ジョージ・A・ロメロ監督 スティングレイ
大変恥ずかしながら、巨匠ジョージ・A・ロメロ監督、初めて観ます。
日本公開40周年復元版です。
ゾンビ映画、たくさんありますよね。私はホラー作品に詳しくありませんので、ゾンビが出てくる映画をたくさん見ていません、多分エドガー・ライト監督「ショーン・オブ・ザ・デッド」が好き、という以外では、ほぼほぼ見ていないと思います。
そんなゾンビ弱者の私ですが、数人の人たち、それも私よりもたくさん映画を観ている友人から、面白いよ、という事で足を運びました。
宇宙から青い光線が地球に届いたことで、死者が甦り、ゾンビとして街を徘徊するようになったフィラデルフィア。テレビ局に勤めるフラニーは、恋人でパイロットのスティーブンに脱出計画を持ち掛けられます。テレビ局からヘリコプターでの脱出を試みるのですが・・・というのが冒頭です。
ゾンビ映画に詳しくない私でも知っているゾンビとは、
1死者が甦り、
2知能は無いけれど、
3生きた人間を食べ、
4食べられた人や噛まれた人は感染してゾンビになり、
5のろのろとしか動けない
という特徴をこの映画1979年の段階で描き切っていますね。
で、何となく、ですけれど、ゾンビが何かしらの暗喩になっていると感じました。恐らく、弱者の象徴なんだと思います。生きる屍、動いているのに意思を持たずに、本能(?)というか食糧(生きた人)を求めて彷徨う様が、大変グロテスクであるにもかかわらず、何処か物悲しいニュアンスがあると思います。
そういう意味では、現代から見ると、ですけれど、さらに、欲望によってだけ踊らされる悪い意味での民衆、みたいな意味も持たせられる気がします。
主演者の4名、ヘリコプターパイロットのスティーブン、その恋人で唯一の女性フラニー、スティーブンの友人で警察組織の特殊部隊員左利きがカッコイイ男ロジャー、そしてロジャーが誘った大男で冷静沈着なピーターの4名のキャスティングと座組みが素晴らしいと感じました。
カップルもいるけれど、それぞれの思惑、そして連帯感、自然とリーダーになる感じ、この辺の機微が大変上手く描かれていて、面白いです。しかしピーターがカッコイイのと、ロジャーの左利きが、出来る男っぽくて良かったです。
で、さらにこの映画では、ゾンビよりも生きてる人間が恐ろしい、というぐるっと回った回答も出していて、その辺も凄いですし、テレビ番組の解説者とホストの2人の会話が、フィラデルフィアのテレビ局製作番組も、とある立てこもり場所で見るテレビ討論番組でも、同じような話し合いがなされていて、つまり、同胞を、何処までを、我々とするか?という議論です。これがすごくエキサイティングで、まぁ狙っているんでしょうけれど、大変露悪的なんだけれど、面白いですね。
この辺の匙加減は大変上手いと思いました。1979年当時は、アメリカ合衆国でさえ、ある種の連帯感、モラルがあったんだと思います。
しかし、着想といい、場所といい、人物キャラクターといい、上手いですね。
これなら、私も他の作品観てみようかな、という気持ちになりました。
ゾンビ映画を観た事が無い人、あまり興味が無かった人に、オススメ致します。