藤井 道人監督 イオンエンターテイメント
歯科医師会の先輩から、オススメして頂いたので吉祥寺アップリンクにて鑑賞してきました。
2018年2月、内閣情報調査室に外務省から出向中の杉原(松坂桃李)は、妻が身重でもうすぐ家族が増える20代後半から30前半くらいの年齢の官僚です。ある日外務省時代の先輩の神崎(全然知らない役者さんですが、とても合っていると思いました)に夕食に誘われるのですが・・・というのが冒頭です。
まず、すっごく2019年の今が旬の映画だと思います。現実の事件を彷彿とさせる事象を扱っています。
そして、キャスティングが良かったと思います。まず松坂さんは、凄く印象変わりました、「日本のいちばん長い日」原田眞人監督作品では、少々浮いた感じでしたけど、今回はかなり良かったです、それでも、少し泣きの場面は強すぎる感じましましたが、特に、目が泳ぐ演技は素晴らしかったと思います。
次いでもう1人の主役のシム・ウンギョンさん、たどたどしい日本語も帰国子女設定でかえって自然で良かったと思いますし、目のチカラが凄い。このキャスティングが難航したって聞きましたけど、美味しい役なのに、なんででしょうね。この程度の映画のキャスティングに事務所が忖度してしまうのだとすると確かに怖い社会になりましたね・・・
良かった役者陣の中でも1番は神崎さんを演じた高橋和也さんです。物凄く実在感を感じました。特に遺影写真が最高に実在感を伴った喪失感があって稀有な感じ方しました。
次点で先輩記者役の北村有起哉さんです。何故かと言えばすっごく菊地成孔さんに似てるんです。すみません、全然知らなかった俳優さんですけれど、ホント良かったです。
また、ロケーションが良かったのも特徴だと思います。1つ目が松坂の住む家です。なんというイイ家に住んでるんだろう、と思わせます。不思議だけれど、すっごくイイです。
2つ目が、とあるビルの屋上のロケーション。ど真ん中に、意識してみると、ちょうど国会議事堂の頭の部分が見えていて、すっごく象徴的。ここはどうやって見つけたのでしょうか?本当の庁舎じゃないとは思いますけれど、びっくりしました。
さて、ストーリィですけれど、私はすっごく違和感を感じました。正直私は現政権の経済政策以外は支持出来ないし(それも消費税上げる事で、あまり加担できなくなりました・・・)、1番嫌だな、と感じるのは、下品だからです。民主主義って別に多数決が全てなんじゃなくて、少数の、野党の意見を政策の欠点であれば取り入れて、修正するからこそ、現政権支持ではない人にも配慮出来る仕組みじゃなかったんでしょうか?もし、議会制民主主義を尊重出来ないのであれば、議論しないで選挙後にすぐに採決すればいいわけですし、議論しても修正しないんだったら、それは議会制民主主義ではないと思います。で、申し訳ないですけれど与党の議会運営が凄く幼稚だと思います。また、憲法改正には賛成しますけれど、憲法って統治権力の権限を縛る為のもので、つまり自国民に言う事を強要させる道具ではないんですけれど、その辺を全然理解出来てない集団が憲法をいじるのは反対です。自称保守勢力にこれだけ議席があれば、何でもできるかも知れないとは思いますし、それは選挙というシステムの結果ですのである程度は許容しますけれど、ね。しかし上手くないし、謙虚さが感じられない上、データ改ざんが行われて信用がなくなったのに、誰も責任を取らないって、ちょっと信じがたいですね。それでも、現政権を支持する人が多いから与党なんですよね。
不思議なのは、いくらなんでも内閣情報操作室(=内調)が果たしてこんな仕事してるのかな?というのが1番の疑問です。
確かにタイムリーなトピックを含んでいるし、悪くない映画だと思います、あくまでフィクションとしてって事ですけど。でもね、ちょっと反政権サイドの人が集まり過ぎてて、そこに違和感があるし、公平性に欠けるように感じてしまいました。
あと、架空の座談会形式のネット番組が流されてる場面が多いですけれど、この映像は『VIDEO NEWS マル激トーク・オン・デマンド』の方が良かったんじゃないかな?と思います。
あまり公平性を感じなかったのが残念。
それにしても松坂の奥さん美人さんですね、全然知らない女優さんでしたが、チラリとしか出てこないけど。演技が出来なくても、美人さんが出てくると画面が映えますね、もちろん美男子である松坂さんの場面も当然映えます。美談美女のカップル、久しぶりに観ましたが、自分とは1mmも関係ないのですが、良かったです。
あと、ラストカット。ここの意味はどうなんでしょうね。私はこの後、映画「或る終焉」のラストカットが起こるのかと思いました。
私はこの映画を観て、義憤に駆られた人が、溜飲を下げる感じになってしまうのが、1番怖いと思います。それに官僚を犠牲にしないと権力を監視できないのもマズイと思います。じゃ、お前は何が出来るんだよ、と言われたら、何にも出来ないんですけれど。
内調が気になる方にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!!
