しばらくお休みしておりました。思うところありまして。
ですが、いろいろ考えた結果、続けさせていただく事にしました。
ジョルジュ・シュルイツァー監督
あのスタンリー・キューブリック監督が、3回観て『今まで見た映画で1番怖い』とまで言わしめた1988年公開の映画で、長らく日本未公開作品だったのですが、新宿の映画館でついに公開されたので観てきました。本当に恐ろしい作品です。これと比べたら、ホラー作品なんてほとんどの作品が怖がらせる為の、子供だましに見えます。
レックスはサスキアと2人で初夏のフランスを車でドライブしています。これからフランスの田舎にある別荘で過ごす為に。しかし、トンネルで車はガス欠になり・・・というのが冒頭です。
失踪してしまう事、衝撃的な結末、サイコサスペンスの傑作、と言われています。私も同感です。素晴らしい映画でした。とにかく何も情報を入れず、予告も見ないで、今すぐ観に行くべきけです。
執着、の映画だと、私は感じました。
今年の今のところのNo.1です。
サスペンス映画が好きな方に、強くオススメ出来る傑作です!
アテンション・プリーズ!
基本的にネタバレはしないで観て頂きたいのですが、観た方とはいろいろ話したくなる傑作です。
ネタバレを含んだ感想ですので、未見の方はご遠慮願います。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
私はこの映画の主役はレックス(被害者)ではなくレイモン(加害者)だと思います。キャストの最初もレイモンですし。
レイモンも最初からずっとサイコパスなわけではなく、漫画家・吉野朔実が「ピリオド」でも主人公迥も言ってましたが、殺人者や異常者だって日常的に異常な事ばかり考えているわけじゃなく、生活もしているわけです。レイモンのように、人助けだってします。大学で生徒に授業をしたり、家族の中では良き父親を、演じる事さえ出来ます。 そして、だからこそ、恐ろしさが増すわけですけれど。
もちろん、レックスの取る行動は、最初は普通なのですが、サスキアへの愛情(でも地続きに執着)、謎への執着から、次第に狂気の領域に足を踏み入れて行く様が、やはり恐怖を感じずにはいられません、明日私が同じ様な理不尽を経験し、捕らわれてしまう事だって十分にあり得ますから。この世は理不尽には事欠かないです、人の悪意だけじゃなく。
閉所恐怖症なレイモンが、その診断書まで手に入れつつ、自らの閉所恐怖症を克服する、儀式のように、人をさらって、生きたまま棺桶に入れる行為には、きっとレイモンなりの意義があり、執着があります。
サスキアへの愛情かも知れないが、レックスの行動は、私にはサスキア失踪の謎への執着だと感じています。何しろ、犯人と対峙し、サスキアと同じ目に合わせてる、と言われて睡眠薬入りコーヒーを飲んでしまうのは、サスキアはまだ生きている可能性もゼロではないけれど、かなり低いと、頭では理解していると思うのです。
しかし執着故に、コーヒーを飲んでしまうレックス。 レックスが結局コーヒーを飲む事まで理解していた、レイモンの執着と冷静さが勝った瞬間だと思います。
コーヒーを飲むシーンの、恐ろしいまでの葛藤、そして映画の観客もここでレイモンとの共犯関係を成り立たせるのが、巧妙過ぎると思います。私も、例えレックスがどうなろうと、サスキアがどうなったのか知りたい、レックス、コーヒーを飲んでくれ、と思わずにはいられませんでした。
しかさ、本当に恐ろしい映画。いや、私の恐ろしい映画No.1は、それでも『ブルーバレンタイン』なんですけれど。
あと、ある種のハッピーエンドじゃない?だってサスキアと同じ境遇を選んだんだからって言ってる人は、私から見ると頭がどうかしていると思います。自分の好きな人にヒドイ目に合って欲しい、しかも自分の死後に、って言ってるわけで、私は全然理解出来ないです。それも執着だと私は思います。