井の頭歯科

「THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM」を見ました

2021年5月28日 (金) 08:55

川口 潤監督     アイランドフィルムズ

信頼できる友人からオススメされ、DVDも貸してもらったのと、それにも増して、やはりフランク・ロッダム監督「さらば青春の光」を見た事がある人間としてTHE CORRECTORSというバンドはどういう事なのか?を理解したくて、見ました。ある程度は、把握出来たと思います。

そもそも、モッズとは何か?という事になっちゃうと思いますが、知識の無い私からすると、まぁ映画「さらば青春の光」に出てくるタイトなスーツ(スーツの上着のボタンを上まで閉じても見えるネクタイの部分が非常に狭いのが特徴だと思います)を着て、ベスパに乗ってて、ミリタリーパーカー(モッズパーカとかモッズコートと呼ばれてる)を着ている人、という事になります。音楽はTHE WHO とかのイングランドのモノだと思ってます。日本公開は1979年、私はまだ9歳だったことになりますので、公開年に見ている訳では無いのですが、高校生の時に見た記憶があります。好きな人には大変刺さる映画ですし、私も高校生の頃には大変カッコよく見えました。もちろん今でも好きな映画ではありますし、ファッションには疎い人間ですが、今でもモッズスーツを作りたいという欲望もあります。ただ、モッズだけに行かなかったのは、同時期(1988年日本公開)に見たレオン・カラックス監督作品「汚れた血」を見たためだと思います。多分こういうカルチャーに対して無防備であったら完全にヤラれていたと思いますが、イギリス文化に≪触れると同時にフランス文化にも触れられたのが大きかったんだ、と今となっては分かります。

しかし、恐らく、モッズというスタイルは流行からは外れてしまったのだと思います。まぁ私が流行しているモノが嫌い、という傾向がありあすので逆に親和性が高いとも言えますけれど。ファッションとしてのモッズは好きです。流行って流行が好きな人のモノなので、結局のところ、流行しているモノが好きな人は、なにも好きなものが無い、ともいえると思います。tbsラジオ番組「東京ポッド許可局」でも話されていましたが「人気」が好きな人は結局のところ「人気」が好きなのであって、「人気」という気分や雰囲気が過ぎ去れば、かつて「人気」のあったもの、には興味が湧かないし好きじゃなくなるわけで、波打ち際でパシャパシャするのも気分は良いとは思いますが、私は海に潜りたいし、海に潜っている人と話がしたいし、意見の交換や多面的解釈をしたい。まぁメンドクサイ人間な訳です。

子供の頃、新宿に住んでいた事があり、しかもこのライブハウス新宿JAMからも近いので、前を通った事はあると思いますが、ライブハウスとして認識していたか?と言われると、全然です。そして、そのライブハウスの最後の出演バンドでもあり、今作の主役THE COLLECTORSについては、数曲知っている曲がある、というだけの人の感想です。

コレクターズの曲、特に歌詞には、かなり好きな部分が多かったです。僕はコレクターとか、扉をたたいて(?)、というバラードは良かったです。そして歌唱力もあると思いますし、ギターもベースもドラムも悪くないと感じました、もっと若かったら、存分にやられていたと思います。かなり昔の映像も出てきますが、当時からして、上手い、と感じられたと思います。そして、日本語で歌う、という事にこだわりを感じました。そもそもモッズがイングランドの文化の1つである事は動かしがたい事実で、モッズとして拘るのであれば英語なのかな?とも思いましたが、しかし、日本語の歌詞で歌う事に意義があるのだと思います。それは影響を受けた上での吸収と同化に繋がると思うからです。頭の中でも英語で考える事が出来るのであれば、英語でも良かったのでしょうけれど、日本人であるわけで、日本語を使う事で、モッズと日本語が混じって新たなモッズが出来上がると思うのです。それこそまさにTHE COLLECTORSなるモノだと思うのです。