ココからネタバレありの感想になります、あくまで私個人の感想です。未見の方はご遠慮ください。
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悪くないですよ、もちろん。正直この女性記者のモデルが誰なのか?も知らないですし、性的暴行を犯して現政権に近い人物が不起訴は、そりゃない、とも思ってます。
が、いくらなんでも内調が、よりによって公安と組んで、ネットへ介入、また週刊誌に介入はいくら何でも、と思います。週刊誌へのリークはあると思いますけれど、ここまであからさまにやってますかね?
もちろんやろうと思えば出来るわけで、現政権のお友達というより、この政権含む自称保守コミュニティの幼稚さを考えると、やっててもオカシクナイとは思いますけれど・・・
が、そこは結局不明なんですよね。内調の人は否定するでしょうし、内調という構造上、内部の様子や活動が不明ですし、10年くらいして資料公開してくれないと恣意的な行為が行われているのか?という疑問を払拭出来ない構造になってるので疑われたくなかったら、何年後かに情報開示をしないとマズイです。そういう仕組みになっているのか?調べてみたいです。
でも、そういう事含めて、それでも人物的に議員に値する、という人でないと議員にしちゃいけない、というのは基本的な部分だと思うんですけれど。
さすがに内調がネトウヨに乗っかるとは思いにくいです。 あくまで私の個人的な感じ、ですけれど。もし、本当にこんな事してたら、それは、相当な「1984」ジョージ・オーウェル著的な、まさにディストピア世界になってると思います。
脚本は悪くないんですけれど、でもいくつか気になる部分もあって。
まず、神崎さんの死の原因がどうも飲み込めない。
確かに外交官のキャリアをかけて泥をかぶる、ありそうな話しです。そこは我慢出来たし、それでも外交官としての未来に賭けたわけです。でも再度泥を被る案件があり、しかもリークまでやってるのに、なんで細菌兵器くらいで、決算のハンコを押印した事で、そこまで思いつめちゃうんでしょうか?しかも、内調にいる信頼できる松坂と会っていて、全く話さなかったのも不明です。自殺よりも、名前を公表、顔出しの上、辞職も辞さない覚悟で、資料を公開すれば良かったように思います。その方がよっぽど効果があったと思いますけど・・・
それと、新設大学の話しは実際の新設大学の話しに絡めたかったんでしょうけれど、余り上手く行ってない気がします。まず、細菌兵器って、そんなに簡単じゃないし、そもそも東京にも国立感染症センターでエボラとかかなり危険なウィルスを保有してます。
映画的な脚本として、もう少し練れた部分じゃないかと思います。原子力関係の方が良かったんじゃないかと思います。ココが弱すぎるのは脚本としてもったいないです。
あと、唯一、スリリングなシーン、資料を盗撮するシークエンスですけれど、もう少し上手く出来なかったかな?足止めしている記者が松坂にそろそろ行きますよ、的な信号を送るとか、1回だけ電話鳴らすとか、出来たんじゃないかな・・・しかも誰も居なかったなんて、スリリングにしてるのに、はしごを外した感じでこれももったいない気になりました。
ただ、内調の現状、本当にもう少し知りたいですね。
北村 紗衣著 書肆侃侃房
ラジオで知った北村紗衣さん、その独特の喋り方、そして圧倒的な知識量!さらに特異な雰囲気も相まって、大変気になっていました。そんなところに新刊のお知らせがあったので、手に取りました。フェミニストについては全然詳しくなかったんですけれど、これは何か新しい概念を知る事でまた違った見方が出来るようになるヤツだ、と感じております。物事を見る視座の私にとっての新たな視点です。死角は無くならないけれど、それでも多様な見方が出来るようになる楽しみのひとつになると思います、もちろん全くの反対側にもそういう見方の視座があるはずですし、その事も含めて、視座が増えるのは楽しい事です。
批評、について何かで学んだ事はありませんが、私の知識の中だと間違いなく最初に浮かんでくるのは、筒井 康隆著『文学部唯野教授』です。こんなに面白い批評本を読んだ事は無かったですし、批評には数限りなく様々なやり方、スタイル、があろうかと思いますが『知る』というそれだけでも十分面白い事ですし、これに、自分の知って来た様々な事柄があり、そこに新たな何かが繋がる瞬間に、驚くほどの喜びがあったりします。私の場合は、ですけれど。例えば、歴史モノが好きだった人が幕末吉田松陰を調べていて、その少し前の時代も知りたくなって、実は松陰という̪諡は、寛政の三奇人の一人、高山彦九郎の諡である事を、後から知った時の喜びと言えば分かり易く繋がるかも、です。そういった面白さを、さらに批評は教えてくれると思います。
