キム・ジウン監督 ショーボックス
韓国映画の凄さはいくつもありますけれど、気になる点もあって、それは、警察機構の杜撰というかダメ過ぎる描写が多すぎる点と、斧を持ったとても暴力的な市民とは言えない謎の武装集団がいるという点です。この2つの意味するところがどうしても分かりません。警察が機能していないのも恐ろしいですが、もしかすると、これは警察への不満、なんとなく政治家との癒着など、今までの対応への批判が込められているかも知れません。とは言え私には、凄く脚本に都合がイイようにしか見えないのが、改善すべき点だと思います。あまりに、あまりなので。2つ目の点については全然ワカラナイです、とにかく最底辺の暮らしをしているので、お金で非常に厳しい仕事を請け負っているのでしょうけれど、そういう描写に映る人が皆、ナイフや包丁ではなく、斧を持っているのが恐ろしいです。これは何かの暗喩なのでしょうか?この映画にも出てきます・・・2つとも・・・
女性が車の故障でレッカー車を待っている車内から、男性に向けて携帯電話で話しをしています。嬉しそうに話す女性の車に近づいてくる派手な黄色の車があり・・・というのが冒頭です。
私は、正直、今作はちょっといくら何でも、という風に感じました。決して悪くない作品ですし、やろうとする事の意味は理解出来るつもりです。が、どうしても脚本の、非常に都合良さみたいなものを感じます。テーマを際立たせる為なら、何でもする、と言う感じで、いろいろ細部が気になってしまいました・・・
しかし、余り細部を気にしなければ、もしかするとアクション映画として良い作品なのかも知れません。
主人公は2名。
復讐い燃えるスヒョンを演じるィ・ビョンホンと、シリアルキラーというかもうなんだか良く分からない人ギャンチョル役のチェ・ミンシクさんです。その他の人はあまり重要ではないとは思いますが、まぁ2人の対決姿勢を際立たせるための、装置、は言い過ぎかもしれませんけれど。
ネタバレなしの感想ですけれど、やりたい事は分かるんですけれど・・・という感じです。
あなたは、あなたにとって重要な誰かを傷つけられた場合、どうしますか?
に尽きると思います。とても似た設定の映画で三池崇史監督の「藁の楯」(の 詳しい感想は こちら )と言う作品がありましたが、ある意味似ていると思います。
復讐したい、同じ目に遭わせてやりたい、と思う事はきっと正常な感覚だと思いますけれど、しかし法治国家に生きている人間には「報復権」は国家権力により独占されているのではないか?と考えます。それにやられたらやり返す、と言う行為の果ては、絶滅しかないです。
そんな中、主人公であるスヒョンは、突き詰めた考えの持ち主で、かなり常軌を逸しています。ここまでは、まぁ想像の通りでした。
スヒョンに相対するそもそもの事件のきっかけを作ったギョンチョルが、また・・・ここが非常に飲み込みにくいのです・・・これは桐野夏生著の「OUT」の最後に、どうしてこんなに!?という人物が出てくるのと似ている感覚です。
まるで韓国社会には普通の人々100名に対して、5人くらいシリアルキラーがいるのでは?というくらいに感じます。とは言え、映画「ジョン・ウィック」の世界は、もっと多そうですよね・・・ま、そういう世界の話しと思うと、それほど変でもないかも知れません。
アクション映画、というのか、サスペンススリラーなのか?なかなか判断しにくい作品でした。
悪魔はどこにいたのか?ですけれど、人を呪わば穴二つというのが、多分考えられていた結末なんだろうと思いますが、それにしても・・・とも思いました。
復讐について興味がある方は、あまりいないと思いますし、悪魔とは何か?に興味がある方にも、タイトルで既にネタバレ気味ですし。ですので、ィ・ビョンホンさんに興味がある方にオススメします。カッコイイですから。
アテンション・プリーズ!
ネタバレありの感想です。未見の方はご遠慮ください。
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とにかく2人が社会を顧みないで、自由に動き回り過ぎです・・・警察は何をしているのでしょうか・・・いつもの韓国映画の警察の無能ぶり以上に、捜査線すら張れない状況ですし、追跡も、容疑者の動向チェックすら出来ていません・・・これはいくら何でも、です。と言う感じで乗り遅れました、映画のノリに・・・
それに、ギョンチョルの欲望のままに、という事なんでしょうけれど、だったら、ラストに家族に命乞いというか、開けるな!なんて言いますかね?やめてくれ、とか観客向けに言わせてるように感じました。このある種のゲームはギョンチョルの勝利で間違いありませんよ、ここまで自由にしているわけですから・・・消したい人はすべて消したと思います。
それと、ラストにギョンチョルの家を使うんですけれど、なんで警察はこの家さえも突き止められないんでしょうか?容疑者の1人として挙がってましたよね?もし家をしっていたのであるなら、殺害現場にそれなりの調査をしているんじゃ・・・規制線も無いんですよ・・・これはちょっと・・・
もっと最初から、4人に絞られている捜査情報を入手したスヒョンは、結局関係ない奴も痛めつけて拷問しているんですよ・・・これは犯罪だと思いますし、犯罪を犯してまでも復習に駆られているのだとしても、やっていい事と悪い事がある気がしますし、警察が張っている容疑者宅に忍び込んで警察が気がつかないのはもういくらなんでもと言う気がします・・・
まぁ2人の対決に絞ったんでしょう。飲み込む事にします。でも、なら、豪邸で気ままに暮らすシリアルキラー男女の組はなんで出てきたんでしょうか?シリアルキラーに仲間がいるのは結構興醒めです・・・そもそもそういう人間じゃないと思いますね。
ギョンチョルは完全に勝利で、なんで命乞いをしたのか?が全然理解出来ない・・・そういう人じゃないでしょう。
スヒョンも何度も痛めつけるのであれば、どうして、もっと局部的な人体破壊を行っていないのか?凄く不思議です。歩けるし手も使える、目も見えるし、喋れる。なんでかなぁ・・・
悪魔は誰だったのか?は多分みんなが悪魔に見えるギョンチョルだけれど、スヒョンも悪魔ですよね、という事なんでしょうけれど、私には甘く感じてしみました、悪魔は人間の心の中にしかいないと思いますが、非常に小物な悪魔を観た気がします。これなら私はデレク・シアンフランス監督の「ブルー・バレンタイン」の方がずっと恐ろしいですね。