本筋として、現在のコレクターズのライブ当日までの流れと、付随する関係者へのインタビューで形成されている映画なのですが、関係者の中で真城めぐみさんが居て、びっくりしました。そうか、この方はそう言う所にも出入りしていたんですね。真城さんのヴォーカルは凄く心地よいので、好きなんですけれど、そうか、ロッテンハッツってそういうバンドだったのかも知れません。リリー・フランキーさんもインタビューに応じてられており、なるほど、とも思いました。尖った人たちを惹きつける魅力があったんだ、と理解出来ます。

バンドリーダーの加藤ひさしさんの魅力と、ギター古市コータローさんのバンドである事は理解出来たと思います。動と静みたいな補完関係で、なかなか良いコンビに見えました。ほぼほぼすべての曲は加藤ひさしさんの楽曲であり、歌詞なのだ、という事も理解出来ました。なかなかなセンスだと思います。特に歌詞には親和性を感じます。

とは言え、モッズ、というかなり局地的な、当時の流行の中でも、廃れていく中でも強固にモッズに拘る部分と、メジャーバンドとして成功(とは言いつつ、コレが何を指しているのか?が凄く微妙)したい、という相反する感情が澱固まっていて、少し哀しい気持ちになる瞬間はありました。つまり、昔のヤンキー漫画や矢沢永吉さんの言うビッグになる、と言う奴です。ココが1番乗れなかった部分とも言えると思います。つまり、結局、成功する、認知される、人気が欲しい、というのは時世の流れのようなコントロールが効かないモノであり、ビッグになると言っても、何を持ってビッグになった、とするのか?という事なんだと思うのです。それは金持ちなのか、知名度なのか、分からない部分でした。もしかするとご本人も幻の成功を求めているのかな?ビッグになる、という雰囲気なのかな?とも思いました。

多分、最初の「さらば青春の光」という映画のインパクトにヤラれてしまい、現在もヤラれ続けている人、加藤ひさし、という人物の、なんとなく執着を感じる部分なんだと思います。それでも、35年続いているバンドって、それだけで十分凄いと思います。そのエンジンとして、メジャーになりたい、という事であるのなら、その捕まえられない幻としてのメジャーでの成功を、夢見続けて居られるからこそ、35年続いているのだと思います。

コレクターってもしかすると、あのジョン・ファウルズの「コレクター」、非常に社交性の低い孤独に蝶の収集している男が、ひょんなことで宝くじを当てて大金を手に入れ、蝶ではなく若い女を拉致して監禁する、という方から来ているのかな?とも思いました。

ただ、キューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』っぽさは私はほぼゼロだと思います。ファッションとしてはあるかも、ですけれど。それと、何となく、年齢を重ねた加藤さんの姿を見て、カッコイイと思うと同時に、どかで観た事がある、と思っていたのですが、それがアントン・シガーだった事は白状しておきます。

モッズの東京における余波、影響について興味のある方にオススメ致します。

「アシュラ The City of Madness」を見ました

2021年5月25日 (火) 09:46

キム・ソンス監督     サナイピクチャーズ

韓国映画の先進っぷりは、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」(の感想は こちら )でいやがおうにも知る由となった訳ですけれど、その他にもナ・ホンジン監督「チェイサー」(の感想は こちら )のようなノワール作品も素晴らしいのは知ってましたが、更に進化していると思ったのが、この「アシュラ」です、映画に詳しい友人に教えていただきましたが、これは凄かった。韓国映画のノワール作品の中でもかなり極まっている作品と言えると思います。

韓国の新興都市アンナムの市長パク・ソンベ(ファン・ジョンミン)の裁判の重要証言者を監禁し、法廷に立たせないためのかなり汚い取引が行われている場面から話が始まります。市長パクの下で働く、刑事でありながらも汚れ仕事を受けも持ってきたハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、弟分の同じく刑事ムン・ソンモ(チュ・ジフン)と現場に居た男と、ドギュン刑事たちの上司と揉め事になってしまい・・・と言うのが冒頭です。

