来る事があるのではないか?と考えたデズモンドは陸軍に入隊するのですが、銃に触れることは出来ず・・・というのが冒頭です。

衛生兵として軍に帯同し、銃を持たない男の話しです。大変感動的な話しにもなっていますし、宣伝として正しいと思います。ですが、非常に解析度の高い戦争描写を行っていますし、2時間20分くらいある映画の半分は、とても惨い戦争シーンです。有名なプライベート・ライアンの冒頭シーンを、さらに進化させていると思います。もう本当に凄いです。しかもCGをほとんど使用していないそうです、正直全然分かりませんでした・・・おそらく、実際の戦場はもっとむごたらしいでしょうし、父の戦争体験からくるPTSD症状の描写も、かなりキツイ表現でした、これも実際はもっと厳しいのでしょうけれど・・・

デズモンド役のアンドリュー・ガーフィールドの演技は普通に感じられます、特別良かったとも思えないし、特別悪い印象もないです。スコセッシの「沈黙」の方が良かったように感じましたが、この人も上手いですよね。デビッド・フィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク」の時から気になってましたが、好青年を演じるのはいいと思います。今回の中でも最も良かったと感じたのは、父親を演じたヒューゴ・ウィ―ヴィングと、デズモンドと対立する事になるスミティを演じたルーク・ブレイシーが良かったです。デズモンドとスミティの関係性は丁寧に描かれてたと思います。

前田高地(ハクソー・リッジ)の戦いを描いているのですが、日本人ももちろん出てきますし、リアルに感じられました、アメリカ側から見たら、こういう風に見えたんだろうな、という意味で、ですが。苛烈極める戦争の一場面、そして追い詰められている日本側の緊張、それでもなお抵抗を重ねる事のある種のリアルや狂気を感じる事が出来ました。

正直結構覚悟して観に行きましたし、メル・ギブソン監督作品はこれが初めてだったんですが、これは噂に聞いていたよりヘヴィに感じました・・・

戦争映画は極度の緊張下にあるからこそ、起こり得る様々な状況を通常とは違った感覚として説得力強く描けるという特徴があると思います。死を想起させるものに満ちています。しかし今回の映画はそのリアルさと言いますか、凄惨さがちょっと飛び抜けています、宣伝だけを見て映画館に足を運んだ人たちのショックを想像するに、結構な体験だと思います。

あ、ネズミが嫌いな人は絶対に観ない方が良いと思います、これだけは断言出来ます。

ネタバレなしでの感想なので、曖昧な表現になってしまいますが1点思うのは、もう少し早く、組織として何か出来たんではないか?と思うんです。最初のロープから降ろされた時から随分時間が経っていますし・・・そして非常に分かり易い表現でデズモンドの行為を待つのが、演出としてどうかな?と感じました。そしてやはり触れずにはいられないんですが、民間人は出てきません。恐らく、いや確実に、民間人も巻き込まれているのです・・・その部分への描写が、全くないのは、正直ご都合主義を感じました。ここまでリアルにこだわるのであれば、ちょっとで良いから民間人の描写を入れた方が良いと思います。

スティーブン・スピルバーグ監督「プライベート・ライアン」、リドリー・スコット監督「ブラックホーク・ダウン」が好きな方にオススメ致します。ヒューマニズムの映画なのか?私には結構微妙です。

新シーズンが始まりますね

2017年6月23日 (金) 09:45

今年はあの、ツインピークスの続編、というか25年後を描かれます。

いろいろな人物が出てきて、様々な事件が起こります。

観たことある人でも、ハマってしまう人と、ハマらない人が居たと思いますが、私はとても、ハマってしまいました・・・大学生だったのですが、新作のビデオの貸し出しに生まれて初めて開店前に並んだ記憶があります。やたらとドーナッツやコーヒーを飲んだ気がします。

一体どんなストーリィになるのか?とても気になりますが、まだ放送されていません(アメリカでは放送始まっています)ので、もう何も予備知識なしで観たいです。

レッドカーテンの部屋(そういえば、オリジナル・ラブの前身はレッドカーテンという名前だったらしいですね)、いわゆるブラック・ロッヂの惨劇の後、クーパーがどうなったのか?早く観たいです。WOWOWには入っていませんし、テレビも無いのですが、DVDにはなると思うので、それまで何とか情報を閉ざしておきたいです。

デビッド・リンチ監督の最高傑作はやはりツインピークスだと思います~

「シェーン」を経ての、映画「ローガン」を観ました

2017年6月16日 (金) 09:40

シェーン、というアメリカ映画があります、古き良き作品という事になっている古典ですね。このシェーンを何度か見ているのですが、個人的にはどうしても乗り切れないのです。シェーンはいわゆる流れ者ヒーローの原型になった物語です。ある強者に搾取される困った弱者の集団に、どこからともなく現れ、味方になる凄腕の流れ者、そして悪を懲らしめたうえで、弱者の集団から立ち去ってエンディングという流れです。

