漫画家
たくさんの代表作がありますけれど、やはり『風雲児たち』が最高傑作だと思います。
幕末を描くためには、関ケ原の戦いを描く必要がある!と言う所から始まる大河漫画です。主人公となるのは『歴史』です。
歴史という縦軸に対して、個人という横軸と、その様々な個人の交わり、親交、議論、があって歴史が彩られる、という事を、ギャグマンガで描いた方です。
関ケ原における大谷吉嗣の西側への参加、や小早川秀秋のその後を描いて観たり、江戸幕府の初期に関わった保科正之と言う人物を紹介したり、薩摩藩士平田どんの木曽三川の治水工事の下りを描いたり、知らなかった歴史上の人物を紹介してくれています。
もちろん蘭学について、田沼意次の時代、その多彩な人物たちが近づいたり離れたりする様を描き、平賀源内、杉田玄白、蘭化こと前野良沢、高山彦九郎、同時代の大黒屋光太夫のロシア漂流、その事で繋がる林子平の著作「三国通覧図説」の翻訳に携わる新蔵ことニコライ・ペトローヴィッチについても、個々の人物の横のつながりが知る事が出来たのも衝撃でした。桂川甫周とツンベリー先生の文通なんて、全然知らなかった事ですが、人の繋がり、意思の強さを感じさせます。
司馬江漢がぼそっと言う「いろいろなモノで生活が成り立ってるのに、その発明をした人の事は全然知らない(私・意訳)」というちょっとした言葉が重く響きます。
もちろん高田屋嘉平たレザーノフ、間宮林蔵や伊能忠敬、そして蛮社の獄と小尚会の面々、大塩平八郎と頼山陽も忘れる事が出来ません。
老中首座だった阿部正弘の存在の大きさ、江川太郎左衛門英達についても、知れば知るほど、もっと知りたくなりました。
幕末編でも、それこそ様々な人物の繋がりと分かれが描かれていますが、ついに未完となってしまいました・・・本当はもっと言及したい人物が山のように出演する作品なのに・・・
みなもと太郎先生の考えでは、五稜郭の陥落を持って幕末が終わる、とおっしゃっていましただけに、未完がとても悲しいです。
次回の感想にまとめていた「死せる定め」という衝撃の本について考えていた時期だったので、よりきつく感じます。
漫画の世界を俯瞰させる、データとして残す活動もされていて、マンガの歴史という著作もあり、まだ1巻しか出てなかったのに・・・
本当に悲しいです。死せる定めの生き物なんですけれど、悲しい。