見終わった後に最初にもい出したのはサム・メンデス監督「アメリカン・ビューテー」の冒頭です。そういう作品ですけれど、本当に脚本、演出、画像、アクション、すべてがクオリティ高いです。

いわゆるハードボイルド作品の中でも、かなりのハード目な作品だと思いますし、かなりきわどい話しですし、希望も、正義も、倫理も無い話しではありますが、そういった、理不尽に対する個人の姿勢を表した傑作だと思います。

上司と部下、兄弟分の関係、悪に手を染めつつ染める事でしか得られない収入の使い道、悪を暴くために手段として悪に染まる男、暴力、保身、そういった普段は目にしたくない様々な事柄を扱っていて、妙なリアリティがありつつ、映画的な演出、表現に突き詰めた重みを感じさせてくれます。

どのキャラクターも素晴らしく、非常に整合性の整った練られた脚本、素晴らしい作品だと思います。さらにそれだけでない、ここに時々スパイスとしてブラックなジョークが散りばめられているのも、アクセントになっていて素晴らしい。しかもそれを演じる役者の顔が、演技がイイのです。

主人公ドギョンを演じたチョン・ウソンさんの2枚目、ちょっと暗さもありつつ、善人の部分が完全には消え去っていないからこその主人公足り得る部分に、主人公としての意味があると思います。日本の俳優さんで言ったら、西島さんっぽさです。個人的には、シン・ゴジラの矢口蘭堂に演じて貰いたいくらい素晴らしいキャラクターを説得力もって演じてくれています。何故この男が主人公足り得たか、というのは、非常に底辺で生きていて、しかも悪に手を染めつつも、僅かに残る理性や矜持を感じられるからだと思います。そこが、凄く良かったです。

相対するパク・ソンベを演じたファン・ジョンミンさんの、悪が持ちうる様々な場面での変わり身の早さに、この男はただ権力の座に居座り続けたい、という1点のみで、すべての不正、悪を簡単に行える部分に、カメレオン的な悪趣味さが上乗せされますし、しかも簡単に配下を切ったり、その事でよりプレッシャーをかけたりするのが凄く政治家っぽく見えます。

主人公の弟分の相棒ムン・ソンモを演じたチュ・ジフンさんの、転身、弟分からの脱却を、演技だけでなく服装からも演出しているのは流石です。韓国映画(私が観ている数少ない中では)に足りないスーツの上品さです。テクスチャーとも言えると思いますが、それがこの映画の中の、この人には、結構上質なスーツを着せていると思います。時々覗く少年っぽさもあってギャップがあり、イイです。バディモノとも言える2人の関係が移ろっていくのも、非常に良いです。しかも2枚目も出来る、この映画の中で唯一立ち位置がどんどん変わっていく人、成長する人です。

さらにここに非常に重要な人物が加わるのですが、この人の顔が、細川俊之さんにそっくりなんです。この人が市長パク・ソンベに対抗する検察として登場するのですが、非常に説得力があるんです。多面的な悪の中の芯をパク・ソンベが担っているとすると、対抗する検察官キム・チャインはもっと隠されていて何をするか分からないが、しかし、思い通りにならない状況になると表出してくる隠れた悪を担っていると思います。

ノワールとしても素晴らしいですし、私はアクションについては詳しくないのですが、雨の高速道路のカーチェイスシーンは、いったいどうやって撮影しているのか?全然分からないくらい想像を絶するシーンでした。迫力も凄いのですが、もちろんCGなんだろうけれど、全然分からなかったです。圧巻です。

韓国映画が好きな人はもう知っているでしょうけれど、これは名作「殺人の追憶」に勝るとも劣らない名作です、名作は観ておきたい、と言う人にオススメ致します。

アテンション・プリーズ!

久しぶりにネタバレありの感想を書いてみたくなりました。それくらい濃密な映画体験でしたし、本当に素晴らしい作品!

