やっと、やっと松葉杖が取れました!でも、やはり映画館が遠く感じますし、遠出がまだ難しく、寒いとイタイ足を引きずって歩くのはやはり疲れますね。そんな割合ダウナーな気分だったので手に取りました。
ダム建設の為に水没する事が決まった僻村。その住人であり働く若い娘はソウルの有名大学に合格の通知が来ます。そこで家に帰って母親に報告、自分の通帳から入学金を払おうとすると、通帳が何処にもありません・・・不審に思った娘は、そこに父親ミンチョルが半年ぶりに帰ってきている事を知ります。粗野で乱暴、横柄な口調でしか話せない、コミュニケーションの手段が常に暴力を伴うミンチョルは娘の預金通帳から黙って金を引き出していて使い、それを当然の権利と思っています。そんなミンチョルは町で暴力沙汰を起こすのですが、その相手は・・・というのが冒頭です。
奇跡を起こす神父の同志である長老は、実は詐欺師である事が割合早い段階で観客には知らされます。またその事実を知る者はミンチョルという普段からの暴力者、という対比が鮮明です。 ですが、割合考えられる予想範囲内の事が起こるので、ちょっと長く感じました。 神の沈黙とか因果応報や理不尽を扱った作品だと思います。 演出は普通なんですがキャラクターデザインが悪者は悪者っぽく、純真な者は純真な姿で表されていて、そこも紋切型に見えました。ですが、造形が漫画「ハッピーピープル」っぽい狂気さを含んでいるのは新鮮でした。
果たして、神は存在するのか?は大変難しい問題ですし、個人の心の問題なので簡単に判断できませんが、私は神さまはいてもいなくても良いと思います。もちろん信仰を否定するものではありませんが、表現としてオカシイですけど、無神論を信仰しているとも言えますね。神頼みよりも、出来る事をするだけしか出来ないとも思います。ヨブ記のようにはなかなか出来ないですよね。
大変暴力的な、悪魔のような男が語る真実を誰も理解出来ないという事と、信仰の対象がまがい物であったとしても信仰心による心の平穏の価値、というような事を扱った作品です。
ただ、この作品はもう少し掘り下げるべき部分があると思いますし、私が最も怖いと思ったのは、このような作品が現代に作られている、という事です。この点がまさにホラーだと思います。簡単に信仰というか何かにすがり、自分の責任を負わないというのは何か違う気がします。
信者の方々の信仰への簡単さ(映画「沈黙」のキチジローのような)や、その信仰心を表すのに金銭でしか判断されない部分もかなり厳しい印象を持ちます、考えない、という事の恐ろしさを感じてしまうんですね。
割合紋切型の神の沈黙を扱った作品、神に興味のある方にややオススメ致します。