アンジェイ・ズラウスキー監督 スティングレイ
もちろん初見の監督アンジェイ・ズラウスキー・・・・なんなんでしょう、この感覚は。
単身赴任から帰ってきたマルク(サム・ニール)は、妻アンナ(イザベル・アジャーニ)といきなり口論になります、不穏感満載の冒頭です・・・
う〜む、と唸りたくなる作品、めちゃくちゃ評価が分かれそうです。とは言え、良い部分もたくさんあるし、古臭い部分も、冗長な部分もあるし、判断に迷う作品だと思いますが、ある種の層には狂おしいほどに好まれる作品だと思います。
まず、なんと言っても、イザベル・アジャーニが可愛く、美しく、妖艶で、狂気に満ちています。良くこの脚本で引き受けたな、という印象です。とある地下鉄の回廊での1人演技は、超絶恐ろしいです。狂気が乗り移ってる、というよりも、狂気に乗り移られてる、乗っ取られてるというような感覚があります。また、1人2役なんですけど、2役目は大変に可愛いく理想化されていて、その演じ分けだけでなく、演出も素晴らしいです。画面支配力といいますか、観客の目を惹くチカラに長けている感じです。可愛いだけじゃない、何か、が確かにあります。個性的な役者さんなり、役者さんだけでなく、どんな表現者にも共通する、99%の努力と1%の悪魔との取引が出来る人、そんな感じの何者にも代え難い存在。また、この時だけの、若者の持つ輝きに満ちていて、素晴らしいです。
もちろんもう1人の主役、サム・ニールも頑張ってますし、身体張ってます。
また、大変衣装が、重要な演出されていて、そこも私は良かったです。
さて、脚本なんですが。これ、いや、この作品は、どんなジャンルに分けられるのか?ジャンル分けなんてない、イイ映画と悪い映画があるだけだ、という主張が聞こえてきそうな作品です。もちろんサスペンス、スリラー、ホラー、どれでも良い感じで、そのどれでも無い感じです。
ただ、どっちつかずになってしまっている印象持ちます。もっと悪魔要素に振り切っても良かったんじゃないかな?と思いました。ただ、だとすると、もう少し最初の方で宗教色を出しておきたかったですね。
また、この40周年HDリマスター版は、もしかして、基の版と変えているんじゃないか?と思います。ファイナルカット的な。どうしても、手数が多い気がするんです。あれもこれも、せっかく撮ったんだから、使いたいな、入れたいな、ファンは喜んでくれるんじゃないかな、的な判断で作られているような。
正直、面白くなる作品だと思うし、役者も音楽も衣装も良いんです。私の好みと感じる部分たくさんあります。
はっきり、編集に問題がある、気がします、私は。もっとソリッドに、タイトにしたら、名作になってたんじゃないのかな?と思う次第です。もちろん、この雑多な感じが、 アンジェイ・ズラウスキー監督の良さなんじゃないか!というお叱りはあるかも、ですが。何分不勉強なモノで。
不安感の煽り、狂気のほとばしり、悪魔の実在感、どれも良かったと思います。
ミッキー・ローク主演、アラン・パーカー監督『エンゼル・ハート』が好きな方(なんかコレだけでネタバレ感ありますが)、ロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演『反撥』をもっとデモニッシュしたものに興味がある方に、オススメ致します。
あ、いつも思うけど『反撥』の邦題は『嫌悪』の方が面白いと思うんだけど。
ウォッシュ・ウェストモアランド監督 Netflix
タイトルに惹かれてみたら、日本が舞台ですし、80年代ですし、ライリー・キーオが出演してますし、最高でしたが、それより、主役のアリシア・ヴィキャンデルさんが、ピカイチに良かったです。
80年代東京。ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)は日本滞在が長く、流暢な日本語が話せます。翻訳の仕事をしているのですが、ふとしたきっかけで(とても良い演出でした)カメラを趣味とするテイジと出会って・・・というのが冒頭です。
80年代の日本描写は、なんか変だけど、まあ悪くは無いです。多分これは原作がちゃんとしてるんだと思います。電車の色とか、いろいろ違うんですけれど、そういう事じゃなくて、中身は頑張っていると思います。
年代は違うんですが、なんとなく、日本が事件現場で海外の女性失踪事件だと、ルーシー・ブラックマン事件を思い起こさせます。主人公の名前がルーシーだし、被害者の映像が大変派手な感じだったんですが、そこはライリー・キーオっぽい感じがしますし。
で、日本リスペクト(映画「パラサイト」で使われるリスペクト!ではなく!!)が大変感じられます。そこは凄く良かったです。ヘンテコな日本描写が無かったのが。
で、ライリー・キーオの頑張りも素晴らしいですし、相手役のテイジさんの魅力は、英語力も、本物です。カメラも凄く良くて、映像がシャープ!ロケ地の選択も頑張って見つけてきたテイジの部屋が素晴らしい。何処にあったんだ、あの部屋。なんか、黒沢清監督の『キュア』のあの部屋を思い出しましたよ・・・
が、なんと言っても、主役のアリシア・ヴィキャンデルさんが、素晴らしい!!たどたどしい日本語が、可愛い!!演技も素晴らしく、美しい。
予告もなかなかいいです!