すっごくハードボイルドと哀愁って合いますよね。主人公ドギョンの哀愁って、非常に弱者の哀愁なんです、何処にも逃げられないし、抜け出せないし、止める事も出来ない。それって社会に出た人間なら誰しも共有出来る無力感だと思うんです。そもそも妻の病気に金が要る事から、刑事という仕事がありながらも、悪徳市長パク・ソンベの汚れ仕事に加担する時点で、詰んでるわけです。それなのに、出だしの屋上での上司の事故死に直接加担しているので、弟分の刑事にも弱みを見せてしまう事になり、さらに、検察からも弱みを握られ、証拠音声を掴まないといけない状況に追い込まれます。そりゃ、市町にも検察にも強がってはいますが、結局しっぽをどちらにも振らざるを得ない、非常に弱い存在なんです・・・ここに哀しみを覚えない受け手は少ないと思います。

そして、何といってもパク・ソンベを演じたファン・ジョンミンさんの懐の深さと言いますか、悪の多面性、というか権力を手にし続ける為には片手を失う事さえ厭わない、その肝の太さ、というかこれはある種人間味を捨て去らないと存在できないような感覚があり、それを体現出来ているのが恐ろしいです。検察官が言う『信じてはいけない目だ』には説得力があったと思います、役者さんってスゴイですね・・・

クライマックスは、やはり検察官である『正義を執行する為に悪に染まる事も厭わない』という人間の、その根本をまさに 折る 砕く シーンだと思います。ここに至って、ついに絶対的な悪が、手段としての悪を飲み込むのだと思います。人間という非常にあやふやで聖俗併せ持った存在だからこそ到達できるように感じました。誰にでも、という訳では無いかも知れませんが、誰にでもなれる可能性があるように感じます。

あと、また斧を使った非常に残虐な人が出てきて、なんか恐ろしいです。こういう部族のような存在がまだいるのか、それとも想像上のモノなのか?不明ですけれど、ナイフよりも怖い感覚あります・・・

まぁ、斎場でこんな騒ぎが起こったら、そりゃもう少し警察や消防が駆けつけるような気がしますけれど。

ドギョンの一世一代の、頭を使った直接交渉に持ち込む作戦には、非常にアガりました、凄く良かった。

カテゴリー: 映画 感想 | 1 Comment »

「RBG 最強の85歳」を見ました

2021年5月21日 (金) 09:41

ジュリー・コーエン ベッツィ・ウエスト 監督     マグノリア・ピクチャーズ

ルース・ベイダー・ギンズバーグ合衆国最高裁判所陪審判事についてのドキュメンタリー映画です。

まず、全然知らない人ですけれど、まず素晴らしいと思ったのは、現役の最高裁判事についてある程度国民に認知されている、という事です。

ちなみに私は日本の最高裁判事が、どのような政治傾向の持ち主で、何人いるのか?さえ知らない状態です。これは100%私に問題がありますけれど、しかし友人と話す事が無いというのも問題化と思いますし、政治的な発言ってある程度個人の信条に関わってくると思うので、とてもセンシティブだと思います。だから、会話に合意形成が出来るような信頼関係がある、自分の話しをパラフレーズ出来る人、理解の柔軟性がある人とは突っ込んだ話しが出来ると思いますけれど、保守派も革新派も、あまりそういう人は少ない、というか自分はこの範囲に居ると自覚できる人とは難しくなります。野球ファンの人とは話せるけれど、巨人ファンというよりは熱烈な巨人ファンとは話が通じにくい、という事です。だいたいにおいて、趣味趣向が固まっている人とは難しい感じになりますし、巨人ファンで例えると、巨人の話しは出来るけれど野球の話しにはなりにくい、という事です。そして自分に絶対の正義がある人ほど、他者を蔑み傷つける事に躊躇が無く、徹底的で玉虫色の決着や清濁併せ持つ事が出来ません。私はそれを幼稚と考えますけれど、場合によってはブレない、評価する事になるとも思います。ブレない、間違えた事が無い人なんていないと思いますけれどね。これもえばりたい病、承認欲求の話しだと思います。

