冨永 昌敬監督 東京テアトル
2018年見逃し後追い作品その15で最終回です。今年公開映画で言えばやっと40本です。まぁ36本を自分にノルマとして課しているんですけれど、今年もクリア出来ました。
編集者+サックス奏者としてとても有名な方、さらに赤瀬川原平さん、南伸坊さんなど、ひと味違う著者、考え方が奇妙に面白がるチカラがある人々と繋がりがある方、というのが私の印象です。自伝的エッセイの名著と言われている「素敵なダイナマイトスキャンダル」の映画化です。たしか、私も読んでいますけれど、とても変わったエッセイだった、という事は覚えていますけれど、細かな内用はあまり覚えていません、が、衝撃的な内用だった、という事だけは覚えています。何しろ1980年代前半に出版された本ですし。
岡山の山奥に育った少年、末井(柄本 佑)さんの母親が家出をして・・・というのが冒頭なんですけれど、まぁとにかく破天荒な方の自伝です、すっごく有名なエピソードなんで、しかもタイトルに使用されてますからネタバレしてしまいますけれど、お母様がダイナマイトで自殺されてしまう、という大変ショッキングな出来事を幼少期に経験された、末井さんの身辺雑記です、もちろんフィクショナルな部分もあると思いますし、映画化にあたって改変された部分もある事はあると思いますけれど、多分本質的には事実だと思います。
一見自棄な行動に見えますし、大変行き当たりばったりな感じもするかと思います、正直眉をひそめる方もいらっしゃると思います、性的な話題を好まない方には向かない映画だとも思います。ですが、性的な事は扱ってはいますけれど、これは『表現』の話しだと思います。また、同時代を生きた方にとってはノスタルジーさえ感じる映画だと思います。
いつも日本の自主規制団体、映画倫理機構、通称映倫がわいせつ、をどのように判断しているのか?とても曖昧で恣意的な部分が気になります。わいせつかどうか?を判断するのは、観客であり、受け手で良いと思いますし、そもそも制作者に対して大変傲慢な所行だと思います。わいせつな部分がゼロな人間は恐らく存在しませんし、人によってわいせつかどうか?判断が違うと思うのです。まぁそういう自主規制を行っていますよ、という統治者へのエクスキューズなのかも知れませんけれど。できれば極力『ぼかし』という新たな「表現」を勝手に作品に加えるのは止めて欲しいです。で、この映画はまさにその「表現」についての映画だと思います。
柄本佑さん、初めて演技しているところを見ましたけれど、かなり良かったです。瞳の奥にある、狂気を感じる事が出来ます。非常に醒めた狂気のような何かが滲み出ていたと思います。また荒木さんを演じている菊池成孔さんの演技が秀逸でした。また、お母さんを演じていらっしゃる尾野真千子さんも印象に残りました。
表現する事、について考えてみたい方にオススメ致します。