今回扱っている書籍、映画、演劇、の中では私が全然通っていないトピックばかりで、僅かに知っているのはデビッド・フィンチャー監督作品「ファイト・クラブ」、カズオ・イシグロ著「私を離さないで」、ジェーン・オースティン著「高慢と偏見」の3つだけでした。ですので、テクストを味わっていないで批評を聞いているわけで、これはちょっと難しいかも、とも思ったのですが、かなり興味を惹かれる解釈の話しでとても面白かったです。
恥ずかしいのであまりカミングアウトしたくないけれど(と言いつつまぁ言いますけど)、私はヴァージニア・ウルフを読んだ事がありません、そしてエミリー・ブロンテ「嵐が丘」も読んだ事がありません・・・かなり有名作品なので恥ずかしいですが、その辺の知識が全くないのに、北村先生はそういう読者にもある程度配慮しつつ、面白い、ここがヘンだ、という部分を、何故面白いのか?何故ヘンなのか?を教えてくれるのです。
そして、かなり身につまされるのが男性性の話し。しかも北村先生はネット社会やネット用語にも詳しくて、いわゆるひがんでいる男(ネットスラング的には「キモくて金の無いオッサン」の事)をキチンと定義するところから始まります(異性愛者で仕事も私生活もうまくいかず、金銭的に問題を抱えた中年以上の男性、という見事な定義・・・身につまされます・・・)。しかしこの手の人は文学上非常に主人公になりやすいタイプとも言えると私は思います。だいたいにおいて、ハードボイルドの世界は(という事は裏返しのハーレクインロマンスの世界でもきっと)この手の人が主人公ですし。そういう点を指摘してくれて、それも面白おかしくなのが、とても面白いです。中でも「プリンセスは男のロマン!」は目から鱗の批評です、私もすっごくそう思ってました。例えば「ローマの休日」(観た事無いのですが、なんとなく知ってる)の結ばれぬ関係を我慢した(飲み込んだ、受け入れた、しかし希望は残っている と勘違いする余地がある でも感情移入するなら気にならない)オレに陶酔、という事だと思います。これはもちろん女性にもあると思いますけど。でも本当に注意が必要な案件だと思います、他者の目線が入るだけで結構違いますし。
そしてやはりこの本の中でも肝はシェイクスピアだと思います。北村先生はシェイクスピア観劇された人の研究者ですし、今個人的に最も気になる漫画の中のひとつが「7人のシェイクスピア」なので、より面白いと思いました。私はまだシェイクスピアをそれほど読んだ事が無く、しかし、かなり面白そう、と感じています、つまり、古典を楽しむ事が出来るように、やっとなった、という事なんだろうと思います。書籍でも、古典的作品を手に取る事には結構な決断が必要です。映画でも、やっと、その手のオールドムービーの良さが理解出来るようになってきました。で、戯曲でも、少しは理解出来るようになったかな?と思える、かも知れない、と言う程度には、関心あります。
それと、北村先生もおっしゃっているので便乗してしまいますけど、私もあんまりディズニーが好きじゃなくて・・・映画もなんですけれど、なんか、あまり、乗れないんですね。だからあまり作品を観てなくて。もちろんイイ作品もたくさんあると思いますけど。
でも、どうしえも乗れない批評もあって・・・性格批評については、キャラクターへの自己投影、同一化の話しに繋がってしまい、ここはあまり共感出来なかったです。なんとなく、場の形成を意識するあまりに、批判的な言動を避ける形に繋がり易い感じがします。
また、「華麗なるギャツビー」の、バス・ラーマン監督作品は観てないんですけど、ジャック・クレイトン監督作品と、原作既読ですけれど、デイジーは、この物語の中では『華やかで愛くるしく、でも何も考えない流されやすい女』でしかない、と思ってて、ギャツビーからすれば、ミューズなんだろうけど、ニックから見たら、その価値が無い、という所が肝なわけで、そのノスタルジーを含んだまさに叶わぬ夢だからこそのロマンティシズムなんだと思っているので、ここも譲れなかったなぁ。美人でないヒロインに一般女性が共感できる、という話しは、まさに自己陶酔的なナルシズムに直結してて、だからこそ男性にとってのハードボイルド的なものと同じ構造な気がしますけど、これはもう少し考えてみたいテーマですね。