RBGこと、ルース・ベイダー・ギンズバーグさんの評伝ですから、もちろんRBGにとっての善き事に満ちていますけれど、そういう傾向の作品としても、十分見る価値が合った作品でした。もっと客観視する為には、保守派の意見も聞いてみないと、とは思いますけれど、男性と女性という性別(もっと細かく分かれるとしても)で言えば私は男性が下駄を履かせてもらっていると思いますし、それが文化的な意味で長い年月続いている、という風に理解しているので、現代に於いて、女性が権力や権威、認知や機会を獲得していくと言う意味で、無かった人が得る話しには勢いがあると思います。しかも、その事に正義や平等性と言う意味で認識が新たになる、という事は、カタストロフィが生じやすいと思います。

1番面白かったのは、シングルマザーが得られる権利が、シングルファーザーには与えられていなかった権利についても働きかける、平等性とか、公平性がある事が、最も支持できると思いますし、合衆国最高裁判陪審判事には今まで女性が2人目の女性だった、というのも驚きでした。日本ではどうなのか?調べてみると15名中2名なのでもう少し増えてもいいと思いました。

あんまり持ち上げられてしまうのも、どうなのか?とは思いますけれど・・・

カーター大統領って単語を久しぶりに観ました。

判事の仕事を少し知りたい、と言う人にオススメします。

「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見ました

2021年5月18日 (火) 09:25

大島 新監督     ネツゲン

タイトルがちょっと気になったのと、Netflixに入っていたので気軽に見始めました。政治の世界は本当に何も知らない素人ですが、まぁ政治家のレベルは市民国民である我々のレベルになるのは当然だと思います。結果が全てです。

2021年5月の現在の心境ですが、結果が全ての世界ですから、今の、科学的根拠の無い(これを示してくれたら、もっと納得して行動する人が増えると思うんですけれど・・・)、20時での消灯、映画館や美術館の閉鎖、それなのにデパートの休業要請の緩和、ワクチン接種の遅滞であっても五輪関係者への先行摂取や繰り返してのPCR検査等、映画館や美術館、それに酒の提供の休止はあくまで要請なのですが、それでも政治家はこの要請では足りないと考えて、なんでか?謎なんですけれど、憲法改正を唱えています。確か、私の知識ですと、憲法って統治権力を縛る法律なので、国民に何かを課せられる法律じゃないと思いますが、政治家のレベルが低いと、というか私たち(たち、とつけるのを申し訳なく思いますが)のレベルが低いせいなんだと思います。なんだか頭が痛くなるのですが、それでも与党支持が高い事、個人的には、意味がワカラナイ事だらけですし、それが政治の世界なんだとも思います。

そんな政治の世界で総理大臣を目指す32歳の新人議員を目指す小川淳也さんを17年も追ったドキュメンタリー映画です。全然知らなかった監督大島新さんですが、調べてビックリの大島渚監督の息子さんでした・・・ここが1番驚愕しました。映画の中でもチラリとお顔が観れるのですが、物凄く特徴がある鋭い眼光で、なんだか見た事があるような、と思っていたのですが、大島渚監督の息子さんと知った時の驚きは大きかったです。顔つきが、目線が、当たり前ですが似ています。

政治家という大変難しい世界に、物凄く開けっぴろげに正論を説いている小川さんが、私にはとても青く見えます。が、その魅力はあると思います。また同時に、正論で何かが変わるのをあまり見た事がありません、大きな組織になればなるほど、正論には効果が失われていくと思います。白黒はっきり出来ない事だらけの世界ですし、そもそも不条理な世の中だと思いますから。

