井の頭歯科

「華岡青洲の妻」を観ました

2020年11月24日 (火) 09:15

増村保造監督     大映

増村保造監督と出会えた1年として、今年は間違いなく記憶に残る年になりました。今までは、日本映画監督の中で誰が好みに近いか?と言えば、岡村喜八監督と答えていましたが、今は増村保造と答えます。

この映画も素晴らしい作品でしたが、猫が好きな人(私含む)には大変キツイ映画でした・・・その点だけはご注意ください。
原作あり、です。今回は2大女優対決作品だと思います。増村保造のミューズ若尾文子  対  成瀬己喜男や木下恵介のミューズ高峰秀子です、当然、増村保造監督作品なので、メインは若尾文子なんですけれど、この2人の対決シーンが恐ろしいほどです。まさに龍虎の戦いです。

演技合戦に火花が散りまくりです!それを捉えるカメラワーク、そして構図が本当に素晴らしいです。

その上、2人がこってこての方言を使うのです。語尾につけられるのし、の使い方が間違ってても、つい使いたくなります。

さらに、決め台詞で用いられる『どないなことがあっても私で試して頂かして』が強烈です。

原作がどこまで忠実なのか?この嫁姑の戦いを最初から描いているのか?分かりませんし、確か結構な数の人間が華岡青洲の麻酔薬の実験に名乗りを上げていたと思いますが、この話しは完全に嫁姑の対決に収束していて、すさまじいです。

若尾文子の形相七変化でもありますし、嫁と言う立場上、非常に苦しいです。が、だからこそ、心乱され、表情が変化に富み、見るモノを惹きつけるのだと思います。ただ、西洋の世界では文学作品と言えば、何かにつけて正義と悪の戦い、神と悪魔の対決ですけれど、ここ日本では嫁姑の戦いなんですよね。観念の世界であるTHE・日本、と言う感じが大変強いです。

高峰秀子の、特別説得力のある美人顔が、また涼し気な表情から、徐々に本性を露わにする感じの怖さが、高峰秀子っぽくないのに、だからこそ魅せる、と言う感じでイイです。

この2人の大女優対決は、本当に素晴らしかったです。

で、多分こういう運命に翻弄される、波乱万丈、というのが人は好きでしょうし、特に女性はこういうの好きみたいですね。全世界の半数の人を敵に回しますけど、私は全然好きじゃないなぁ・・・なんで誰かを自分のモノ、にしようとするのかなぁ・・・それに波乱万丈じゃなくて、平々凡々でだらだらしたいです。

この嫁と姑に挟まれ、両者から取り合い、もっと言えば心の奪い合いの対象になる主役、この映画の主演の、あの、市川雷蔵が、正直霞んで見えますし、完全に喰われてしまっています・・・

市川雷蔵をもってしても、流石に2人の大女優には敵わない、という事の証明ですね・・・私は同じ増村保造監督で市川雷蔵主演の『陸軍中野学校』(の感想は こちら )を観ましたけれど、あの存在感は何処へ行った?と思う程です。

さらに、衣装の七変化ぶりも、分かってやってるとは思いますが、凄いです。和装喪服に白無垢もありますし、白装束もありますし、内またが1番人間で敏感という『理由』をつけてくれた上で内ももだけ、見せてくれます、エロいとは思いませんが、すさまじいです。

という具合に大変素晴らしい作品ですが・・・・・・・・

あまりに、猫が可哀想過ぎて、見ていて苦しいのです・・・

猫好き以外の、増村保造監督ファンの方に、日本映画の王道が、黒沢や小津や成瀬だと思い込んでいる人にオススメ致します。

しかし猫好きには大変辛い1本でした・・・

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