上田 慎一郎監督 PANPOKOPINA
大変話題の映画、僅か8館の上映から予約が取れない映画として話題になり、たくさんの方が、絶対見た方がイイ今年の1本、しかし何も聞くな!ネタバレになってしまうから!という大変宣伝の難しい映画なので、足を運びました。今では全国にまで上映館が増えています、こんな事ってまずない作品です。去年見た作品の「なっちゃんはまだ新宿」でさえ全国にはなりませんでしたが(しかし、レンタルDVDにはなっていますし、私はDVD購入しました!)、それを超える反響の作品です。
はい、私も何も言えない、確かにネタバレに繋がってしまう作品ではあります。が、ネタバレにならない範囲での感想をまとめますと、
1とにかく映画館で観るべき作品!
以下、若干のネタバレに繋がる要素も含んでいますので、もうとにかく劇場で観るべき作品である事はちょっとネットなり雑誌なりで調べれば分かりますので、是非のオススメです!
2とりあえずコメディ映画と思っていただいて間違いないです
3演劇が好きな方で、映画も好きな方は大丈夫です、1番楽しめる観客になります!
4ホラー映画リテラシー高い人も十分楽しめます!
といった感じになると思います。
また、役者さんが素晴らしい個性を発揮してくれます。主演の方々はみなさん素晴らしい演技です。
何を言ってもネタバレに繋がりますのでアレですけど、『ポン』と『よろしくでーす』と『ちょっと』が私の中でのベストのセリフです。
アテンション・プリーズ!
で、さらに感想をまとめたくなりまして、ここから完全ネタバレになりますので、鑑賞された方に読んでいただきたいです。間違いなく、何も知らない状態で観るべき映画、知らない事にプライオリティ高い作品、出来るだけ情報を閉ざして(今の現代ではこれこそが最も難しいんですけれど)観るべき作品なので、ご配慮お願い致します。
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とりあえず、最初に全編ワンカットのゾンビ映画を見せられます。ええ、大変拙い、少々脚本に無理があり、なんだか間延びした、ハッキリ言えばなんだ、噂もたいした事なかったな、と思ってしまえるけど、まぁ頑張ってはいるな、という評価の映画なんです。が、肝はここにあります。実はこのワンカットシーンの様々な所で参加者全員がとてつもない努力とアイディアと根性で、完成に導いているんです。
ココだけでまぁ「がんばれ!ベアーズ」的な要素で十分笑えます。でもそれだけでなく、そこを含んでの伏線回収が見事。確かにこれはみんな気が付くと思いますが、三谷幸喜の作風にそっくりです。それも映画ではなく、舞台とドラマの方の、です。登場人物の誰にも活躍の場や日の目が当たるシーンが用意されていて、全員が協力して、何かを成し遂げる、という一連の三谷作品の舞台やドラマの骨子を映画で成功させています、本家の三谷さんよりも上手く、しかも低予算で。その点に最も評価をしてイイと思います。本家の三谷さんでさえ長編映画デビュー作の「ラジヲの時間」でやや形になったかな、くらいだと思うのです、その後はまた微妙な方向に向かってしまうんですけど。
また、役者さんがどの方も素晴らしいですね。ボディタッチをしつつ強権的な要求を通してくる主演女優さんの「よろしくで~す」の全然よろしくじゃねぇよ感もたまりませんし、同じく主演男性の細かな指摘や設定に対するダメ出しなどの大変繊細と言えば聞こえが良いですけど、こだわるポイントが微妙に外れてしまっている感もイイです。また「ポン」の人の演者になりきってしまう逸脱した行動の凄さ・・・目がマジで逝ってますよね・・・怖いです。さらに私の最大の笑いポイントですが、やはりここは「ちょっと」です。ちょっとの彼の挙動不審な、メールでも送ったんですけど確認の細かな部分、人とコミュニケーション取れない感じの一方的な要求、そんな人だからこその、ルーティンの壊れた、非日常になってしまった時のテンパり具合の出させる「ちょっと」が最高です。
そしてなにより、この映画の主役を務めた監督役の方の演技、それもいろいろ込みでの演技が最高でした。ずっと、自分のポリシーを持てなかった、自信が無かった男の、この映画にかける全力のエネルギーの迸りが、あの狂気に満ちた感じと相まって非常に良かったです。1度目はその切れ具合に、そして事情が分かった2度目は、監督の心の声の叫びに、大変感銘受けました。時々大事な部分でアップになるこの俳優さんの、目の演技、恥ずかしがって泳いでしまう目から、激しくキレてノリに乗っている目まで、大変説得力があります。
ちゃちな血糊が、そのチープ感までも、好きな人には好きになってしまう映画だと思います。特にホラー好きな方にはOne cut of The Deadというタイトルが全てを理解させると思いますし、私では理解出来なかった細部のホラー映画へのリスペクトがあったと思います。
と、大変楽しみましたし、笑いましたし、劇場でもみんなと一緒に笑って、劇場体験として申し分ない出来栄えです。エンターテイメント作品として大変素晴らしい作品である事も、脚本の努力と練り上げ具合も最高です。でも、な部分もあって、それは大変演劇寄りな作品であるという事です。
なんか、何処かで観た既視感があります。演劇だと比較的この、一連のシーンを見せてからの後からその裏側を見せる、というのはパターンとしてあると思います。それを映画に持ち込んだのも、三谷幸喜さんはじめ様々な方が行っていると思います。ただ、その完成度の高さこそ、最も評価すべき部分ではないかな?と感じました。凄く代表的なモノをあえて挙げるなら、ラーメンズのコント『銀河鉄道の夜のような夜』です。コントでも舞台だとこのレベルでスゴイです。
最期に流れる主題歌のすっごくある曲を思い出させるのも、少しやり過ぎな感じはしました。
確かにホラー文脈で捕えられたら、楽しく見れる最初のワンカットシーンが、後から見れば確かに必要なんですけど、これが少々長いんですよね、正直かなり眠くはなりました。必要なんですけれどね。
それでも大変楽しい作品である事は間違いないので、是非劇場で!