でも、『私を離さないで』批評は、全く気が付かなかった点を鋭く分析されていて、素晴らしかったです。確かに言われて見ると、そうかも!って思います。この視点はまず無かったし自分では考え付きもしなかったです。
新たな視点を、自分の死角(絶対になくならないけど、でも減らしたい)を見てみたい人に、特に男性に、オススメ致します。
カール・チベッツ監督 Netflix
ダークなオリジナルオムニバスシリーズのブラックミラーのシーズン2を観てしまいました。やらなければならない仕事がたくさんあるのに現実逃避してしまいました・・・しかし、観て良かった大変良質な作品だと思います。1シーズンに1つは、大変面白い作品が含まれています、特にシーズン2ではこの「White Christmas」が飛び抜けてクオリティが高く、脚本が練られていて面白かったです。
外界から離れたとある小屋に暮らす2人の男、5年も暮らしているのにほとんど話しをしなかったこの2人の男が、クリスマスに始めて話し始めます。マシュー(ジョン・ハム)は全く喋らないジョーに向けて、自分の昔の話しを語りはじめるのですが・・・というのが冒頭です。
素晴らしく練られた脚本だと感じました。そして映像のクオリティもとても高いですし、これは映画館で流しても問題ない作品だと思いますね。作風で最も近いと感じたのは、日本んの映画監督今 敏作品です。現実の底が抜けるかのような、リアルな感覚の溶解を味わえる作品。ですが、何も知らずに観ていただくのが最も効果的な鑑賞方法だと思います。
ネタバレは避けての感想ですけれど、自我とは何か?という大変哲学的な問いかけへの思考実験作品とも言えます。大変恐ろしい話しでもありました。
ブラック・ミラー シーズン2 の1話 『Be Right Back』はかなりヘンテコなお話しでした。イングランドの田舎と思われる場所に引っ越してきたマーサは、突然交通事故で夫アッシュを失うのですが、というのが冒頭なんですけれど、とても女性的な感覚があれば、ヘンテコに感じないのかも知れませんが、自ら起こしたアクションの結果を、責任を回避しているように和他私には感じてしまい、もう一つでした。
第2話『White Bear』も設定的にはかなり飛躍している作品です。何の説明もないままに、ある環境に陥れられる女性を扱った作品なんですが、最後の最後に、これまで見ていた作品のある側面を見せつけられ、大変驚愕はするんですけれど、何かもうひとつ腑に落ちないんです、すごく、驚かせようと思った、というだけで、理由が無いんです・・・これもちょっと残念でした。
第3話『The Waldo Moment』は、青いクマのアニメーションキャラクターの中の人、補欠選挙に出る事になってしまったウォルド―の悲哀を描いた作品で、これもとてもクオリティは高いのですが、最後の最後とCIAはちょっとやり過ぎてしまった感があります。ですが、政治風刺モノとして面白かったです。
ディストピア映画が好きな方にオススメ致します。
オットー・パサースト監督 Netflix
ネットフリックスにずっとオススメされていたのですが、なかなか何シーズンも続くシリーズを観る時間が無いな、と思い手を出さなかったのですが、1シーズンが3話、2シーズンが4話と知って手を出しました。が、これがめっぽう面白いです。1話完結の、非常にダークなSF(?)作品です。
現代のUKと思われる国。その首相を務めるマイケルは早朝に電話で起こされます。ある誘拐犯からの動画で指示を受けています。国民から人気の高い皇室のスザンナ妃を監禁していて、その犯人の要求は・・・というのが冒頭です。
この犯人の要求がすさまじく予想外である点、そして、その為に周囲の人間が様々な行動を取るのですが、この様が、非常にリアルなのです。もし、このような事態に陥ったとして、取られる行動の、何が正しく、何が間違っているか?また、ある種の品位、人間性、人格、様々な点が問われるのです。
物凄く恐ろしいIFだと思います。仮に首相でなかったとしても、です。
興味本位の人間の、欲望に抗う事の難しさ、についても考えさせられます。
果たして、何が正しい行動だったのでしょうか?
