ジャスティン・カーゼル監督 スタジオカナル
恥ずかしながら、シェイクスピアの戯曲を読んだこともなく、演劇も観たことありません。ただ、バレエだったら見た事あります、非常に古典的なストーリィだと思ってます。なので、それほど気に留めてなかったのですが、シェイクスピアは何人かの合作なのでは?という『シェイクスピア別人説』というのを知った事で俄然興味が湧いてきました。たしかに膨大な数の本を書いていますし、専門性ある様々な分野を扱っているのに、手紙が一通も残ってなかったり、署名が4種類ほどあるのも不思議ですし、遺言に製本化されていない戯曲(死後に出版されている)についての記述が全くない点があって、そういう説があっても不思議じゃないと思いました。生年が1564年(?)で没年が1616年、わずか400年ほど前の人なのに不思議です。
でも、私はシェイクスピア4大悲劇のどれも見た事ないですし、見ている作品だと「プロスペローの本」ピーター・グリナウェイ監督作品なので、ちょっとどうかと思いますし、もう一つ見ているのが「タイタス」ジュリー・テイモア監督作品なのですが、こちらはなかなか斬新な映画でしたけど、かなり描写は惨いシーンが多めでした、そういう話しなんだとも思いますが・・・
そんなわけで、少し見てみようと思ってTSUTAYAに行ったのですが、なかなかDVDになっている作品が少ないんですね・・・その中で唯一借りられたのがマクベスだったのです。
恐らく自身の子どもの葬儀をしているマクベス(マイケル・ファスベンダー)。沈痛の極みな場面から、戦闘シーンになり・・・というのが冒頭です。
魔女、というか預言者というか、とにかく不確かな存在である4人の女の予言から、マクベスの心がかき乱されて・・・というストーリィです。何かしら、何処かしら、何かで観た、と思わせるんですが、当たり前ですがシェイクスピアの方が先なんですよね。
マクベス夫人役のマリオン・コティヤールが初めて合ってると思いました、この人腹黒い役をやらせたらいいのに!と「インセプション」や「ダークナイトライジング」の時から見るたびに思ってました。やっと個人的なマリオン・コティヤールの当たり役を見た気になりました。マクベス夫人の置かれている状況は良くわからないんですが、魔女に焚きつけられたマクベスをさらに焚きつけるのがマクベス夫人で、貪欲さに、自らの事しか考えない人間に見えて怖かったです。また退場の仕方がなんとも納得できなかったんで、この部分はもう少しどんな解釈があるのか知りたいと思いました。
しかし素晴らしかったのがマイケル・ファスベンダー演じるマクベスです!何と言いますか、憂鬱な頭痛持ちの、その癇癪が何時起こるのか?という緊張感、その心の弱さや猜疑心の強さ、信念があった頃と全然輝き方が違う瞳、本当に素晴らしかったです。一種の狂気をちゃんと感じられます。
バンクォーとかマクダフとか脇のキャラクターのエッジも効いていますし、何処までも、何も信じられなくなった男の悲劇として良かったです。
そして映像がまた素晴らしかったです。
白と黒のコントラスト、赤と黒のは本当に素晴らしかったですし、遠景で見れるスコットランドの沼地の風景がまた素晴らしかったです。
なるほど、シェイクスピア面白いですね。演劇は舞台をどのように見せる事も可能な世界、映画とはまた違った芸術なんだと思いますが、戯曲としても読んでみたくなりました。
マイケル・ファスベンダーが好きな方に、オススメ致します。