メイコン・ブレア監督 Netflix
アカデミー賞ノミネート映画もいろいろと劇場で上映されていますけど、いろいろ仕事が忙しすぎてなかなか劇場に行けません。でもそんな私にもNetflixは見る事が出来ます。嬉しいかぎりです。タイトルが面白そうだったので、視聴しました。
看護助手として働くルースは、世の中のルールをいとも簡単に破る人々に憤慨しています。犬の散歩の途中に犬のフンを掃除出来ない男、レジにちゃんと並べない女、悪意を簡単に口にする患者、そんな人たちにいらいらしています。そんな時に家に帰ると空き巣の被害に遭い・・・というのが冒頭です。
社会に認めて貰えない女性が、社会への鬱憤を感じ、警察にも協力してもらえない事から、自ら犯人を捜していく過程を経て、自警団のような義憤を晴らしていく展開のブラックコメディです。タイトルである「この世に私の居場所なんてない」は原題ですと『I Don’t Feel at Home in This Anymore』となっていて微妙にニュアンスが違う気がしますけど、まぁよくある事ですね。
自警団という形をとる義憤に満ちた人の開放、という意味ですと、とても男性的な感情な気がしてましたけど、女性だって感じる事があると思います、というか同じくらい感じていても、自警団という形は取りにくいという事だと思います。男性自警団モノといえば、「キックアス」マシュー・ボーン監督、「スーパー!」ジェームス・ガン監督、「ディフェンドー」ピーター・スティッビング監督という非常に関連性の高くて面白いほぼ同時期の3作品が有名ですけれど、その女性版と言ってもいいような話でした。
対世界との関係性の話しは、個人的には結局自分との葛藤の話しだと思ってます。世界は変えられないけど自分は変える事が出来る、という決着が多いように思いますし。そういう意味では女性だったら?という意味で面白くもありましたし、予想を超えるものでは無かった、とも思いました。
とても綺麗な結末で、特に思いを馳せる部分が少なかったのも、トラウマ級の驚きも無かったですが、それでも、観ている間は、頑張れルース!という気持ちになっています。あ、どうしてもルースって聞くと名作「フライド・グリーン・トマト」を思い出します。本当に名作。
それと、後から気が付きましたけど、ルースの相棒になる男をイライジャ・フロド・ウッドが演じていて、これがかなり別人に見えて良かったです、さすが役者さん!主人公のルースよりも断然好感の持てるキャラクターで、正直とても良かったです。ブラックコメディは、時に非常にご都合主義に陥りやすくなりますから(今作もその範疇に入っている部分も大いにあります)、その点を中和してくれるキャラクターで本当に良かったです。ちゃんと謝る、不快感の理由を相棒にも率直に言える、基本的には同志、という3点がとても気に入りました。自己評価もすっごく頷けてしまった。
先ほど挙げた3作品で言うと特に「スーパー!」ジェームス・ガン監督作品が好きな方に、オススメ致します。
で、またアカデミー賞の時期が来ましたね。私は基本的に『賞』にあまり、いや全然興味が湧きません。アカデミー賞(でも芥川賞でも直木賞でもノーベル賞でも何でもいいですけれど・・・)を獲る為に作られた作品ってまず面白くないのが90%だと思ってます。この作品がどうしても作りたい、という気持ちではなく、結局のところ、自己承認欲求を基にして、その為の傾向と対策を意識する事になり、結果くだらない作品になると思っています。
あくまで『賞』を受賞する事は、作品を作り上げた結果だと思うのです。まぁそれでも、普段映画を見ない人(芥川賞とかでしたら、普段本を読まない人)が見に行った映画がヒットした映画、という事になるので、興行的には時々ヒット作品が無いと映画会社が存続しなくなってしまいますから、仕方のない事なのかも知れません。芥川賞と直木賞作品は2月と8月に掲載する雑誌「文藝春秋」の編集者であった菊池寛が作り上げた『賞』なのですが、何故2月と8月にしたのか?と調べた事がありまして・・・なんでか?と言えばこの『賞』を創設したのは、そもそも優れた文学作品を広める事もありましょうけれど、それよりも雑誌の売り上げが最も少ない月が2月と8月だったからなんですね・・・まぁだいたいにおいて、そもそも『賞』ってそういう傾向のモノだと思います。
まぁ過去の受賞作品を見ても好みの傾向に当てはまらないのであまり興味が無いのですが、アカデミー賞を予想する人(それも、自分にルールを課してストイックにしている人)には興味があったりします、自分でも不思議です。メラニーさん(一般人)の予想、すっごく面白いと思ってここ3年アカデミー賞に、少しだけ興味出てきました。ただ、メラニーさん(一般人)のアカデミー賞熱はさっぱり理解出来ないけど、その予想の立て方と楽しみ方には好意持てました。