主人公シェーンに感情移入出来れば、凄く心地よいヒロイックな気持ちにさせてくれえる作品だと思います。ヒーローは得体のしれないミステリアスな魅力に溢れ、腕力的な強者であり、すべてを終えて去ってゆくヒロイズムって奴です。

昔からこれに違和感を覚えてまして。どこかしら自己陶酔を含んでいると感じるのです(自己陶酔の何が悪い!と言われると特に悪くないです、すみません、でもあんまり個人的に好きになれない、という程度です)。
シェーンの場合は撃たれていて、これから死ぬのが分かっている、という解釈もあったと思います。人それぞれの解釈が許されると私は思いますし、誤読も受け手の自由だと思います。

ジェーンの立場に立てれば確かに心地よいんですが、当たり前ですが、そう簡単になれません。また、弱い立場の人間(良き人物も、悪い人物も、そして悪い人物に仕える人物も・・・)にも等しく、暴力が揮われます。なんとなく、物凄く悪者扱いされている人にも、それなりの事情があったりするんじゃないかな?とか考えてしまったりするのです。子どもの頃の話しで、今では鮮明に何もかもを覚えているわけではありませんが、子供ながらにも、ずいぶんと都合よく退場してしまうものだな、そしてひいては西部劇って本当に単純な勧善懲悪の世界なんだな、と思っていたのです。まぁわけあってたくさんの西部劇を見る環境に育ったもので・・・

この原型を推し進めると、イーストウッドの西部劇映画はだいたい当てはまると思います、「ペイルライダー」しかり、「許されざる者」しかり、そして名作という事になっている、「グラン・トリノ」(の感想は こちら )もです。毛色の違う西部劇で言えば、コメディタッチにする代わりに、漢(オトコ、と読んで欲しいです)・イーストウッドが負けを受け入れる「ブロンコ・ビリー」の方がずっと潔いと思いますし、もっと異色の「センチメンタル・アドベンチャー」はさらにその先を魅せてくれます。

なんでこんな昔の映画の話しをしているか?と言えば、それは先週観た映画「ローガン」で、古き良きアメリカの象徴として、映画「シェーン」が扱われているからです。

ローガンとはこの映画の主人公の名前です。パラレルワールドを舞台にした、ミュータントと言われる特殊能力を持った人間とその世界との軋轢を描いた作品のようです。というのは私も詳しくないのですが、この映画「ローガン」がとても人気があり、しかも割合いろいろな人が絶賛しているので足を運びました。

驚異的な回復力を持つミュータントであるローガン(ヒュー・ジャックマン)は、世間からはミュータントが絶滅しつつある事を知りながらも、素性を隠して、生きています。また徐々に自らの体力の衰え、驚異的な回復力の減少、老化を自覚しながらも、師と仰ぐ人物であるが今は認知症を患う同じミュータントであるプロフェッサー(パトリック・スチュアート)と隠遁生活を続けているのですが・・・というのが冒頭です。

映像が非常にソリッドでして、構図としても非常に良い、雰囲気ある、見た目カッコイイ映画でした。脚本も、ここまでシェーンを取り上げるなら、もう少しぼかした表現か、暗喩で済ませた方が含みがあって個人的にはもっと評価できたと思いますが、それでも十分に楽しめる作品でした。

キャストも素晴らしく、ヒュー・ジャックマンの衰え行く肉体や、背中で語る哀愁のようなものをうまく表現出来ていると思いますし、キーパーソンであるプロフェッサー役のパトリック・スチュアートも老獪な演技力を見せてくれます。さらに子役のダフネ・キーンの見た目の良さ、目線の冷たさ、言葉というか叫び、そのどれもがチャーミングでした。

もし、今までに何作も作られているこのシリーズを追いかけ、このローガン=ウルヴァリンに愛がある方から見れば、とても素晴らしい、そしてヘヴィーなラストが待っています。そしてこのキャラクターのある種の終焉として見事なラストだとも思います。

誰しも老いや衰えや、そして死を避ける事が出来ません。が、この主人公はその老いや死が起こらない事が特異能力だったのです。だからこそ、より老いや衰えや、死を見つめる眼差しが深いと思います。

もちろん不満な部分もあって、その死への眼差しが脇役にも、もう少しでいいから振り分けて欲しかった。そこが最も残念です。

ローラ役が美しい女の子、というのもそれほど美醜に優れていなかったら、とか、男の子だったら、とかは想像してしまいます。最後にある理解のポイントの感覚に僅かながら変化が生じるかも知れません、人によっては、という事ですが・・・

