西川 美和監督 アスミック・エース
西川監督の最新作「すばらしき世界」が気になっています。まず良い方はキャストです。何しろ役所広司さんが出ているわけで、これだけで期待出来る。悪い点もあって西川監督作品を観ていないので判断出来ない事、そして原作が佐木隆三・・・ここが1番引っかかる・・・ま、佐木さんの本は1冊しか読んだ事が無く、それが「東電OL殺人事件」だったんですけれど、すっごく、まぁ新潮45案件だったわけです。
新潮45って雑誌はオジサン向けのルポタージュなんで仕方ないのかも知れませんが、佐木さんは勝手な東電OLへの偏見に満ちていて、これがどうにもオジサン目線な訳です。なので、どうにも気持ち悪い(私もその気持ち悪いオジサンの1人です)。もともとは桐野夏美著「グロテスク」を読んで、もう少し詳しく知りたくなったので手に取ったのが佐木隆三だったのですが、これが良くなかったわけです。
で、じゃ、前の作品を観ておこうと思い、Amazonprimeですぐに観れるこの作品を観ました。
散髪されている衣笠幸夫(本木雅弘)と、カットする衣笠夏子(深津絵里)は夫婦ですが、かなりの倦怠期である事が会話から連想されますが、どちらかと言うと、これは幸代に問題がある事が分かります。が、しかし・・・というのが冒頭です。
非常にキツイ場面から始まります、ハッキリって、この男性のネガティブ発言は、非常にダメです。凄く嫌われますし、何も生みだしません。そして男性はかなりの確率でやってしまいます。ええ、私もその1人です。経験があるから、分かります。しかし、この映画の中の衣笠夏子は、かなりフォローに慣れている感じ、手練れ感がありました。どこまでも、それでもなお、あなたは悪くないよ、というフォローを入れてきます、恐らく、生活の為なのかも知れませんし、もしくは幸夫以外の誰かがいるのかも知れない、という可能性を感じさせます。
この映画の中での衣笠幸夫の成長は、自らを引き受ける事だと思います。全然自分を生きていない、流されるだけ、責任回避だけを主眼に置いた男が、妻を亡くした事から始まる、喪失や、同じ妻を亡くした純朴というか少し間抜けに見える男(竹原ピストル)、その男の子供、編集者、等々との関わりから、自らをもう1度成り立たせる話しです。
竹原ピストルさんの演技は初めて観ましたが良かった。なんかこういう朴訥な感じを嫌味なく出せるのは結構難しいと思います。そして、ずっと衣笠幸夫の事を、他人行儀に『さちおくん』と下の名前+くん付けなのが、親しいくなりたいけれどまだ慣れていない感の演出が素晴らしく良かった、この演出は良かったですね。
悪くない。そして、とても是枝監督作品を思い起こさせました。なんでか、子供の撮り方が似てると思ったからなんですけれど、ま、一緒に仕事してたんですね。そりゃ似るのも当然ですね。
あと、1番見たいのは、この衣笠幸夫が書いた小説「永い言い訳」を読みたい、読んでみたい。
この後は「ゆれる」を見てみたいと思いました。
是枝監督作品が好きな方に、オススメします。