綿矢 りさ著 新潮文庫
映画「勝手にふるえてろ」の原作者、しかもかなり売れている作家さん、という事で手に取りました。基本的には気になった作家さんは処女作を読んで、その後追いかけるのか?を決めるのですが、たまたまその作品が無く、手に取り易かったので。
女子高生の愛はスクールカーストで言えば上の下、もしくは中の上、辺りのごく普通な生徒なのですが、クラスメイトのさえない男子生徒、地味で見た目もそれほどでもなく、しかも友人が少ない、その人が気になって仕方がありません。しかし、その男子生徒は・・・というのが冒頭です。
正直、文体は普通で、とても読みやすいです。主人公・愛のモノローグで進む青春(?)小説です、未だに青春小説というジャンルがあるのであるならば。ですけど。そしてもちろん、これは現代風に仕上がっていると思います、もう若者の感覚が分からない歳になったので、あくまで想像ですけれど。
で、この主人公の愛さんが、特殊。いや、こういう男子なら昔からいましたけど、女子で、というのが特殊。だけれど、こういう特殊さって昔もきっと思うだけなら、いたと思う。そして、その当時だと、そういう女子がいるかも、という部分が思考の枠内、想像の範囲内に無いのが男子の特徴とも言えると思います。それだけ多様性に開かれた社会になったのだとも言える。
が、私はこの愛さん、文庫の後ろの解説でも、宣伝でも、カースト上位という事になってるけど、それってこの子が自分で思ってるだけで、そんなに上位じゃなかったのかも?とも思います。あくまでポジションとしては保持しているのかも知れませんが、モノローグなんで何とも言えない感じがします。
しかし、女性の世界は本当に厳しいし、大変。やはり別の生き物に見えます。確かに繊細で感受性が高いかも知れませんけれど、こじらせてしまえば、より機能不全に陥るのは、と思ってしまいます。
何と言いますか、パンキッシュなんですね・・・
女性の作家さんで言いますと、金井美恵子さん、山崎豊子さん、山田詠美さん、桐野夏生さん、江国香織さん、宮部みゆきさん、角田光代さん、絲山秋子さん、特異な人だと山本文緒さん、辺りを何作か、は読んできましたけど、1番近いのは、山本文緒さんかも、というくらいに異質、私の読書遍歴ですと、ですが。まだ1作しか読んでいないので、何とも言えませんけど。
現代(もう古くなってるかも)青春小説を読んでみたい方に、オススメ致します。