湊 かなえ著 文春文庫
同業者の知り合いの方からオススメされたので読みました。ミステリーとして、どうでしょう?というお話しだったので早速読みました。ミステリはそれほど詳しいわけではありませんが、子供の頃から読書が好きになるきっかけのひとつではあると思います。そのころはみんな「ホームズ」とか「エルキュール・ポアロ」とかいわゆる名探偵が輝いて見えていました。何がどうなっているのか?分からない『謎』に明確な動機や証拠、そして容疑者を集めたうえで一つ一つ解決していくのが、カッコよく見えたのです。同じ本を読んで犯人に何処で気が付けたか?を考えたり、エラリー・クイーンだったら『読者への挑戦!』と煽られて犯人を推理したものです。まぁ全然当たらないんですが・・・でもとにかく面白かったのでいろいろ読みましたし、大人になってからでも時々は読んだりしますし、事によってはハードボイルド系もある種のミステリーだと思います、サスペンス溢れるミステリ風1人称事件簿、という感じでしょうか?
個人的な、あくまで今のところのベストですが、
「占星術殺人事件」 島田荘司著
「虚無への供物」 中井英夫著
「三重露出」 都筑道夫著
「十角館の殺人」 綾辻行人
「翼ある闇」 麻耶雄嵩
この辺が私の中では上がってきます。もちろん海外ミステリはまた別格でいろいろありますけど。
そんな中で今回読んだのは短編集でした。瀬戸内海にある白綱島を舞台にした6つの短編です。どの作品もフーダニットとかではなく、ミステリ色は弱めだと感じました。そしてとても女性的な因習にこだわりのある方なんだと理解しました。
とても女性的な視点から「いじめ」、「田舎と都会」、「因習」というモチーフを描いた短編集です。
トリックはあまり出てきませんし、1人称の物語の中に事件が起こるというか想起される、といった感じです。個人的にはもう少しひねりが欲しいとは思いましたが、女性からしたらとても共感出来る話かもしれません。あまり論理的だったり検証される場面が少ないので、あくまで『そうだったかも』という思い付きが、実は真実かも、というニュアンスで語られますので、モヤモヤした感じにはなります。スッキリと何もかもが解決するというカタストロフィは少ないかも知れませんが、その分読者が想像する範囲を残してくれているようにも感じられました。
6つの短編集の中では1番最初の「みかんの花」が良く出来ていると思います。
女性的なミステリが好きな方にオススメ致します。