シーズン1はこの後に第2話「Fifteen Million Merits」という完全管理社会の中でもオーディション番組の写す、グロテスクなリアルを扱った作品と、第3話「The Entire History You」人間の視野範囲、つまり見たモノ全てを記憶出来て、しかもすぐに再生出来るチップが生まれている社会の闇を描いた作品がありますけれど、この2本は、それほど特殊でもない感じでした。もちろんクオリティは高いのですが、それぞれのSF設定を生かすのであれば、少々物足りなく、捻りも弱いと感じてしまいました。しかし、第1話は、想像を絶する展開で驚きましたし、大変考えさせられる話しだと思います。
ダークなSF作品が好きな方に、オススメ致します。
綿矢 りさ著 新潮文庫
映画「勝手にふるえてろ」の原作者、しかもかなり売れている作家さん、という事で手に取りました。基本的には気になった作家さんは処女作を読んで、その後追いかけるのか?を決めるのですが、たまたまその作品が無く、手に取り易かったので。
女子高生の愛はスクールカーストで言えば上の下、もしくは中の上、辺りのごく普通な生徒なのですが、クラスメイトのさえない男子生徒、地味で見た目もそれほどでもなく、しかも友人が少ない、その人が気になって仕方がありません。しかし、その男子生徒は・・・というのが冒頭です。
正直、文体は普通で、とても読みやすいです。主人公・愛のモノローグで進む青春(?)小説です、未だに青春小説というジャンルがあるのであるならば。ですけど。そしてもちろん、これは現代風に仕上がっていると思います、もう若者の感覚が分からない歳になったので、あくまで想像ですけれど。
で、この主人公の愛さんが、特殊。いや、こういう男子なら昔からいましたけど、女子で、というのが特殊。だけれど、こういう特殊さって昔もきっと思うだけなら、いたと思う。そして、その当時だと、そういう女子がいるかも、という部分が思考の枠内、想像の範囲内に無いのが男子の特徴とも言えると思います。それだけ多様性に開かれた社会になったのだとも言える。
が、私はこの愛さん、文庫の後ろの解説でも、宣伝でも、カースト上位という事になってるけど、それってこの子が自分で思ってるだけで、そんなに上位じゃなかったのかも?とも思います。あくまでポジションとしては保持しているのかも知れませんが、モノローグなんで何とも言えない感じがします。
しかし、女性の世界は本当に厳しいし、大変。やはり別の生き物に見えます。確かに繊細で感受性が高いかも知れませんけれど、こじらせてしまえば、より機能不全に陥るのは、と思ってしまいます。
何と言いますか、パンキッシュなんですね・・・
女性の作家さんで言いますと、金井美恵子さん、山崎豊子さん、山田詠美さん、桐野夏生さん、江国香織さん、宮部みゆきさん、角田光代さん、絲山秋子さん、特異な人だと山本文緒さん、辺りを何作か、は読んできましたけど、1番近いのは、山本文緒さんかも、というくらいに異質、私の読書遍歴ですと、ですが。まだ1作しか読んでいないので、何とも言えませんけど。
現代(もう古くなってるかも)青春小説を読んでみたい方に、オススメ致します。