私はこの小川さんが、政治家には向いていない、とも思いますけれど、こういう人がゼロになってしまう事も恐ろしいと考えます。

17年と言う時間が経過すると、32歳の人は49歳になります。この人の今後の身の振り方が気になります。

政治に興味はなくとも、日常に影響が出る権力構造です、ここ日本に暮らしている人であれば、オススメ出来る映画だと思います、一緒に是非山本薩夫監督1975年の作品「金環触」も見ると、良いと思います。

「愛がなんだ」を見ました

2021年5月14日 (金) 09:24

今泉 力哉監督     エレファントハウス

映画に詳しい方が、今泉力哉監督の「あの頃」が凄い映画だった、というのを聞いて、では是非見てみたい、と思いましたが、かなり興味の薄いジャンルの話し(過去のアイドルの話しだったので・・・)であったので、過去作で何かないかと見てみると、Netflixにこの作品が入っていたので見てみました。結構なホラー作品のように感じました・・・とは言え、これは完全に私の受け取り方の問題だと思います、基本恋愛映画は苦手です。でも、倦怠夫婦モノは何故か好みの作品が多いです、多分根がネガティブだからでしょうけれど。

テルコ(岸井ゆきの)は20代後半(?)のOL。好きな人がいて、それがタナカマモル(成田凌)。タナカに呼び出されれば、すぐに駆け付ける、という非常に『ご都合の良い女』に見えるのですが・・・というのが冒頭です。

映画の途中に仕事場の友人ですらない人が言うセリフ「自分も?」が最高でした。真実だと思います。このセリフを言う女優さんの造形がかなり好みでした。唯一、理解出来る言葉で語られるのがこの名前も無い職場の同僚のセリフだけなのも、きっと私の受け取り方の問題なんだと思います。

私はホラー作品、タガが外れてしまった人の話し、と解釈しました。恋愛は、きっとドーパミンは出てると思いますけれど、あまりにその、所謂キマッテいる状態の中毒なんじゃないか?と思うのです。思いだされるのは、同じく私にはホラー小説であった山本文緒著「恋愛中毒」です。この映画の主人公のテルコの先行きは、きっとこの小説の主人公のようになるんでしょうね、本当に恐ろしいです。客観性が無い、というのがいかに恐ろしいのか?を示してくれます。

人を好きになるのに理由はいらないとは思いますが、社会不適合者にまでなっていくのは抵抗がありますし、普通は自分という人格なり身体性なりがあると思いますが・・・

キャスティングが素晴らしいです。多分この映画を好意的に捉える女性たちにとっての、うすぼんやりした集合体の芯を造形的に捉えると、岸井さんの顔立ちになると思います。凄く褒めてるんですけれど、もっときれいに可愛く眩しく撮ろうとすればできるのに、全然しないのが凄く共感を呼ぶと思います、自己投影を安心して出来るラインだと思うのです、美人過ぎない可愛過ぎない、絶妙のライン。私は褒めています、本当です。

さらにテルコの友人ヨウコに好意を寄せる青年に、あの「葛城事件」(私の2016年のベスト3に入る映画作品でした 詳しくは、 こちら )の次男くん!もう怖すぎる。本当にこういう人が居そうです。責任は取りたくないし、自我が傷つくのも怖いが、この関係だけでも僥倖、として先には進まなくていい、ぬるま湯が最高の贅沢、と考える人も居ていいと思いますし、様々なオヤジやオジサン世代のダメな部分を見て育てば、割合普通に出てくると思いますね、こういう人。そもそもの熱量が低位安定している人。

成田・今ヶ瀬・凌さんもどことなくダメな感じがイイですね、しかし、結局なんだかんだこの人はそういう風な人に寄せるのが上手い、流石役者さんですし、近年たくさんの映画に出てるのも分かります。役柄によって簡単に色が変えられるのが凄い。

頭に虫が沸くと大変ですし、沸き続けて居られる精神力は、ちょっと引きます、高校生じゃないんだから。

執着、という感情を基にしたホラー作品として、凄いです。

恋愛映画が好きな方に、オススメ致します。
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