ギレルモ・デル・トロ監督 20世紀フォックス
アカデミー賞おめでとう!
的なコメントで修飾される映画「シェイプ オブ ウォーター」ですが、個人的には『賞』ってあまり気になりません。もし、その『賞』をどのような?と考え始めると、必ずレギュレーションの問題になっていきますし、選考委員の構成問題にもなりますしね。文学賞で言えば『文学賞メッタ切り』でその辺を扱っていたので、気になる人は気になるし、ならない人はならないと思います。
賞を取る目的で作ってはいないと思いますけど、受賞作にも当然良いものもありますし、残念な作品も結構あると思いますね。
ですが、ギレルモ・デル・トロ監督作品は普通に面白いです。ので、観に行きました。
孤児院で育ち、しかも発話障害のあるイライザ(サリー・ホーキンス)は科学施設の清掃士として働いています。同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)とはとても仲が良く、手話を通しての理解があります。そんなある日、その施設に機密が運び込まれ・・・というのが冒頭です。
とてもロマンチックな作品に仕上がってますよ、凄いです。名作が多いディズニーの初期作品のような完成度です。そしてだからこそ、なのかもしれませんが、ストーリィは予想の範囲内でしか展開されません。しかし、ストーリィではなく、ある種のベタな展開を納得させるだけの仕組みが、非常に丁寧に作られている作品です。
まず、音楽がまず素晴らしい。まさにミュージカルのようで、この点でみても初期ディズニー作品のようです。この素晴らしさはおそらく年代設定によるものだと思いますし、狙っているのでしょうけれど、本当に王道で素晴らしいと感じました。まさにこの点も初期ディズニー作品のようです。
御伽噺なんですが、ここまでロマンチックに仕上げられるのが素晴らしいし、説得力があり、その上普遍性も持ち合わせているのが秀逸です。
役者も主役サリー・ホーキンスが最高です。決して言葉では表せないからこそ、そこに生じる葛藤があり、その上でのコミュニケート出来る人の限られている中での、それでも残ってしまう無力感が、映画内でのある瞬間に、その無力感があるからこその充足に繋がる部分が非常に上手いと感じました。あの、手話(見た人なら分かると思いますが、ありがとう、のヤツです)覚えたいです。そしてタップダンスの陽気さ、素晴らしいですね。同僚ゼルダ、隣の住人ジャイルズとのコミュニケーションも素晴らしかったです。
また「レボリューショナリーロード」サム・メンデス監督の時から凄いと思ってるマイケル・シャノンがまたまた素晴らしい演技です。この人最高です。飴玉を噛む人なんですが、これは歯には良くないのでやめた方がいいんですが、このアクションが凄みになっていて本当に恐ろしいです。ま、手を拭く問題もあってちょっと、な部分も含めて怖いですし、妙に聖書に精通しているのも、なんだか恐ろしいです。
脚本の大筋は間違いなく御伽噺なんですが、ここ1番の説得力、本当に素晴らしい。人間じゃなくなる、と言う部分の重さはちょっとハッとさせられます。こういう細かな部分の積み重ねが丁寧だからこそ、ベタでロマンティックなストーリィを飲み込ませるチカラがあると思います。
唯一、猫が可愛そうで残念…
字幕が黄色なのも見やすくて良い配慮でした。
もう1点好感を持ったのは、ジャン・ピエール=ジュネ&マイク・キャロ監督作品『デリカテッセン』のあるシーンのオマージュがあったからです。この映画も人生ベスト級に好きなんですが、その非常に盛り上がるシーンが再現されていて素晴らしかったです。
ディズニーの美女と野獣、白雪姫、バンビ、ダンボが好きな方にオススメします。決して主役が主役っぽくディフォルメされていなくとも(いや、そうでない方が、より!)ロマンティシズムを感じさせることが出来る事に、興味のある方にオススメします。
最期の最後のショットの美しさ、たまりません。