老い、衰え、について、終着点を考えてみたい方にオススメ致します。もしくは、ウルヴァリンシリーズを見てきた方に。

「アルファヴィル」を見ました

2017年6月9日 (金) 09:25

ジャン=リュック・ゴダール監督    日本アート・シアター・ギルド

ひょんな事から仕事関係の方からお借りしたのですが、その方はなかなか文化に造詣の深い方で、東西に分かれて居た頃のベルリンに住んでい事もある、という人です。ちょっと話すだけなのに、いつも驚愕的な事を話してくれます。クラウス・キンスキーとか、裸のラリーズとか、エルンスト・ユンガ―とか、マンディアルグとか、平野威馬雄とか、普通なかなか出てこない単語を会話の中に入れてきてくれます、ある程度分かってしまう私もどうかと思うことありますけど。そんな博学とはちょっと違うんですが、自らの嗜好を研ぎ澄まして深めようとしている方のオススメだったので見ました。

ジャン=リュック・ゴダール監督については全然見れてないので、私ごときが何をか言わんやですが、とにかくヌーヴェルヴァーグの監督、という事です。ヌーヴェルヴァーグについても、全然知識がないのですが(僅かに見た事あるのは、エリック・ロメール、アニエス・ヴェルダ、フランソワ・トリュフォーくらいです、それも数作づつなんで・・・)、もう少し今後は勉強したいと思ってます。

いわゆるディストピアを描いたSF作品ですが、1965年公開という事を考えるとキューブリックの「2001年宇宙の旅」が1968年ですから、なかなかに早いです、ゴダールのフィルモグラフィの中でもかなり初期な作品という事になると思います。

外宇宙からレミー・コーション(エディ・コンスタンティーヌ)がアルファヴィルという都市に着きます。このアルファヴィルでレミーは新聞記者の偽名を語りつつ、アルファヴィルの指導的立場にいるブラウン教授の奪還と、アルファヴィル潜入後に消息を絶った仲間アンリを訪ねる使命を持つ諜報機関員、スパイなのですが・・・というのが冒頭です。

非常に奇抜なアイディアに満ちた作品でして、SFなのに当たり前ですがCG処理とか一切ありません。そもそもそういう風に作っていないのです。でも、ちゃんと未来の、ように、見えるんです。

また映像的な工夫もあって、そこも結構気に入りました、ネタバレに繋がるので言及は避けますが。

特異な建築物、靄がかかった風景、奇妙な挨拶、トーキョーラマとか遠隔通信とかいう名称、光源を動かす事での影の移動で魅せる(これってすごくニコラス・ウィンディング・レフン監督作品「ドライブ」を思い出させます。「ドライブ」の感想は こちら )、かなり特徴的な斬新な映像表現に加えて、意味が分かるようでいてなかなか分からない微妙な感覚で不安感に陥れたり、と非常にテクニカルなイメージがあります。名称のアルファヴィルって名前も凄いですし、第3級誘惑婦という職業、論理さを突き詰める為に感情の発露を犯罪にまで高めてしまう法意識、死刑の方法など、とにかく秀逸な表現が続きますが、ストーリィは非常に単純なクエストモノです。今ではよく見かけるストーリィなんですが、当時はとてもショッキングだったと思います。

論理に対抗する主人公の行動には少々疑問を持ちましたけどね・・・

主人公のエディ・コンスタンティーヌの演技は普通な感じがしますが、監督であるゴダールの、ヒロインであるアンナ・カリーナを見つめるようなカメラワークと、異常に接写というかアップが多いのが特徴的でした。相当な美形で表情が乏しいためにクールに見えるんですが、まつげがちょっとどうか?と思う程大きく、妙に気になってしまいました。この当時の未来感ではこういう事なんでしょうか?またアンナ・カリーナの衣装はかなり気に入りました、凄く素敵な衣装です。

難解になりそうでならない絶妙なポイントで留まっている不思議な作品です。SFやディストピアモノが好きな方にオススメ致します。

いよいよ今週末です!第50回よい歯の集い!

2017年6月6日 (火) 09:32

いよいよ今週末の土曜日に、第50回よい歯の集いが開催されます。

土曜日のお忙しい時間だと思いますが、是非多くの方にご来場いただきたいです。

岡﨑先生は小児歯科がご専門ですが、障害者歯科やその他にも大変詳しい先生で、しかも話しがとても面白いのです。岡﨑先生のご紹介は  こちら が分かり易いと思います。

落語も楽しみです!

今年は学会の時期とズレたので会場にいます!どうぞよろしくお願い致します。

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