増村保造監督 大映
凄まじい映画でした・・・追いかけてきて大正解の増村保造監督。これでまだ5つ目ですが、本当に天才的に上手い監督だと思います。
どうやら親子ほど年の離れた富豪の家に嫁いだおカネ(若尾文子)は、嫌気がさしているものの身動きが取れません。そんな中突然旦那が倒れ・・・というのが冒頭です。
音楽がずーっと低く鳴っている感じなんですが、それが例えは悪いですけれどモーツアルトのレクイエムが流れてると思ってください・・・もうそういう感じの映画です。
ここまで見てきて、やっと私は増村保造監督のやろうとしている事がやっと理解出来た気がします。
そう言えば、少し前NHKBSで(2020年4月26日夜)ヒトラーの演説がいかに大衆を熱狂させ、正常な判断を奪ったか?というドキュメンタリーを放送していて、つい全部見ちゃったんですが、同じような雰囲気を今も(政府の自粛要請に従わない店を、政府が公表する、という国に住んでるんすよね・・・布マスクを460億で買うのはまだ、我々が選んだ間接選挙のおかげで仕方ないと言えますが、そもそもほとんどの休業要請をする政府は保障を行っているから自粛しているわけで、しかも、憲法改正をこの状況で声高に訴えるのは、基本的には火事場泥棒と言われる行為と思います、基本的には私も憲法改正は行って欲しいのですけれど・・・言いたい事はいろいろありますが、もう少し議論が必要な事だと思いますね)感じるわけです。そう今2020年の現代も、ある種この映画の舞台の村も、そしてヒトラーの演説に熱狂した人々も、全く同じ世界に生きていて、簡単に自分のいる場所を正義とし、他者を簡単に悪と認定します。そして正義が自分の側にあると確信した人間がいかに残酷になれるのか?を表しています。
この映画の舞台、日露戦争開戦直前の明治末期の日本の村社会の、私個人は大変に恐ろしい、噂に右往左往し、他者の暗部や嫌な事を暴こうとする、このとても日本的なムラ社会に、嫌悪を感じますし、多分今も残っていると思います。
そして、そこに抗う個人を、増村保造監督はずっと見ているんですね。とても私向きな監督な感じがします。
私はこの村人たちに、大変嫌悪を感じます。いくら知らない事とは言え、ここまであからさまに 田舎 を肯定的に描かれると、本当に日本って未文化の国なんだな、と思う次第です。
単純に、日本最高って思ってる人に観て欲しいけれど、そういう人は見ないでしょうね・・・どんな国やどんな地域の人でも、自分の住む地域が良い場所だと感じると思います。それはそれでよい事ですけれど、だからと言って他者が全て劣っているという事にはならないと思うし、自分の住む地域にも、不完全な部分がある、というだけなんですけれど。
とにかくモノクロの邦画を観るのにそれほど抵抗が無い、という人は是非見た方が良い傑作、そういう作品を観てみたい方にオススメ致します。
まぁそういう世界である事は変えられない。その中でいかに生きていくのか?という時に、諦めて本音と建て前を使い分けつつ抗う方法もあるでしょうし、染まってしまう方法もあるでしょうけれど、激しく抗うおカネの生き方、そして、同じ境遇になった事で初めて世界が視えるようになった清作(田村高廣)を見せるラストがすさまじかった。 増村監督、凄い。