とにかく、可愛いかった。
そんなアリシア・ヴィキャン出る酸の魅力が気になる方に、オススメ致します。
ええ、全然感想じゃなくなってしまいましたね・・・
2016年に公開された「この世界の片隅に」に追加40分を加えた完全版が2019年に公開されたので、遅まきながら、足を運びました。
あまりに力強い作品で、内容を頭で理解出来ていても、何か掴みきれていないのでは?と感じられていたからです。その後もおりにつれ、5回ほど見直して、やっと腑に落ちる感じになりましたし、素晴らしい映画だと確信持てるようになりました。
1943年、日本の広島に住む18歳の女性すず(のん)を主人公に、当時の日本の広島、また嫁ぎ先である呉を舞台にした、映画です。幼少期の1934年頃が冒頭で、年月は字幕で書き込まれ、その中で生活、生きていくすずを描写しているアニメーション作品。
個人的には本当に素晴らしい作品です。 今回加えられた新しいカットにより、今までとかなり違った印象を持ちました。さらに、すずさんがリアルな、生きている人間として、そしてその夫が、夫としてだけでなく、やはり生きている人間として、描かれています。人は結構間違いを犯したり、ダメだったりする、という事を、この映画でも感じました。
当然、かなり長くなったわけですが観るのであれば、この補完された新しい映画版を、強くオススメ致します。
戦争が起こっていても、それでも、人は何かを食べたり、誰かと話したり、人間関係の葛藤を経験しながら、それでも生きて生活しなければなりません。そんな日常を、あるいは戦争という非日常における生活を、細やかに、丁寧に描写した傑作です。
すずさん、という主人公のキャラクターが、まず素晴らしく、彼女が経験する戦争の中の日常、その生活、人間関係、そして、経験から成長する事、様々な事柄が本当に丁寧に描かれていて、しかもこれはアニメーションでなければ出来なかった表現、またすずさんが得意とする事が絵を描き、創作する、という事で、さらにアニメーションという媒体との親和性、物語上の意味と二重の意味で補完されているのが素晴らしいです。
とにかく、すべての人に観て欲しい映画として、オススメ致します。 コトリンゴさんが歌う唄とのシンクロ率が、たまりません。 大好きな唄になりました。
アテンション・プリーズ!
今回は、ちょっと特殊な映画というか、ドラマというか、ドキュメンタリーの感想です。しかもシリアルキラー(広義の意味で、連続殺人者)を扱った作品なので、そういう猟奇的な事象に抵抗のある方はご遠慮ください。そもそもそういう事を言及するのもどうかと思うのですが、これはリアルな現実の、生きていた人の、記録とも言えます。興味本位だけではない、もう少し深く、そしてどうしてなのか?という根源的な疑問を感じている人にとっては重要な事です。表層だけでおもしろがれる事もあろうかと思いますが、私は気になったものを、事を、自分で調べる人を信用しています。その事象なり人物なりが、影響を与えたモノ、影響を与えられたモノについて調べて行った先に出会う、それとこれが繋がっていたのか!という驚きを求めている気もします。
ロバート・ケナー タキ・オールダム 監督 Netflix
映画「羊たちの沈黙」をご存知の方も多いと思いますけれど、素晴らしい映画であるのと同時に、大変有名なキャラクターとして登場するのが、ハンニバル・レクター博士です。多指症で指が6本あり、精神科医であって、芸術を愛する心を持ち、美食家でもありますが、カニバリストでもあるシリアルキラーです。このモデルとされる人物が、実在の人物であるシリアルキラー、本作の主人公、ヘンリー・リー・ルーカス(1936-2001)です。
私は書籍で読んだ数冊の本の情報、また、wiki情報もそうなのですし、様々な媒体、場所で語られるヘンリー・リー・ルーカスの情報を、その様々な媒体で同じように扱っているために、信じてきました。しかし、よく考えてみると、動画として、生きて動いて喋っているヘンリー・リー・ルーカスを観た事がありませんでした。写真は、大変特徴のあるモノをたくさん見てきましたが、動画で、特に喋っている姿を見た事が今までありませんでした。
そんなヘンリー・リー・ルーカスを扱ったドキュメンタリーがNetflixあると知り、見たわけです。ドキュメンタリー、と言っても、編集や演出によって、事実を、事実のように、虚偽を、真実のように、扱う事の出来るジャンルでもありますので、注意は払ったつもりですが、今までの情報、ヘンリー・リー・ルーカスに纏わるほぼすべてを、疑るようになりました。
実際には、このドキュメンタリーを見ていただくしかないんですが、今まで抱いてきたヘンリー・リー・ルーカスに対するイメージが一変しました。確かに、よく考えると、不思議な事、辻褄が合わない事、散見されますが、そのあまりな手口、人数、そして数多くの媒体での扱いの同一性に、信用を置いてきた個人としては、本当に、ショッキングな体験でした。
改めて、検証する事の重要性について実感した次第です、ま、私の住んで国は、検証されるべき、保管されるべき資料を、簡単に捨てる政権が与党なんですけれどね・・・本当に法治国家なのか?どんどんと1984の世界になってきていますね、美しいってこういう事なんでしょうね。
写真は、時により真実を映し出しますけれど、動画も、同様に、真実を浮き彫りにしますね。ヘンリー・リー・ルーカスについて私が最も気をつけなければいけなかった事は、テキサス州、という事かもしれません。もう少し具体的に言うなら、テキサスレンジャーという存在、そして、手口の数の多さ、についても、もう少し配慮していれば、と悔やまれます。誰が、どう、捜査していたのか?そこに信憑性を担保出来るエビデンスはあるのか?整合性を確かめる行為は行われていたのか?等々、本当に面白く、ショッキングなドキュメンタリードラマでした。
また、その動画の中に、日本のテレビ番組の密着取材があり、その検証に役立っていて、やはり検証できる事は重要だと確信しました。
今の私にとって、ヘンリー・リー・ルーカスは興味の対象から、外れつつあります。
おそらく、人が見たいモノしか見ない、に通じる道の、ひとつのパターンだと思います。地獄への道は善意で舗装されているわけです。
最も恐ろしい事実は、真犯人は、生きて、その後も、特に刑罰を受けなかった、という事です。
ヘンリー・リー・ルーカスに興味のある方に、オススメ致します。