瀬田祐平著 彩流社
摂食嚥下について勉強している身として、本当に読んで良かったです。本当にはじっこの方で学んでいますし、学び方もゆっくりなので、とてもまだまだ時間がかかりますけれど。
摂食嚥下障害というのは口から食べる機能の障害のことです。 私たちは普段、意識していませんが、食べ物を目や匂いで認識し、口まで運び、口の中に入れて噛み、ゴックンと飲み込むことで、食物や液体を摂取しています。 これらの動作の1つまたは複数が何らかの原因で正常に機能しなくなった状態を言います。しかもこの障害はまだあまり認識されていない面もありますし、さらには誤嚥性肺炎のリスクとも関連があります。そんな摂食嚥下を扱った小説、です。
あくまで小説ですから、実際とは違うかもしれません。しかし、非常に細かな気付かされる文章を読んでいると、この著者が、とても洞察力があって注意深く、そして患者に寄り添った診療をしている姿が目に浮かびます。そうでないとこの小説は書けなかったと思うのです。
そもそも、歯科がなんで摂食嚥下に関わるのか?とか様々な意見がある事は承知しているつもりです。ですが、実際にその事に気がつけるのは歯科の方が機会が多いのではないか?と思います、歯科は特に食べる目的で機能しているからです。
そして、この本の主題は、恐らく、死生観だと思うのです。
私は今年で51歳になりますが、そろそろ終焉を考えておかないといけない歳になった、という自覚があります。衰えも感じますし、そもそも、な部分もたくさんあります。人生100年時代といえば聞こえは良いと思いますが、健康寿命、医療や介護に依存しないで自分の事が自分で出来る生存期間の事ですけれど、平成22年のデータでちょっと古いですけれど男性は70.42歳、女性は73.62歳です。しかも私は不摂生も多いですし、そんなには生きられない可能性も(可能性で言ったら、明日かも知れませんし、今だとしてもオカシクナイ)あります。
必ず死んでしまう生き物の一員でありますし、最後に対する希望もありますけれど、それは準備しておかないとまず無理な気がします。しかし、なかなか準備は出来ないものです。
そんな中で、この小説では、歯科の人々が、患者さんの生活の中に入り込んで、様々なケースを体験します。出来る事と出来ない事はたくさんありますけれど、出来る事をやる、それも愚直に行う、という姿勢に、感銘受けました。
私にはとても出来ないけれど、見習いたい仕事への姿勢です。
この本を関係者が読むと、まぁ非常に有名な先生ですので、すぐに誰だか分かると思いますけれど、書籍として流通するところまで行って、出版されるってスゴイ事だと思います。私はこの先生の講演を聴くのが大好きです。こういう先生が居てくれてきっと患者さんは満足しているだろうな、と思います。大変失礼な言い方になってしまうかも知れませんけれど、大学病院ではなく一般の普通の開業医さんの目指すべき姿勢ではないか?と思うのです。それを大学病院で貫くのは、非常に、非常に困難な事だと思います。
摂食嚥下を勉強した事がある人、歯医者さん、もしくは死生観について考えてみたい方にオススメ致します。
そして、同じ書籍の話し、として、私の所属する武蔵野市歯科医師会の江澤先生が上梓された災害に関する本「歯科医師のための 災害時マニュアル」が出版されました。おめでとうございます。
私も本当に、少しだけ、関わった書籍です。
お手に取っていただけたら幸いです。Amazonでも購入できます!
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